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糸井 |
食についても、今一番思ってるのは、
何がおいしいとかっていうのを
単体で言うのは、本当はやめようかなって。
「これがおいしいですね」とか、
「あれがおいしいですね」っていうのは、 |
小林 |
そうですね。
声高に言うことじゃないですよね。
品がないことじゃないですかね。 |
糸井 |
それだけの話だなっていうのは、
争うようにして言うことじゃないよね。
この間、芋煮が本当におもしろかったんですよ。
飯島さんが来てくれて、
おいしい芋煮を作ってくれたんだけど、
あれ、まずくてもおいしかったぜっていう
気持ちがあって。
で、なんで飯食うかっていったら、
うまいために食うんじゃなくて、
なんかもっと大きい理由があるよね。 |
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小林 |
うん。 |
糸井 |
で、そのときに、
おいしいともっと楽しくなるとか。
ああ、よかったっていう気持ちが
増えるからあれなんだけど、
「おいしい」だけ取り出すっていうのは、
金持ってて孤独な老人が
できるようなことじゃないですか。
で、そういうことはだめだなと思って。 |
小林 |
うん。 |
糸井 |
じゃあ、何? っていうのはわかんないんだけどね。
もっとその手前で思ってたのは、
自分が食うより
自分の好きな人が食べてるのを
見るほうがおいしいんですよね。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
だから、子どもが大きくなると、なりますよ。
1個しかないっていったときに、
「どうぞ」って食べさせられますよね。
お父さん、それは散々食べたから、
もう要らないから。
そのときに、やつが味わってるおいしさっていうのは、
俺のおいしさですよね。
みたいなところがあるんで、
人がみんなこう、われ先に餓鬼のようにさ、
「何が一番うまいか」
って言ってるのは
やっぱり開発途上だなっていうか。 |
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小林 |
なるほどね。開発途上っていうのはわかるな。 |
糸井 |
うーん。
で、こだわりとかっていうのもそうだしさ。 |
小林 |
うーん・・・・。 |
糸井 |
飯島さんがやることって、
やっぱりどっかふっくらしててさ。 |
小林 |
そうね。なんか、
競って(グルメランキングの)本が出たりすると、
僕なんかはうまく言えないんだけど、
ちょっと違うなぁとかって思っちゃうんだよねぇ。
で、だいたいランクに出てるところで言うと、
僕、店の雰囲気から合わないから、
行ってておいしく感じないんですよね。 |
糸井 |
うん、うん。 |
小林 |
あのぅ、だったら、
居酒屋で十分なんですよね。
僕、最近はもうそういう、
なんか敷居の高そうな所っていうのは
行かないんですけど。 |
糸井 |
いや、そうですね。
みんな、そうなって。
俺もなってるよね。
あと、敷居の高い所って、
なんか他の理由があって
行くことがあるじゃないですか。
誰かがご馳走してくれるとか、逆だとか。
それだけでもうちょっとね。
その意味では、家でこう食ってるだけっていう
状態のときが一番うまいよね。 |
小林 |
僕、ちょっと自慢できるのが、
なんていうことはないんですけど、
スルメをですね、
1センチちょっとぐらい幅に切っていくんですね。
ゲソは2本ずつぐらいで。
で、これをお酒に3、4時間漬けるんですよ、
日本酒に。で、その後取り出しまして、
フライパンでピュッピュッピュッと炒めてですね。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
小林 |
で、ちょっと火を小さくして、
醤油をビヤーッとかけて。 |
糸井 |
うんうん。 |
小林 |
みりんをちょっちょっと落として、
七味をバーッとかけて、ザッザッザッてやって。
粗熱を取って、冷蔵庫に、
タッパーウェアに入れといて、
ビール飲むときにそれ1本取って食ってると、
滅茶苦茶うまいんですけど。 |
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飯島 |
スルメって、乾燥したスルメですか? |
小林 |
そうです。乾燥したあのスルメを、 |
糸井 |
酒でふやかしておくんだよね? |
小林 |
ふやかして、それでなおかつ
炒めちゃうんです。 |
飯島 |
へぇ〜。 |
小林 |
これ、たまたま、
柄の悪いプロデューサーがかつて作ってて。
それをハマッて食ってるうちに。 |
糸井 |
うまいだろうな、そりゃ。 |
飯島 |
おいしそうですね。 |
