- 伊集院
- なんかね、仕事って、
計算式みたいに考えちゃうと
無駄に思える人材かもしれないけど、
「なんかそいつが使えないおかげで、
みんなががんばる」
みたいな人、いますよね。
- 糸井
- その通りです。
- 伊集院
- 僕のやってるラジオの
最初のプロデューサーの周りはとにかく
仕事ができる人が集まるんですけど、
本人は深夜放送のキュー(進行の合図)を
振ってて、寝ちゃうような人で。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 周りに来る人材は彼の性格も知ってて、
「彼をちゃんとその役職にいさせるために、
俺らがんばる」のが楽しいと。
だからもう、落語で言う与太郎なんですよ。
- 糸井
- ああ、与太郎。
- 伊集院
- 与太郎、「みんなで吉原繰り出すぞ」ってときに、
着ていこうと思った揃いの衣装が足んねえから
「与太郎を置いてこうか」となって、
そのあとの台詞がよくて、
「あいついると座が持つ」って言うんだよね。
「あいつは欠かせない、なぜなら座が持つから」
って理由なんだけど、
なんかそういうことなんですよね。
- 糸井
- その通りなんですよ。
僕の知ってる人にも、そういう人いますね。
- 伊集院
- で、「タイパ」「コスパ」を考えている人は、
「このことも入れて考えられますか?」っていう。
「じつはこの役立たず力が、
全体の効率を少し上げてます」というのを
ちゃんと考えられる人が、
本当の「タイパ」「コスパ」を
管理できる人だと思うんですけどね。
- 糸井
- どこかがほんとうにダメだったら、
その場所に置かないんですよ。
だから、名付けようのない力。
- 伊集院
- そう、その力が大事なんですよね。
そこをなんか、少し考えないと。
- 糸井
- 法律って『六法全書』に全部書いてあるんですね。
でも「判例集」って本のほうが多いんですよ。
うちの親父が法律関係だったんで、
棚に判例集がざーっと並んでて、
子供のときは意味がわかんなかったんですけど、
大人になって、
「こういうときにはこういう判決が下った」
という例がすごく大事だと知って。
- 伊集院
- それが現実ですからね。
- 糸井
- そうなんです。
- 伊集院
- 『六法全書』自体も
びっちり分厚く書いてあるのに、
「そうは言ったって、
現実はもっとややこしいこといっぱいありますよ」
が判例集ですものね。
- 糸井
- 僕も、知識的に聞いた話ですけど、
「何で勉強するんですか?」
って生徒に聞かれた学校の先生が、
パッと四角い長細い絵を描いて、
「ここにトイレットペーパーがある」と。
そのあと真ん中に小さく色をつけて、
「‥‥これが拭いた後だ」と。
「紙の役割としては、
この拭いた後だけでいいじゃないか。
でも、まわりのこれがないとダメだろう?」
って言ったと。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- わぁ、いい話だなぁ。
- 糸井
- 僕も知ったのは最近ですけど、ちょっと感動して。
- 伊集院
- 「お前らは、実際に使わない勉強なんて
無駄じゃないかと言うけれども、
じゃあお前、この直径3センチの
トイレットペーパーで大丈夫か?」という。
- 糸井
- そう、この名付けようのない空白のなかに
トイレットペーパーの実体があって。
しかも、それをみなさん、
3枚重ね、4枚重ねにしているわけですから。
「真ん中だけ見て、知ったような気になるなよ」と。
- 伊集院
- 「この数式2行くらいしか使わないかもしれないけど、
教科書はこれぐらい厚くなるだろう?」っていう。
- 糸井
- こういうののおかげなんだよ、っていう。
そのオチはね、
「勉強をうんこでたとえちゃいけないか?」で
終わってたんですけど、
「いや、たとえていい」と。
‥‥何かとうんこに行っちゃうんですけど。
すいません。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 糸井さん、初めて会ったときから変わりませんね。
- 糸井
- どうしてもそこに。
それで怒られなかったからでしょうね。
- 伊集院
- たぶん、うんこってアイテムを使っても、
うまくたとえ続けてきたからですよ。
それでみんな、ちゃんと納得してきたっていう。
- ──
- ‥‥すみません、そろそろ質問コーナーに。
- 糸井
- そうなんだよ、最後、質問コーナーなんだよね。
- 伊集院
