糸井 |
大学職員という仕事の中身については
一般的には、
あまり知られていないと思うので、
今村さんのことを
いったい誰なんだというところから‥‥。
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今村 |
はい。
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糸井 |
いまはAPU、
立命館アジア太平洋大学の副学長、ですね。
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今村 |
はい、この1月から。
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糸井 |
副学長に就任した、大学職員の側の人です。
みなさん、大学の先生というイメージは
あると思うんですけど、
「職員の人たちがいるんだ」ってことを、
僕はあまり意識したことがなくて。
というのも実際、
自分の大学生活が短かったこともあって
よく知らないけど
学生課というところがあるとか‥‥。
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今村 |
ええ(笑)。
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糸井 |
先生と職員の比率って、どのくらいなんですか?
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今村 |
職員は、教員の「2分の1」くらいですかね。
うちの大学で言いますと。
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糸井 |
なるほど。
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今村 |
だいたい僕自身も、
学生時代、
学生課の窓口で「学割ください」とか言うくらいで、
「ラクそうでいいな」くらいのイメージしか
持ってなかったんですが(笑)、
実は、いろいろな仕事があるんです。
図書館、財務部、総務部、入学センター‥‥
大きな大学であればあるほど、
たくさんのセクションが仕事をしています。
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糸井 |
知らないものですよね。
鉄道といえば運転手さんしか思いつかない‥‥
というようのと、同じというか。
だから僕は
「大学には、大学職員がいる」ということについて
今村さんと会って話しているうちに、
そう言えばそうだよなあと、思いまして。
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今村 |
あはは(笑)。
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糸井 |
で、お話をうかがっているうちに
そうか、大学というのは会社と同じような組織で、
運営する仕事の人がいて、
先生というのは、その中の「アクター」なんだと。
それ以外の職員という人たちが、
大学を建てたり、授業などの計画を立てたり、
どうやって食っていくかを考えたり。
つまり、経営に関わるさまざまなことについては
「職員の人たちがやってたんだ!」
ということに思いいたったとたんに、
俄然おもしろくなったんです。
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今村 |
そうですか。
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糸井 |
そもそも今村さんとは、僕のところに
「こんど、
こういう学部をつくりたいんですけど
どう思いますか?」
ということでいらしたときに、
はじめて、お会いしたんですよね。
まだ秘密でしょうから
それが何なのか具体的には言えないんですが。
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今村 |
ええ、スミマセン(笑)。
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糸井 |
そのときの質問が、すでにおもしろかった。
まだ秘密なのでデタラメに言うと、
「動物園学部をつくったらどうでしょう」と
考えてみましょうか。
すると、
「動物を見物することの意味」
だとか
「動物と人間との関係から学べること」
というふうに、
大学で教えるとなったとたんに
「動物園」についての
仕事の量が、ぐーんと増えるわけです。
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今村 |
ええ、ええ。
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糸井 |
その「広がりかた」が、おもしろかった。
で、そんなに広がるのかって想像したら、
すっかり楽しくなっちゃって。
「そんな仕事を、ずっとやってきたんですか」
と、僕が訊いてばかりになってしまいました。
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今村 |
はい(笑)。
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糸井 |
そのなかのひとつが
立命館アジア太平洋大学(APU)という、
とんでもない大学。
温泉地・別府の街を見下ろす山のてっぺんに
急にできた、
日本人が半分しかいない学校なんです。
つまり、半分が外国人。
それも「世界50カ国」から集めてる‥‥。
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今村 |
今は「約80カ国」ですね。
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糸井 |
あ、そうですか(笑)。
つまり、最初に「50カ国以上から集める」という
決まりをつくったんですよね。
‥‥その決まり自体おかしいでしょ(笑)。
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今村 |
そうですねえ(笑)。
別府に大学をつくろうといったときに
「3つの50」という、
何の根拠もない公約を立ててしまった。
それは
「50カ国以上から学生を集めます」
「50%は留学生です」
「先生の50%も外国籍です」という。
そんな公約を掲げちゃったんで、
もう、やらざるを得なかったんです。
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糸井 |
そんな大学が、この先どうなるだろうって
考えただけで、おもしろいでしょ?
で、その大学をつくるにあたっての物語が
あまりにも濃くておもしろいので、
今日のテーマである
「仕事の場所は、つくれます」ということの
ひとつの典型例だなと思ったので、
まず、そんな無理な大学をつくった男の話を
聞いて頂きたいと思います(笑)。
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今村 |
はい、よろしくお願いします(笑)。
<つづきます> |