いろどり 稼ぐおばあちゃんたちの町。
5 やってる、やってる!

横石 こちらは、「いろどり」の葉っぱの
収穫をしている菖蒲増喜子さんのご自宅です。
菖蒲さん、作業場見せてもろてええ?
山田 こんにちは。失礼いたします。

菖蒲 なんか気ぃおちつかへんでな。
横石 ははは、そら、失礼しました。
今日は注文ようけ来とる?
立木 毎朝、どの葉っぱがどのくらい必要か
注文が、ファックスで流れるんですよ。
菖蒲 なんぼでも来るんよ。



今朝からどんどん来よるんやけんどな。
山田 すごい。
菖蒲 いんやー、もう
落ち着かんでな。
そういうときに限って
みなさん来てくれたら困る、と思て。
横石 はははは、そら、ほんまに失礼しました!
このファックスを見て、おばあちゃんたちが
「もしもしこれ私やります」
と、「いろどり」本部に電話で連絡するんですよ。
早い者勝ちなんですわ。
けっこう激戦になるから
電話がなかなかつながらなかったり。
菖蒲 みなが構えとるけんね。
糸井 今日はハランが多いね。
山田 ‥‥ハランって、バランのことですか?
ハランの葉ってあるんですね。
ハランって、てっきり
もともとプラスチックのものだと思っていました。
糸井 ハランが、プラスチックの、
食料品グッズの、
用語だと思ってたの?
菖蒲 あの、ビニールでつくってある、あれ!
横石 菖蒲さん、ここにあるやろ、ハラン。
見せてあげて‥‥
ほら、これが本物ですよ。

山田 へえ! ギザギザしていない。
菖蒲 都会の人は本物がわからんのやなあ。
糸井 山田さん、メンマはタケノコだよ?
山田 それはわかります(笑)。
横石 ハラン、どうぞ持って帰ってください。
これだけ大きいやつはなかなかないですよ。
東京だったら、
1カン500円、1000円くらいする
高級なお寿司屋さんなどが出す葉です。

山田 これだけきれいなハランが採れるのは、
技術によるものですか?
立木 もちろん技術が必要です。それに、
量をたくさんつくってきれいなものを選ぶことも
大切な過程ですから、
ある程度の栽培量も必要です。
山田 本物のハランを見るのははじめてですけれども、
触ってみると、プラスチックっぽいんですよ。
若干、ですけど(笑)。
だからこれをプラスチックにしたんだろうな、と
思いました。
横石 ‥‥なるほどね!
菖蒲 やっぱり見せやなんだらあかんもんなあ。
たしかにプラスチックに似とるわなあ!
糸井 マーガリンはバターに似とるしなあ(笑)。
横石 菖蒲さんは、80歳を超えているんですよ。
糸井 あと300年くらい
がんばんなきゃいけないもんね。

菖蒲 もう10年は、生きようと思てるんです。
糸井 もう10年、もう10年って、
毎回増えていくんですよね?
立木 菖蒲さん、去年の年末に苗を植えたんですよ。
菖蒲 苗木植えたら、それが
テレビに映ってもうてね。
糸井 この人はまだやる気なんだと
みんなに思われた、と(笑)。
山田 菖蒲さん、すごく手がはやいです。
こうやってお話しているあいだに
どんどん作ってる。
あっという間にひとパックできますね。
糸井 手を止めたら意味がないからね!
菖蒲 そうよ。
横石 1パックがだいたい250円。
10個で2500円なわけですわ。

糸井 感心します。
すごい時給ですよ。
菖蒲 今日はもう、はようからやっとるんよ。
1か月も前から
糸井さんが来てくれるいうて
もう、待って待って、しとったんよ。
糸井 そーれが!
こんなもんで、ごめんなさいね。
横石 こうやって仕事しとるおばあちゃんと、
病院で座っとるおばあちゃんと、
えらい差でしょう。
日本はみんな、こうならんといかんのよ。
そんで、若い人に
介護保険とか出してもらわんでも
ええようにせなあかん。ほんまに。
糸井 逆に、ここの人たちはみんな
若い人にお金出してるんだね。
孫のマンションの頭金とかね。

(つづきます!)
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2006-10-17-TUE

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