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小林 |
(状況劇場にいたのは)
今から思えばそんな大した時間じゃないんだけど、
──劇団に1年、2年いて、
そのまんま(将来が)見つからない、
東京に、そういう人多いじゃないですか。 |
糸井 |
うん。 |
小林 |
そうすると、本当に石投げたら
演劇志望なんているわけだから。
そうすると、自分でなにか見つけるなんて
そんな力ないから、
誰かに何かを教わってるんですよ。
で、教わる姿勢がちゃんとこっちにはあって。
そういう対象がないと、そんなうまい具合に、
なんていうんだろう、
導かれたりとかしないですよね? |
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糸井 |
あ、少なくともさ、先輩方とか、
唐さんに対してさ、その小林少年はさ、
尊敬してたわけでしょう? |
小林 |
そうですよね。 |
糸井 |
それなんだ。俺、今日、
ちょうどその話を昼間してたんだけど。 |
小林 |
ええ。誰にですか? |
糸井 |
社員に。 |
小林 |
「俺のことを尊敬してねぇだろう」
って言ったの(笑)?
小さい男だな、これ。 |
一同 |
(笑)。 |
糸井 |
勝手に脚色してるようだけど! |
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一同 |
(笑)。 |
糸井 |
上から下もあるんだよ、尊敬って。 |
小林 |
うん。 |
糸井 |
馬に対してもあるじゃない?
「それさえあれば大丈夫だ」って言ったの。 |
小林 |
いや、それが難しいんじゃないですか? |
糸井 |
劇団辞めなかった理由って、
それを持ててたし、
持ち続けてた子が残ってて。
で、そこが途切れた子は、
やっぱり辛いから離れていくんだと思うね。 |
小林 |
あのぅ、何かを学ぶとか、
学ぶっていう意識はなくてもいいんだけど、
結局そんなの20歳やそこらのときに
何を学ぶかっていうこと自体が
わかってないでしょ? |
糸井 |
わかんない、わかんない、わかんない。 |
小林 |
そのことを学ばなきゃいけないんで。 |
糸井 |
うん、うん、うん、うん。 |
小林 |
そうすると、学校の勉強みたいに、
このステップがあってっていうんじゃなくて、
本当にこう、あるとき、あれ? っていう。
こういうことかな?
っていうふうなわかり方をしないと、 |
飯島 |
ああ、わかります。私も、
先生に6年半ぐらいついてたんで。 |
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糸井 |
あ、そうか。お弟子さんをやったからね。 |
小林 |
その前に辞めちゃったりすると、
本当は学ぶべきことを学ばなきゃいけないのに、
もうずっと学ぶとば口っていうんですか、
それがもうわからないまんま、
迷子になっちゃいますよね。 |
糸井 |
うん、うん。 |
飯島 |
そうですね。 |
糸井 |
逆にいえばさ、6年いようが7年いようがさ、
そこにいられるけれども、
出られないっていう状況もあるじゃないですか。 |
小林 |
そうそうそうそうそう。 |
糸井 |
だから、何度かその都度
選択肢がっていうか、
道が分かれていくんだと思うんですよね。 |
小林 |
だから、僕、自分で勝手に思うんだけど、
ちょっと残ったやつがいるんですよ。
「もう辞めちゃえばいいじゃないか」
って僕は言うんですね。
ところが踏ん切り悪いやつで、
「いい、それでも」とか言うんだ。
「でも」って、
「結局、おまえ、この状態変わんねぇんだからよ、
辞めちゃえよ。辞めるしかねぇだろう」って、
僕ら辞めた側で、クマちゃん(篠原勝之)と2人で
よくそいつを責めてたんですよ。
で、結局、なんだかんだ、
そいつは3年間ぐらい残って、
その間愚痴を言うんですよ。もう愚痴っていうか。 |
飯島 |
ああ、わかります、わかります。 |
小林 |
「いや、またこんなことがあった」
相も変わらないことを、僕らも経験してたし、
その経験の話をまたするんだけど、
そうすると、僕らはもう辞めた手前だから、
「だから、もう結論は出てる。辞めちゃえよ」
とかって言って。
「でもぉ、でもぉ」って言ってたんですよ。 |
糸井 |
(笑)。 |
小林 |
その「でもぉ、でもぉ」の3年が、
単なる3年じゃないなと思いますね。 |
糸井 |
そこで自分を決めちゃうぐらいの、
型にはめちゃうみたいな3年になるの? |
小林 |
結局人って、
踏み出さなきゃいけないときって
あると思うんですけど、
そのタイミングがずれちゃった場合、
あるいは、学ばなきゃいけないさえも
わからないまんま辞めちゃうと、
もう引っかかりもくそもなくなっちゃうんですよね。
時期とかタイミングがずれると、
辞める場合でもかなり難しいことに
なっちゃうのかなぁっていうふうには思いますね。 |
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糸井 |
あのぅ、薫ちゃんたちが辞めたっていうのもさ、
唐さんの、その組織をやっていく限界でも
あったとも言えるじゃないですか、今になれば。 |
小林 |
そうですね。 |
糸井 |
つまり、唐さんにはそのサイズしか
できなかったっていうことがあるわけだから。
ジョージ・ルーカスだったら違うわけで。 |
小林 |
そう。だから、唐さん的サイズが、
時代とともに結構周りが変わってきたために、
唐さんの器はたとえば同じにしても、
同じようにならなくなっていったんですよ。
で、僕らはそんなこと考えて
辞めたわけじゃないんですけども、
それがそのタイミングで辞めるときには
パンと辞めないと、
もうちょっとこう景色がちゃんと見れないというか。
そうすると、それで3年間ぐぅっとなってくると、
なんていうんですかね?
