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20年前、ミラノで暮らし始めたとき、 街中にある高級惣菜店「ペック」に驚きました。 品揃えが豊富なことに加えて、 どのお総菜もとてもおいしい。 それまで暮らしていた 田舎のリエティにはこのような店はなかったので、 軽い衝撃があったことを覚えています。 いまでも、間違いなしのおいしい物が欲しいときは、 自然と足が向きます。 特に、日本食用の薄く切った おいしい肉が欲しいときは欠かせません。 買ってきた食材で料理をして出すと、 家族に悟られ、 「今日はペックだね、力が入っているねえ」 と言われます。 また、「料理のお勉強」という大義名分で 贅沢なお惣菜やハムやチーズを買うときもあります。 「ペック」は、私たちの一般の主婦にとって、 毎日お買い物ができる気軽なお店ではありません。 でも、ついつい足が向いてしまうのは、 「ペック」が居心地のよいお店で、 買物はしなくとも、店内をいろいろ眺めて、 2階の絵画がたくさん飾られているバールでお茶をして、 気持ちよく帰ってくる‥‥ なんて楽しみ方もできるからです。 さて、「ペック」についてご紹介しましょう。 日本にもお店があるそうですが、ご存知ですか? ミラノが伝統的な食文化だった19世紀に、 プラハから来たチェコ人のフランチェスコ・ペックさんが ドイツのハム、ソーセージ肉の薫製品のお店を 開いたことから始まったそうです。 王室やブルジョワ階級の御用達店にまでなり、 その後、何人か経営者がかわった後、 1970年からストッパーニ4兄弟の経営になりました。 「ペック」を営んでいるストッパーニ4兄弟のひとり、 レモさんからうかがった話によると、 彼らの父親は「働くこと」の哲学を 身をもって厳しく子ども達に授けたそうです。 気品と鮮度が満ちあふれている独特な空気は、 ストッパーニ兄弟が自らも職人として、 100人を越える従業員といっしょに、 現場で働いているから生まれてくるのだと思います。 毎週1回は兄弟とその子どもたちが集まり、 意見交換をするとのことです。 時代にそって変化している お客さんからの要望にこたえるため、 味付けやリクエストの採用については、 子ども達の若い世代の声を大事にしているそうです。 「よい物をお客さんに提供するために 研究を怠ってはいけない」 この精神が「ペック」を世界的にも有名な 食のリーダーにしている理由だと思いました。 レモさんからプレゼントされた「ペック」の本に 「4人兄弟が責任を持って各部門を統括し、 愛情、良心、そして情熱をもって支え合い、 お店を発展させている」 と評論家が書いていましたが、 その通りだと納得しました。 家族経営は難しいことも多いと思いますが、 信頼と愛情で結ばれ 同じ理想を夢見て頑張っている兄弟の いきいきと働く姿を見て私はうれしくなりました。 ところで、 今回ご紹介する料理は、レモさんおすすめの 「ペック」のロシアンサラダです。 私たちにもできるレシピです。
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