HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

犬と猫にまつわる32のエピソード

みなさんから寄せられた
犬猫エピソードを、
毎日すこしずつご紹介します。

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

犬と猫にまつわる32のエピソード

みなさんから寄せられた
犬猫エピソードを、
毎日すこしずつご紹介します。

今年7月の松本ひで吉さんと糸井の対談で、
読者の「犬猫エピソード」を募集したところ、
なんと約600通ものご応募がありました。
どうもありがとうございました。
すべて大切に読ませていただきました。
こちらのコンテンツでは
編集チームおすすめの32のエピソードを、
毎日すこしずつご紹介していきます。
各賞の発表は最後にお知らせしますので、
どのエピソードが受賞するのか、
一緒に予想しながら読んでみてくださいね。
はたして「松本ひで吉賞」は誰の手に!

犬や猫と暮らしていると、
予想外なことがいろいろと起こります。
初回となる本日は、
犬と猫のちょっと長めのエピソードを
それぞれ1本ずつ掲載いたします。

#1
真冬の空の下で

松本ひで吉さんのネコイラスト

66歳になる父は猫が好きだ。
ときに父は
「猫を飼っていると風邪をひかない」と、
嬉々として、
その理由となるエピソードを話しだす。
友人、知人、娘の友人‥‥、
酒の席でのお決まりエピソード。

かれこれ20年程前のこと。
わが家では猫を8匹飼っていた。
どのコも半ノラ、色も柄も大きさも様々。
父がエサをあげるものだから、
どのコも父によくなついていた。

寒い冬のある日。
飲みに出た父の帰りがとても遅くなった。
母はそんな父に腹を立て、
玄関の鍵を閉めてしまった。
(父は鍵を持っていなかった)

夜明け近くに帰宅した父は、
しばらく玄関を開けてもらおうと粘るも、
玄関の扉が開くことはなかった。
すると父はなにを思ったのか、
真冬の空の下、
そのまま玄関の前で眠ってしまった。

やがて夜が明け、
新聞配達のお兄さんの笑い声で目を覚ました父。
ふとまわりを見渡すと、
父の両わきの下、股間、足元、腹の上、首、
父を囲むように猫たちが添い寝をしていた。
真冬の空の下、
快適に眠れたのも、風邪をひかずに済んだのも、
すべて猫たちのおかげだった。

それ以来、父は必ず猫を飼うようになった。
もっともそれ以来、
真冬の空の下で眠ることはないようだけど‥‥。

(s)

#2
愛犬の美しい走り

松本ひで吉さんのイヌイラスト

はじめて柴犬を飼い、
お散歩にも少しずつなれてきた
飼い主歴2ヶ月頃の話です。

ある日曜日の早朝。
生後8ヶ月のわが家の柴犬くんは、
意気揚々とちびっこ用ハーネスを着けて、
人も車もほとんどいない
田舎の道路のどまん中を散歩していました。

途中、うんちの処理をしているとき、
左手でリードをしっかり握っていたのに、
急にリードが軽くなる感覚がありました。
ふと横を見ると、
ハーネスをスルッと脱ぎ捨てた柴犬くん。
もう、それはそれはうれしそうに、
バス通りを猛ダッシュしはじめたのです。

追いかければ逃げる。
それも、とてもうれしそうに逃げる。
まだ飼い主歴2ヶ月の私には、
犬を自分のところに呼びよせる技量もなく、
ただひたすら彼のあとを追いかけるだけ。
必死で柴犬のお尻を追いかけ、
人生初の絶望感を味わいながら、
「とにかくバスが来ませんように!」
「車が通りませんように!」と祈り、
泣きたい気持ちを抑えながら走りつづけました。

そんな私の気持ちなどつゆ知らず、
いまだかつて見たこともない、
すばらしいフォームで疾走する柴犬くん。
草原をかけぬける小鹿のように、
二車線あるバス通りのどまん中を、
前足と後ろ足を見事にシンクロさせながら、
ほれぼれするような
美しい走りを私にみせてくれました。

幸い日曜日ということで車の往来もなく、
しばらく逃走したあとに、
他のワンちゃんと出会い、
ご挨拶モードにはいったところを、
このチャンスを逃すものかと、
これまた人生初のタックルを試みた私でした。

もう二度と味わいたくない体験ですが、
あのほれぼれする愛犬の美しい走りは、
もう一度だけ見てみたいような気もします。

(茶柴)

明日につづきます。

2019-10-21-MON

  • ドコノコとは?

  • 写真で広がる犬猫なかま。
    ドコノコは犬と猫の写真を
    投稿して楽しむSNSです。
    • Download on the AppStore
    • GET IT ON GooglePlay

©HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN