その16 みんな二枚目だよね。
糸井 俺、前にさ、ある日気がついたんだけどさ、
俳優やってる人って、
脇の人でもなんでも、
みんな二枚目だね、おおもとは。
小林 あ、多いですね。
糸井 「僕は昔から脇ですよ」みたいなふりをしてるけど、
温水洋一さんとかわかんないけど、
小日向文世さんぐらいだと。
小林 うん。
糸井 西田敏行さんの昔の写真とか見ると、
俳優になりたいって思ったのは、
やっぱりいい男だったんだなって思う。
小林 そうそうそう。
糸井 みんなね、後にどうなるかは別として、
「いい男だから俳優になれば」
って言われたことあるなって
いうような人が多いんですよ。
飯島 そうなんですか。
小林 自分の顔って、ちょっと自意識持ったら
好きじゃないじゃないですか。
糸井 みんななんかどっかで、
やっぱり、あ、二かも?
って思った人が
演劇界に入るんじゃないかなって俺はね。
小林 ああー。
糸井 ある日、そんなふうに思った。
なぜ思ったかっていうのは逆なんだよ。
素人ばっかりが映ってると、
テレビに映えないんだよ。
飯島 ああ、わかります。
糸井 わかりますか?
飯島 よくテストのときに、
制作の人とか並んでて、
糸井 ああ、はいはい。
飯島 で、やっぱり替わると、
全然雰囲気違いますもんね。
糸井 でしょう?
だから、3以上の4ぐらいの人が役者さんでいて。
「じゃあ、その人来るまで、あなたやりなさい」
っていったときには、明らかに冴えないんだよ。
小林 うーん・・・・。
糸井 で、4でやろうが5でやろうが、
役者やってる人はね、二なのよ。
小林 はぁー。僕もそれはわからんでもないんですよ。
じゃあ、自分がどんなところに
いるのかなとは思いつつ。
糸井 薫ちゃん、だって、
スターだったっていう噂を聞いたぜ。
小林 誰に?
糸井 高校のときに。
小林 高校のときにスターってよく言うね。
せめて「状況劇場のスターだったんだよ」って。
一同 (笑)。
糸井 状況劇場は、あのぅ、
間に合わなかったと思うよ(笑)。
要するに、これから小林薫の時代だ、
っていったころに、だんだん終わってた。
小林 だから。で、高校ぐらいに
素人丸出しのときにそんなの、スターって。
糸井 いや、でも俺そっちのほうがリアルだと思ったよ。
あのぅ、すごい子だったらしいよ。
「小林薫さんは、私たちの学校の太陽でした」って。
飯島 へぇ〜。
小林 それ、誰かの作り話なんだけど。
糸井 近づけないくらい輝いてて、
もう正義漢でみたいな。
小林 (笑)。
飯島 へぇ〜。
糸井 いやんなっちゃうだろう?
いや、そういうくらいの人が、
やっぱり状況劇場に間違って
入ったりしてるわけだよ。
小林 かなぁ。それはちょっと僕、
偶然なのかなとか思うんですけど、
状況劇場を選ぶ、
唐さんのところを選ぶということに関しては、
なぜ芝居やったりしたのかなと。
糸井 いや、やっぱり
小生意気だったからでしょう、当然?
小林 あ、まぁ、それは、ずっと今も。
糸井 単に間違って入ったんだよって嘘だよね?
小林 うん。
糸井 小生意気だったからですよね。
だって、情報は全然ゼロじゃないわけだから、
選んでそこに入った人以外
あそこにはいないですよ。
小林 いや、でも、いや僕はなんで
選んだんだろう? そういうのがわからない。
なんかいろいろあって。
でも、他になかったっていうのが
一番正直なところなんじゃないですかね?
糸井 いろんなことはわかんなかったけど、
ここかなぁっていうのは選んだわけしょう?
小林 状況に関しては
もうまったく選んだんですよ。
糸井 そうでしょう?
小林 うん。それは演劇をやるということに関しては、
なんで演劇だったのかなと思わないふしも
ないわけじゃないんですけど、
まぁ、他になかったんだろうなと思うんですけど。
状況のときは、もう本当にもう状況劇場に入ろうって。
糸井 ふぅん。それは何?
落ちる可能性もあったの?
小林 いや、ほとんどないような劇団だから。
糸井 ああ。
小林 熱意、情熱さえあれば。
糸井 (笑)。
飯島 (笑)。
糸井 ふぅん。
小林 2回目の申し出だったんで、あのぅ、
糸井 「じゃあ、いいか」って?
小林 京都に公演行ったときに、
「入れてください」って言いに行ってるんですよ、
19歳ぐらいで。
糸井 ふぅん。
小林 で、面倒くさいやつだなと、
若手でこういうのいるなって。
「改めて試験がありますから、来てください」
って言われたんで、僕はそれを素直に、
こういうのはちゃんと
大人の対応をしなきゃいけないと思って。
ね? それで、「わかりました。
その試験を受けさせていただきます」って言って、
試験のときにいきさつを話したら、
まぁ、落とすっていったって、
その当時は、そんなメンバー何人も
受けに来ないんで、
まぁ、ほとんど全員合格って。
よっぽど問題がなければ。
糸井 ふぅん。
小林 で、それで入れたんですけど。
難しくはまったくないですね。
うちなんかはもう、
入れてこき使ったら3日で辞めていきますからね。
糸井 ああ、そうか。
飯島 じゃあ、多く入れて?
小林 多く入れて、バタバタと辞めていきますよ。
「こんなつもりじゃなかった」って。
糸井 ふぅん。で、残ったんだよね?そこではね。
小林 そうそうそう。
糸井 (笑)。
小林 これ、残るって才能なんだよ、状況劇場で。
糸井 そうだろうね。いや、そうだと思うわ。うん。
小林 これ、才能ないと残れないですよ(笑)。
その、いわゆる役者としての才能なのか、
なんなのかわかんないけど。
糸井 人間の成分でしょう、やっぱり。
小林 なんなんでしょうね?
あれ、僕なんかとんでもないとこで
やってたからね。
糸井 あのぅ、だってさ、
状況劇場って、
村松(友視)さんが
いつも緊張してたんだからね。
小林 (笑)。
糸井 芝居見た後で感想言わせられる
時間っていうのがあって、
そこで何を言うかっていうのが
ものすごく緊張してたって。
飯島 へぇ〜。
糸井 ていうところでさ、
ただ残ってるっていうの、大したもんだよねぇ。
(つづきます)


2010-07-16-FRI


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN