その14 それはスケベですよ。
小林 糸井さん、体重というか、
体格も変わらないですよね。シルエットも。
糸井 変わったら戻したりしてます。馬じゃないけど。
小林 ものすごく気をつけてるんですか、それは?
役者さんならわかるんだけど。
糸井 そんなー。
小林 もう腹出てもいいとか思わないの?
糸井 出たよ!
小林 (笑)。
糸井 出たよぉ〜。
小林 いや。
糸井 いや、だから、
おっとっとって思う日があるんだよ、ある日。
小林 で、そのときは絞るんですか?
糸井 絞る。
小林 そういう努力ってすごいですよね?
糸井 努力はそんなしない。
いい方法はないかなって考える。
飛びつくんですよ、
なんかよさそうなのがあったら。
小林 うん。多少の努力はするんでしょう?
糸井 多少はするけど、
努力しなけりゃいけないようなことはあんまりしない。
小林 でも、あのぅ、最初、
ケビン山崎さんところ
行ってるときなんかも、多少、1時間は。
糸井 ああ、あれは多少の努力ですよね。
小林 ねぇ。
糸井 でも、なんだろう?
続くか続かないかっていうことについて、
結構諦めがあるよね、俺はね。
薫ちゃんとちがって。
小林 あ、これは続かないんだとか?
糸井 うん。だから、
どこで飽きるんだろうっていうのは、
ものすごく早くから思ってます。
小林 うん。
糸井 始めて、あ、おもしろい! と思ったときに、
どうしてこんなにおもしろいのに、
俺って飽きるんだろうな?
っていうのを、もう既に思ってますね。
小林 ふぅーん。
糸井 で、飽きたときの覚悟はしながら、
もっと何がおもしろいんだろう? とか、
あんまり興味を持ちすぎないようにしようとか。
小林 でも、かなりスケベですよね。
糸井 スケベだ。
小林 「もっと」っていうふうに。
もっとおもしろいものがあるって思うんだよね。
糸井 それはスケベですよ。
小林 ねぇ。
糸井 うん。
小林 僕は、どこかおもしろいところが
あるっていうふうに
思わないわけじゃないんだけど、
ちょっと方向が違うのは、
「おまえが飽きるとか
 飽きないとか言うんじゃない!」
っていうぐらいに
自分に言い聞かせるところあるんですよね。
糸井 あぁー。
小林 「そんな学びの最中に
 おまえが判断するんじゃない」って。
糸井 (笑)それは、だから、
状況劇場みたいなところにいたからだよ。
一同 (笑)。
糸井 俺はそういうことが全部いやだから。
小林 うーん。
糸井 あのぅ、なんか命令されるのが
とにかくいやなんだよね。
小林 それは自分にっていうか、
僕も命令っていうかね、
命令っていうと違う話になるんだけど、
なんていうかな?
わからないことなのよ。
とすると、自分の体も
わからないことが多すぎるんですよ。
糸井 うーん。うん。
小林 そうすると、あ、これって?
っていうようなことが、
なんか気持ちいいこととかっていうことも含めて、
ちょっとまだわからないことがあるな、とか。
で、大変とか思ってるんだけど、
それは角度を変えたら、
辛くないんじゃないかな、とか。
糸井 だから、薫ちゃんは、
探求していきたいタイプなのよ、深く。
で、俺は快適を求めてるだけなの。
小林 うん。
糸井 だから、一番気持ちいいことは何かな?
で、掘り下げてったら
気持ちいいのかなっていうときには、
掘るっていうことはしてみるの。
だから、全部、だから
その都度スタイル全部違うんですよね。
案外飽きっぽいと言ってる割には
続いてることは続いてるんですよ。
小林 うん。
糸井 だから、「ほぼ日」なんていうのは、
「1日も休まないで12年やれ」って言ったら、
誰もしないよね。
小林 うん。
糸井 で、それはやれるんですよ。
で、だいたいのことは、飽きるんですよ。
小林 でも、だいたいみんな
そうなんじゃないですか。だいたい。
糸井 いや、たいがいまぁ、そうだけどね。
で、それは最初からそういうつもりでいて、
飽きるってなんで飽きるんだろうなあ?
