おふたりの講演が終わり、ここから
今村正治さん、糸井重里といっしょに
トークをします。
- 糸井
- この話は、ぼくは何回も聞いているし、
知っているはずなんだけど、
そのつどちょっと、目の端っこが
濡れてきます。
- 今村
- 来ますね。
ふたりはAPUに通っていたわけだけど。
- ライ
- あそこには世界中からすばらしい学生が
集まっていまして、
みなさんの行動力はほんとうにすごいですね。
彼らから学んだこともたくさんありますし、
このあと講演されるhoshiZoraの
インドネシアの大先輩からも
たくさん学びました。
- ジョシ
- APUでいろんな国々の友達と出会い、
それぞれの背景を聞いて、
教育がどれほど必要なのかを
深くまで知りました。
- 今村
- YouMe小学校の子どもたちは
学帽をかぶっていますね。
そのエピソードをご紹介くださいますか?
- ライ
- はい。その通学帽はほんとうに、
子どもたちにとっては、宝物なんです。
自分の家から学校まで通うために
6歳の子どもが毎日5km、山をのぼります。
通学中にその帽子をかぶると、村のみなさんから
「あ、日本人みたいな子どもが来た、来た」
って声をかけられるんです。
子どもたちはそう言われて
うれしくてたまらないらしいです。
お家でご両親が
ちょっとでも帽子にさわろうとしたら
子どもからめっちゃくちゃ怒られる、
という話を聞きました(笑)。
- 糸井
- その帽子は、学校側から生徒さんへの
プレゼントだったわけですよね。
- ライ
- はい、そうです。
私が日本で大学に通っていたとき、
たまたま帽子をかぶっていた小学生を見たんです。
イエロー帽子‥‥。
- 今村
- 黄色い帽子ね。
ライ君は「あの帽子はなにかな?」と
はじめは思ったんだよね。
- ライ
- そうです。
YouMe小学校の子どもたちにもぜひ、と、
黄色い帽子をプレゼントしました。
でも、そのあとで赤い帽子も見ましたので、
「え、赤い帽子もあるのか」と、
次に赤い帽子を買いました。
- 糸井
- ライ君とジョシ君は
学生でありながら、学校をつくって
生徒に帽子をプレゼントしたりしてきました。
日本でもどこでも、学生って
「俺は金がないよ」って言ってますね。
なにをするにも金がない、
アルバイトで自分の生活をやってくので
いっぱいだよ、ということになっています。
しかしこのふたりは、
もちろん奨学金はあったにしても、
自分のための金がないような若い時期に
学校をつくった。
「どうしてできたの?」って思います。
- ジョシ
- ぼくたちは選ばれて国から奨学金をもらい、
9年間、優秀な学校で教育をもらったからこそ、
日本へ留学もできました。
そういうことを絶対に
忘れたくないと思ったのです。
- ライ
- 正直に言うと、私が8年前に来日したとき、
借金がちょっとありました。
それ、まだ払っていないんですよ。
- 糸井
- おお、おお。
- ライ
- まだ返せていないんです。
しかし、しかしこの学校をつくりたい。
自分の心は、ネパールのことでいっぱいなんです。
ネパールのためなら、もう、なんでもやりたい。
- 糸井
- 自分というのは後回しになるんだね。
- ライ
- 自分のことはあまり考えたことないです。
- ジョシ
- もし私たちの社会がよくなれば、
私たちも国も、よくなります。
- 糸井
- おふたりがおもしろいのは、
政府や国を批判するよりは、
「自分のできることをしよう」
というふうに動いていることです。
- 今村
- そうですね。
- 糸井
- ぼくはよく、
「大きい夢を語る人は信用しない」と
言ったりするんだけど、
この話は「大きい夢」というジャンルじゃなく、
ほんとうにやる気のある、本気の夢だと思います。
聞いていてすごく、納得がいくんですよ。
2024年に8つ学校をつくる計画も、
この人たちだったらできるような気がします。
そのための戦略については、
ふたりで会議しているんですか。
- ジョシ
- ふたりでも話しますが、
私たちがいま、いちばん投資しているのは、
ネットワーキングなんですよ。
- 糸井
- ネットワーキング?
- ジョシ
- たとえば、技術を使って、
私たちがいま学校をつくっている現地で、
どんなことが起こっているかは、
東京に住みながらもすぐわかります。
- 糸井
- うん、そうだね。
- ジョシ
- また、APUのお陰で、
いろんな国々の友達ができました。
みなさんと、東京でも会って
食べ放題とか飲み放題しながら。
- 会場
- (笑)
- ジョシ
- 夢の話をします。
そのときに、いろんなアイデアが出てきます。
ネットワーキングがあるからこそ、
私たちの心の中のエネルギーも、あがります。
日本、ネパール、いろんな国の方々と
ネットワーキングをしながら、
ポジティブになって行動していけば、
夢が実現できるんじゃないかと思って進んでいます。
- 糸井
- うん。
なんだか、この人たちとしゃべっていると、
うれしくなりますね。
ぼくはもともと広告業界にいて、
代理店の人たちとお話をすることが多かったし、
ま、いまでもするんですけど、
「こういうことをやろうぜ」というと、
たいてい「いくらかかるか」という
予算組みを最初にするんですよ。
次に「そのお金、誰が出すの?」
「スポンサーを集めよう」
という話になります。
そして、お金が集まらなかった場合、
「やろうぜ」と言っていたことが
結局なくなってしまうわけです。
だけどほんとうは、お金が集まらなくても
「やろうぜ」ということは
「やろうぜ」なんだよね。
その原点のようなところを
ライ君、ジョシ君のお話で
思い出させてもらえます。
ついでにいうと、今日のイベントも、
大きい会場でやることもできたんだけど、
毎日新聞のおかげで
無料で借りることができました。
出演者のギャラはもちろん無料です。
- 会場
- (笑)
- 糸井
- 技術陣も全部、うちの会社から連れてきただけです。
同じイベントを、もし、
予算を組んでやっていたら、すごいことになります。
みんなでちょっとずつ手弁当でやっていくと、
けっこう大きなことができるんです。
「予算枠」という言葉から離れて歩き出す、
そういうことをやる時代なんだな、というふうに
思います。
おふたり、ありがとうございました。
(ライさんジョシさんのおはなし
「僕たちが故郷に学校をつくったわけ
~国に恩返し~」
は、これでおしまいです。
ありがとうございました)
「僕たちが故郷に学校をつくったわけ
~国に恩返し~」
は、これでおしまいです。
ありがとうございました)
2015-05-29-FRI