自分の感覚みたいなものを
大事にして辞めていくのと、
もう決定的に知らされて、
周りが全部気づいたことをやっと気づいた状態で
辞めちゃうと、なんかそこに、
こいつのなんか内面的に働く何かがこう‥‥。 |
糸井 |
飛び石がないよ、もう。 |
小林 |
なくなっちゃうんですよね。
だから、フッと辞めていくっていうのも、
またすごく大事なんだなと思いますね。 |
糸井 |
あのぅ、希望があって辞めたわけじゃなくて、
やっぱり丈に合わなくなって、
いられないなと思って辞めてるわけだから、
薫ちゃんたちは。 |
小林 |
うん。そうだな、もうできないなと思ったら、
もう事情も働いちゃったんですけど。
それぞれいろんな理由なんかあると思うんだけど、
僕は、それまで辞めた人は、
根津(甚八)さんにしてもその理由があって。
決断としてはもしかしたら早かった人もいれば、
いろんなタイミングってあるんだなと思うんですけど、
自分を軸にして言うと、
だいたい遅いやつはことごとくなんかちょっと、
タイミングをずらした人だなと思うんですよ。
そうすると、周りが気がついてるのに
自分だけが気づいてなかったっていう、
ちょっと取り返しのつかないことに
なっちゃうような気がするんですよね。 |
飯島 |
もったいない感じの人いますよね。 |
糸井 |
3年いたんだ? |
小林 |
3年いましたねぇ。 |
糸井 |
ずっと、だから、仲良くやってた仲間だけど、
そこで方向性はもう違うんだよね? |
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小林 |
そうなんですよ。
同じ辞めたっていう同士なんだけども、
近い関係の後輩の演劇とか
手伝ったりしてるんですね。
でも、僕、
「それってもっと断ち切ったほうが
いいんじゃないの?
そうしないと、もっと自分の中で
新しいものとか展開とかならないから、
思い切って断ち切ってやったほうがいい」
とは言ってたんだけども、
見ると、同じように辞めていったやつらが
結成したお芝居の手伝いとかしてるんですよ。 |
飯島 |
はぁー。 |
糸井 |
それは、あれが同じだよ。
全共闘を種に集まる人と同じだよ。 |
小林 |
うーん。 |
糸井 |
みんなずぅっとその話してるよ。 |
小林 |
うーん。 |
糸井 |
いつまでたってもその匂いの
するところに集まるよ。
それはきついよ、やっぱり。あ
釣り雑誌のやつに聞いたら、
釣り雑誌の人たちって酒飲んで酔うと、
どっちが釣りが好きかで
いつも殴りあいに近い喧嘩になるって。 |
小林 |
うそ。うそ、本当? |
糸井 |
つまり、そいつが言った話なんだけどさ。
でも、わかるんだよ、俺それ。
「俺のほうが好きだ!」
っていうのが上なんだよ。 |
小林 |
なんか俺なんか
どうでもいい話だなと思うんだけど(笑)。 |
糸井 |
(笑)。 |
小林 |
へぇー。 |
糸井 |
だから、そういう居心地もいいし、
外に出られないときには
そうなるんだろうなっていう気がするよね。 |
小林 |
うーん・・・・。僕はね、それがね、あまり、
素敵なことと思わなかった。
一所懸命やってても実入りがない、
お金がそんなに入らない仕事であるけども、
なんか素敵な仕事だなって思えないと。
澱んでるような。
なんか切れてない、
金魚のウンコみたいについたまんまだし。
全然自分の中でこう、
踏ん切りが利いてないなと思ったんで、
とてもそういうのがだめだったんですね。 |
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(つづきます) |