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小林 |
これが本当に、僕の中で
家の中でのツマミの一番で(笑)。
昨日も僕作りました。 |
糸井 |
冷たくなってうまいんだ、やっぱり? |
小林 |
ちょっと冷えて固まると、
タレがギュッと、なんかこう絡みついてて。 |
飯島 |
へぇ〜。おいしそう。 |
小林 |
冷蔵庫に入れたほうがうまいですね。
また、ゲソがなかなかこう、うまいんですよ。 |
糸井 |
(笑)。 |
小林 |
それでこう、ビール飲んだりとかするのがね。 |
糸井 |
ちょっとやってみたくなるね。 |
小林 |
見栄えは確かに悪いんですよ。 |
飯島 |
私も、スルメを日本酒と、
醤油とみりん少々に漬けてから
焼いたりします。 |
小林 |
それはもうそのまま炙るんですか? |
飯島 |
そうです。炙って、
マヨネーズと七味とかかけて。 |
小林 |
あ、だから、その工程をまぁ、
言ってみれば時間がないような感じですか。
(ここでしばらく、先輩役者さんの話になりましたが、
ちょっとプライベートなことなので割愛します) |
糸井 |
そういえば、薫ちゃん、結構そういう、
なんていうの、こういう役がきたんだとか、
そういうのについてはおもしろがって結構言うねぇ。 |
小林 |
はいはいはい。
これ、なんかやっぱりテーマですよ。
本来、そんなにできるわけないし、
幅広いわけないじゃないですか。僕なんか。
あれもできて、これもできるわけないと思うんですよ。 |
糸井 |
ほぉ! |
小林 |
「ほぉ!」って。
で、年とって、爺さんになってきたら、
もうだいたい役柄としては、向こうも
「このへんでお願いします」
ってなるじゃないですか。
そのときに、やっぱり
他の追随を許さないっていう
イメージ大事じゃないですか。
この役だったらこの人だっていうのは。 |
一同 |
(笑)。 |
小林 |
そうすると‥‥、 |
糸井 |
浦辺粂子になっていく? |
小林 |
そうそうそう。
だから、俺は希林さんにも言ったんだけど、
樹木希林って、あの道を歩んでる人は、
誰もいないでしょう? |
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糸井 |
樹木希林一派として1人だけいるんだよね(笑)。 |
小林 |
1人でいるだけでしょう?
琳派はあっても、
樹木希林派なんてないよ(笑)。 |
一同 |
(笑)。 |
糸井 |
ない。ない。 |
小林 |
継ごうっていう人もいないし、
なんかっていったらもう
希林さんに頼むしかないじゃないですか。 |
糸井 |
その通りだ。 |
小林 |
ね? だから、
「もう誰もついてくる、
牙城を揺るがすやつ絶対出てこないから、
希林さん得だよね」って俺は言って。
「それ作ったんだもんね」って。 |
糸井 |
あ、薫ちゃんそういう、
先輩方を見てて、ここはイケるなとか? |
小林 |
だから、そんなんやっても、
年季が違うし、俺も。
でも、冗談で、
そういうようなポジションというか、
この人ならここっていうのが
身に着けられたら、
とりあえず年とっても賄ってもらえる(笑)、
なんかお声がかかるじゃないですか。
それっていいよねって僕は思うんですよね。 |
糸井 |
なんか和菓子屋の旦那がさ、
「うちはこの饅頭さえあれば」みたいな話だよね? |
小林 |
赤福と同じですよ。
赤福はやっぱり赤福だけでずっと。 |
糸井 |
あ、赤福だけだもんねぇ。 |
小林 |
後、やっていけるんですよ。 |
糸井 |
転んでも起きたもんね。 |
小林 |
そうそう。
まぁ、生八つ橋だってそうですよね? |
飯島 |
そうですねぇ。 |
糸井 |
ニッキが入ってるだけなんですよね? |
飯島 |
本当ですよね。
子どものときは嫌いだけど、
大人になったら、ちょっといいかも。 |
小林 |
そうそうそう。
で、そういう意味では万人って、
まぁ、年配の方に集中してやってれば。 |
飯島 |
そうですよね、そうですよね。 |
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糸井 |
薫ちゃん、そういうので
憧れの男優とかいるの?
あれ、いいなぁっていうの、
憧れとは言わなくてもさ。 |
小林 |
いや、特別ああなりたいって
いう人はいないんですけど。 |
糸井 |
なりたいのはいないんだ? |
小林 |
なんか大変だろうなと思いますもん。
なんかあの人ああしててって。 |
糸井 |
(笑)そうだね。常田富士男みたいなのはね、
ずっと常田富士男やっていくの大変だよね。 |
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(つづきます) |