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糸井 |
俺、前にさ、ある日気がついたんだけどさ、
俳優やってる人って、
脇の人でもなんでも、
みんな二枚目だね、おおもとは。 |
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小林 |
あ、多いですね。 |
糸井 |
「僕は昔から脇ですよ」みたいなふりをしてるけど、
温水洋一さんとかわかんないけど、
小日向文世さんぐらいだと。 |
小林 |
うん。 |
糸井 |
西田敏行さんの昔の写真とか見ると、
俳優になりたいって思ったのは、
やっぱりいい男だったんだなって思う。 |
小林 |
そうそうそう。 |
糸井 |
みんなね、後にどうなるかは別として、
「いい男だから俳優になれば」
って言われたことあるなって
いうような人が多いんですよ。 |
飯島 |
そうなんですか。 |
小林 |
自分の顔って、ちょっと自意識持ったら
好きじゃないじゃないですか。 |
糸井 |
みんななんかどっかで、
やっぱり、あ、二かも?
って思った人が
演劇界に入るんじゃないかなって俺はね。 |
小林 |
ああー。 |
糸井 |
ある日、そんなふうに思った。
なぜ思ったかっていうのは逆なんだよ。
素人ばっかりが映ってると、
テレビに映えないんだよ。 |
飯島 |
ああ、わかります。 |
糸井 |
わかりますか? |
飯島 |
よくテストのときに、
制作の人とか並んでて、 |
糸井 |
ああ、はいはい。 |
飯島 |
で、やっぱり替わると、
全然雰囲気違いますもんね。 |
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糸井 |
でしょう?
だから、3以上の4ぐらいの人が役者さんでいて。
「じゃあ、その人来るまで、あなたやりなさい」
っていったときには、明らかに冴えないんだよ。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
で、4でやろうが5でやろうが、
役者やってる人はね、二なのよ。 |
小林 |
はぁー。僕もそれはわからんでもないんですよ。
じゃあ、自分がどんなところに
いるのかなとは思いつつ。 |
糸井 |
薫ちゃん、だって、
スターだったっていう噂を聞いたぜ。 |
小林 |
誰に? |
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糸井 |
高校のときに。 |
小林 |
高校のときにスターってよく言うね。
せめて「状況劇場のスターだったんだよ」って。 |
一同 |
(笑)。 |
糸井 |
状況劇場は、あのぅ、
間に合わなかったと思うよ(笑)。
要するに、これから小林薫の時代だ、
っていったころに、だんだん終わってた。 |
小林 |
だから。で、高校ぐらいに
素人丸出しのときにそんなの、スターって。 |
糸井 |
いや、でも俺そっちのほうがリアルだと思ったよ。
あのぅ、すごい子だったらしいよ。
「小林薫さんは、私たちの学校の太陽でした」って。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
小林 |
それ、誰かの作り話なんだけど。 |
糸井 |
近づけないくらい輝いてて、
もう正義漢でみたいな。 |
小林 |
(笑)。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
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糸井 |
いやんなっちゃうだろう?
いや、そういうくらいの人が、
やっぱり状況劇場に間違って
入ったりしてるわけだよ。 |
小林 |
かなぁ。それはちょっと僕、
偶然なのかなとか思うんですけど、
状況劇場を選ぶ、
唐さんのところを選ぶということに関しては、
なぜ芝居やったりしたのかなと。 |
糸井 |
いや、やっぱり
小生意気だったからでしょう、当然? |
小林 |
あ、まぁ、それは、ずっと今も。 |
糸井 |
単に間違って入ったんだよって嘘だよね? |
小林 |
うん。 |
糸井 |
小生意気だったからですよね。
だって、情報は全然ゼロじゃないわけだから、
選んでそこに入った人以外
あそこにはいないですよ。 |
小林 |
いや、でも、いや僕はなんで
選んだんだろう? そういうのがわからない。
なんかいろいろあって。
でも、他になかったっていうのが
一番正直なところなんじゃないですかね? |
糸井 |
いろんなことはわかんなかったけど、
ここかなぁっていうのは選んだわけしょう? |
小林 |
状況に関しては
もうまったく選んだんですよ。 |
糸井 |
そうでしょう? |
小林 |
うん。それは演劇をやるということに関しては、
なんで演劇だったのかなと思わないふしも
ないわけじゃないんですけど、
まぁ、他になかったんだろうなと思うんですけど。
状況のときは、もう本当にもう状況劇場に入ろうって。 |
糸井 |
ふぅん。それは何?
落ちる可能性もあったの? |
小林 |
いや、ほとんどないような劇団だから。 |
糸井 |
ああ。 |
小林 |
熱意、情熱さえあれば。 |
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糸井 |
(笑)。 |
飯島 |
(笑)。 |
糸井 |
ふぅん。 |
小林 |
2回目の申し出だったんで、あのぅ、 |
糸井 |
「じゃあ、いいか」って? |
小林 |
京都に公演行ったときに、
「入れてください」って言いに行ってるんですよ、
19歳ぐらいで。 |
糸井 |
ふぅん。 |
小林 |
で、面倒くさいやつだなと、
若手でこういうのいるなって。
「改めて試験がありますから、来てください」
って言われたんで、僕はそれを素直に、
こういうのはちゃんと
大人の対応をしなきゃいけないと思って。
ね? それで、「わかりました。
その試験を受けさせていただきます」って言って、
試験のときにいきさつを話したら、
まぁ、落とすっていったって、
その当時は、そんなメンバー何人も
受けに来ないんで、
まぁ、ほとんど全員合格って。
よっぽど問題がなければ。 |
糸井 |
ふぅん。 |
小林 |
で、それで入れたんですけど。
難しくはまったくないですね。
うちなんかはもう、
入れてこき使ったら3日で辞めていきますからね。 |
糸井 |
ああ、そうか。 |
飯島 |
じゃあ、多く入れて? |
小林 |
多く入れて、バタバタと辞めていきますよ。
「こんなつもりじゃなかった」って。 |
糸井 |
ふぅん。で、残ったんだよね?そこではね。 |
小林 |
そうそうそう。 |
糸井 |
(笑)。 |
小林 |
これ、残るって才能なんだよ、状況劇場で。 |
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糸井 |
そうだろうね。いや、そうだと思うわ。うん。 |
小林 |
これ、才能ないと残れないですよ(笑)。
その、いわゆる役者としての才能なのか、
なんなのかわかんないけど。 |
糸井 |
人間の成分でしょう、やっぱり。 |
小林 |
なんなんでしょうね?
あれ、僕なんかとんでもないとこで
やってたからね。 |
糸井 |
あのぅ、だってさ、
状況劇場って、
村松(友視)さんが
いつも緊張してたんだからね。 |
小林 |
(笑)。 |
糸井 |
芝居見た後で感想言わせられる
時間っていうのがあって、
そこで何を言うかっていうのが
ものすごく緊張してたって。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
糸井 |
ていうところでさ、
ただ残ってるっていうの、大したもんだよねぇ。 |
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(つづきます) |