糸井 |
みんなでミカンを栽培していた町を
「葉っぱを売る」ことに
切り替えるのは、むずかしかったでしょうね。
まずはそんなことだれも思いつかないし。 |
横石 |
そうですね。
そういう知恵って、いなかにとって
すごく大事なんです。
僕は、東京と田舎の差は、そこだと思う。
「知恵のあるなし」がちがう。 |
糸井 |
そうかなあ。 |
横石 |
そうです。田舎には知恵がない。
知恵を、田舎が持つことさえできれば、
ぜったいに田舎のほうがいいんです。
だって、まわりにあるもの全部を
活かすことができるんですから。
ここにあるものも、あそこにあるものも
何でも使うことができる。
東京では、何かを活かそうと思ったら
お金がかかるわけです。
田舎では、それが自然の中にいっぱいありますから。
知恵があればできる。
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糸井 |
結局、価値は
人がつくれないものにありますからね。 |
横石 |
それがいちばん大切。
それが田舎にはあるんですね。 |
糸井 |
横石さんはこの事業をはじめるにあたって
各地の料亭を巡ったり
とにかく体を張った調査をなさいましたね。
いわゆる「都会の知恵」を探る作業。 |
横石 |
ええ。何年間も家にお金を1円も入れずに
すべてを料亭通いに使ってしまいました。
がむしゃら、ひたすらに、
とにかく知りたかったんです。
それを許してくれた、ほんま、
かみさんのおかげです。
食べ過ぎで痛風になって、体が半分痺れて
歩けなくなったときもありました。
車いすに乗って
料亭に行ったこともあります。 |
山田 |
それは‥‥命をかけた調査ですね。 |
横石 |
料理人の方に、やっと誘ってもらえて
いっしょにお酒を飲みに行ったりして、
あの世界のしくみと厳しさが
身にしみてよくわかりました。
そりゃ、もう、厳しかった。
でも、なんとかして
「いろどり」をやりたい気持ちがあったから、
そこであきらめようとは思わなかったです。
自分が知識を得ていけばいくほど
やっぱり「いろどり」の葉っぱは、
売れるようになりましたから。
ぼく自身が、どんどん
葉っぱの使われる「シーン」が
わかるようになったんです。
どのお皿に
どういう葉っぱが要るのかもわかります。
どういう場面で必要なのかもわかります。
(つづきます!)
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