- そうですね。質問ちゃんと受けましょう。
- ――
- ありがとうございます。
では、時間がほとんどないので、
事前にいただいていた1問だけ。
いきなりちょっと変わりますけれども。
「おふたりにとって、何歳からでも
通ってみたい学校って、どんな学校ですか?」
- 伊集院
- なんか僕は早く高校を辞めちゃって、
辞めちゃう前もべつに皆勤賞とかじゃなくて、
行かながちの人だったんで。
だからやっといま、やっとですよ、
「勉強面白い」ってなってきたから、
どの学校でも、いつでも入れる学校は欲しいですね。
後悔してることがいっこだけあって、
最初に高校でつまずいたときに、休学して
高認(大検)取っちゃえばよかったなっていう。
親はそう言ってくれたのに、
なんか変な青さでできなかった。
「高認」ってたぶん早く取れるけど、
大学受験は18までたぶんできないんです、
最低年齢が決まってるから。
あ、皆さんそれぞれ調べてね、いい加減かも。
でもなんかそれが「いつでも行ける学校」に
近かったような気がして。
いま学校に行きたくなくて病んじゃってる子も
いっぱいいるなかで、
べつにポンって辞めちゃってもいいんだけど、
そういうやり方で心が落ち着くなら、
「いまある学校を、ある程度、いつ行ってもいい化する」
みたいのは思いますね。
だから僕はどの学校でも、
いつでも行ける学校があれば行きたいですね。
‥‥糸井さんは?
- 糸井
- 僕はね、やっぱり学んできたことを思うと、
「人」と「本」しかないわけですよね。
「学校」って名前はついてないけど、
1冊の本はもう、1つの学校ぐらいですよ。
くだらない本でも本ですよ、やっぱり。
それなりに何か書いてあるんですよね。
- 伊集院
- わかるわー。
- 糸井
- そこはなんか
「お前より本のほうがいいと思って
読んだほうが得だぞ」
っていうのはひとつありますね。
本って、いつでも興味があるものを読めばいいだけだから。
もうひとつは「人」で、まったく無学の人から
学ぶことのほうが逆に多いですよね。
- 伊集院
- ああ、かもしれないですね。
- 糸井
- その意味で、いま「人に会うこと」が
全部僕にとっての学校なんで、
「ほぼ日の學校」っていうタイトルで
やろうとしてることは、それですね。
人にそれを配りたいんですよね。
「僕がこんなに面白かったんだから、
あくびしながらでも見ると、たぶん何かだよ」
っていう。
それはなんかやらないともったいないなって
気持ちはありますね。
- 伊集院
- で、逆も真なところは、
そうやって「人に会う」とか、
「本と出合う」みたいなことをしたいから、
学校に近いものは必要。
そしてまた、それが押し付けられる勉強になって、
人に会いたくなくて、
本が読みたくない時期に学校に行くのは、
いったん止めていいでしょ、って思うんですよね。
- 糸井
- 全然止めていいんじゃないでしょうかね。
- 伊集院
- 全然止めていいって思うし、自分は止めてみました。
- 糸井
- そのときにしたいことを、
なにか思いつきさえすればいいんだと思いますね。
コンビニのお菓子が食べたいんだったら、
コンビニのお菓子とじっと1日
付き合ってもいいじゃないですか。
- 伊集院
- ほんとにそう思うんですよ。
で、そっち側を極めていけばいいことだから。
世界のコンビニのお菓子食べたくなったら、
英語をやりはじめるかもしれないし。
お小遣いの制限があれば
算数をやるから、ってことでよくて。
やりたいことを見つければ、
逆にどこでも「学校」ですよね、
- 糸井
- そうですね。
やっぱり「なにも感じない」ってときの
怖さがいちばん大きいんで、
「知らない」とか「何かやりたい」じゃなくて、
自分が「感じない」って思ったら、
「あれ?」って思っていいんじゃないですか。
で、「あれ?」って思うと感じるんですよ。
- 伊集院
- なるほど。
- 糸井
- 「感じないなぁ‥‥」と思ったときに
つねったら痛いとか、ちょっとでも
「感じ」の手がかりを見つけたら、
そこからはじまれる気がするんですよね。
- ──
- おふたりとも、ありがとうございました。
では、駆け足となってしまいましたが、
こちらで終わりにさせていただけたらと思います。
伊集院さん、糸井さん、聞いてくださったみなさん、
今日は本当にありがとうございました。
- 伊集院・
糸井
- ありがとうございました。
(おしまいです。
お読みいただきありがとうございました)
2024-02-14-WED