っていうことに興味を持つんですよ。
他の人もそうだから。
小林 あぁー。いや、僕もみんなここにいる人も、
だいたいほぼ何かについては飽きていて、
続いてるのっていうのは、本当に
「ほぼ日」みたいに、
自分の仕事になっているようなこととか、
お料理だとか、なんかそういう
かろうじて持続してるものがあるだけで、
あとはやっぱりみんな飽きてるんじゃないかなぁ?
糸井 だから、「これが一番いい」って
言ったはずのものに飽きてるんですよ。
小林 ああ、ああ。
糸井 だから、じゃあ、
「これが一番いい」って思ったのは
嘘かっていうと、嘘じゃないじゃないですか。
「一番いい」ばっかり言ってるのに、
どんどん飽きていくっていうことが、
とても興味のあることなんですよね。
小林 脳みそはやっぱり快楽を求めるんですかね?
糸井 そうだと思うねぇ。
で、同じ繰り返しになると、
そこから進化しなくなるっていうか、
そこで安定するって、「死」じゃないですか。
小林 うん。
糸井 超安定っていって、
1個も動かなくなることだし、
「死」だと思うんですよ。
だから、生きたいっていうことと
飽きるっていうことは同じ。
小林 別にそれは反論ないんですけども、
保守的なことっていうのは、
人間につながってることじゃないですか。
糸井 安全を確保するとかね。
小林 みんな革新的なことを求めてたら、
だいたい死んでますよね?
糸井 うん、そうですね。
冒険だけで生きていけないですからね。
小林 生きていけないじゃないですか。
だから、非常に僕、思うんだけど、
人の中で快楽だけを求めてるっていうだけの
精神じゃないものが
絶対に人の中には含まれてるから。
糸井 もちろんですよ。
小林 このへんはちょっと見直すっていう手も
あるなとは思うんですよね。
糸井 もちろんですよ。だから、僕なんか、
「俺は保守だ」って宣言してるシーンは
しょっちゅうあるね。
小林 うん。
糸井 「俺はそんなの別に新しいもの要らない」とか。
だから、混ざってるんだ。
小林 ボディって保守ですよね?
糸井 そうですね。基本的に保守ですね。
小林 脳みそがどちらかといったら革新的というか。
糸井 そうだろうね。うん。
小林 勝手に自由なこと妄想するし。
なんですけど、わりと、
頭のほうが世の中のこと
ちゃんとわかってなくて、
体のほうがちゃんと知ってる。
寒い時期にはこうだというのを
体のほうが勝手に判断して反応してますよね?
糸井 だから、そっちの言うことを
どれだけ聞けるかみたいなのは、
逆にいうと、今の常識からいうと、
冒険に思われたりするんですよね。
小林 うーん。
糸井 あのぅ、たとえばの話、
風邪引いたとき、病院に行かないって
冒険に聞こえるんですよね、今だと。
小林 うんうん。
糸井 でも、実はずっとそうやってきたわけだから、
自然治癒力でしか治せないっていうのは確かだから、
冒険じゃなくて実は保守なんですよね。
小林 うん、うん、うん。
糸井 みたいなことを、どっちかなぁ?
っていうのは、その都度考えるんだと思うんですよ。
で、そう言ってた俺が病院に行くんですよ、きっと。
小林 どっかでね?
糸井 「昔、だって行かないって言ったじゃない」
って言ったときに、
「じれったかったんだよ」っていう答えが
あるかもしれないじゃない?
で、その新しい考え方を
自分の中から出てくるのを
待ってるみたいなところがあって。
「何、それ?」っていうのを
自分で聞いてるんじゃないかな?
だから、でたらめですよ、結構。
小林 うん、うん。
(つづきます)


2010-07-14-WED


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN