糸井 |
いやー、今日はありがとうございました。
ホントにおもしろかったです。
やっぱり、
となりで見てた人の話って、すごいわ。 |
浦谷 |
んー、どこがおもしろかったのか‥‥
自分じゃわかんないけどね(笑)。 |
糸井 |
そもそも浦谷さん、
このDVDって、何で頼まれたんですか? |
浦谷 |
いや、これはね‥‥。
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糸井 |
自分で勝手につくったんですか? |
浦谷 |
うん。オレが企画書を書いて、持ってったの。
まずはフジテレビとテレ朝に。 |
糸井 |
え、テレビマンユニオンの副社長みずから? |
浦谷 |
松山にね、伊丹十三記念館ができるという、
そういうタイミングだったんです。
だから、このチャンスを逃したら、
もう、つくれないかもしれないと思ってさ。 |
糸井 |
はー‥‥、そうだったんですか。 |
浦谷 |
うん、ホラ、これだけど、自分で書いたんだ。
ま、通らなかったんだけど。だからボツの企画書(笑)。
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糸井 |
涙が出るなぁ‥‥。 |
浦谷 |
そこで、CSの日本映画専門チャンネルに
持っていって、「どうでしょう」と。
で、そっちはオッケーもらえたんですね。
2時間番組として。 |
糸井 |
おお。 |
浦谷 |
それで、その番組放送権と
DVD化して、その販売収益と合わせ技にすれば、
なんとか商売になるかなと。 |
糸井 |
原資はいくらぐらい‥‥って、言えます? |
浦谷 |
日本映画専門チャンネルの番組版と、
DVD版、そのふたつのソフトを合わせた金額で、
1300万くらいかな。 |
糸井 |
それは、安い‥‥んでしょうね? |
浦谷 |
うん、あれだけCMの映像が入ってるし。 |
糸井 |
ああ、そうか、かかるのは「権利」か‥‥。 |
浦谷 |
ええとね、たとえば『遠くへ行きたい』は
読売テレビが放映権を持ってるでしょ。 |
糸井 |
ええ。 |
浦谷 |
番組は、テレビマンユニオンがつくってるんだけど、
DVDに収録するさいには、お金を払ってるんです。 |
糸井 |
うん、そうでしょうね。 |
浦谷 |
あと『天皇の世紀』って番組も入れたんだけど、
あれ、うちの今野勉(テレビマンユニオン副会長)演出で
カメラマンも、うちの「師匠」の佐藤利明。
でも、権利を持ってるのは、国際放映なんですね。 |
糸井 |
はい、はい。 |
浦谷 |
あれだけおもしろいものを
はずすわけにいかないから、やっぱりお金を払って。 |
糸井 |
うん。 |
浦谷 |
で、いちばん安く使えたのが、CMなんです。 |
糸井 |
あ、そうなんですか。 |
浦谷 |
ふつうは、いちばんめんどくさいのが
CMなんだけど
もう「オレがつくったんだからさぁ」って、
拝み倒して(笑)。 |
糸井 |
気合ですか(笑)。 |
浦谷 |
だから、他のところでは、ほとんどオレなんです。
このDVDのパッケージのデザインも、
パンフレットの構成も、文章を書いたのも、オレよ? |
糸井 |
うわー、ほんとですか。
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浦谷 |
伊丹さんが「13の顔」って言うけどさ、
‥‥オレもだよな(笑)。 |
糸井 |
はぁー‥‥浦谷さん、すごいわ(笑)。 |
浦谷 |
これも、伊丹十三記念館がオープンするし、
ぼくなりの恩返しだと思ったから、できたことであって。 |
糸井 |
浦谷さんからの「花輪」ですよね。 |
浦谷 |
いまのところ、記念館と、
記念館のホームページでしか売ってないんだけど。 |
糸井 |
でも、本気で売るべきものですよね、本当はね。
本気でっていうのは、他でも買えるように。 |
浦谷 |
そう? |
糸井 |
売れると思うし、売れてほしいんです、これ。
なんでかっていうと、
伊丹十三という人は、いろんなことやってたけど、
そのひとつひとつの仕事を、
すごく大事にしてたんだって話が、したいんです。 |
浦谷 |
ああ‥‥。 |
糸井 |
このDVDのなかでも、
グラフィックデザイナーの佐村(憲一)くんが
伊丹さんに
『大病人』のロゴのレタリングで、
なんどもダメ出しを喰らってるじゃないですか。 |
浦谷 |
うん。 |
糸井 |
その仕事でお金を取ってるプロフェッショナルに
むかし「書き文字屋」だったとはいえ、
素人のはずの伊丹さんのほうが、
より厳しい目で、「商品」を見てたという‥‥。
あの場面はもう、すごいですよ。 |
浦谷 |
そうだよね。 |
糸井 |
仕事って、
天から降ってくるもんじゃない‥‥というか。 |
浦谷 |
うん。 |
糸井 |
「おまえは、この仕事をやりなさい」
じゃなくて
「おまえ、この仕事やっていいよ」って
言われたときの、喜びとか、うれしさ。
このDVDのなかの、伊丹さんの姿をみているとさ、
そのあたりのことが、すごく、よくわかるんです。
|
浦谷 |
そうですか。 |
糸井 |
ぼくらの伊丹十三特集をつうじて、
ひとつ、できること、話せることがあるとすれば、
そのあたりかもしれないなぁ‥‥。 |
浦谷 |
つぎは、誰のとこに行くの? |
糸井 |
順番からすると、村松(友視)さんかな。
松山の記念館にも行こうと思ってます。 |
浦谷 |
ああ、楽しみですね。 |
糸井 |
それじゃあ、今日の浦谷さんの話から、
「ほぼ日」の伊丹十三特集を
スタートさせてもらいますので‥‥
どうぞ、よろしくおねがいします(笑)。 |
浦谷 |
いや、はい、こちらこそ。
おもしろい話になってたら、いいんだけど。 |
糸井 |
‥‥このへんの、企画書とかっての資料って。 |
浦谷 |
あ、お渡しできますよ。 |
糸井 |
もしかして、ページに出しちゃってもいいですか。 |
浦谷 |
どれ? |
糸井 |
このボツの企画書とか。 |
浦谷 |
あ、いいけど。‥‥おもしろいかな? |
糸井 |
いや、これを見る人がいると思うだけでも、
ゆかいだなと思って(笑)。 |
浦谷 |
そう? オレはぜんぜんいいけど。 |
糸井 |
あと、こっちのテレビマンユニオンの社内報も
おもしろいですよね。
|
浦谷 |
テレビマンユニオンニュースね。
‥‥これは、伊丹さんって、1976年に
テレビマンユニオンのメンバーになったんだけど、
そう決めたときにしゃべった言葉が載ってる。 |
糸井 |
へぇー、おもしろい。
ーー テレビについて一と言 |
伊丹 |
現代のこの閉じた世界そのものに
テレビが異議を申し立てようとする場合、
その鍵は表現にあると思われます。
何を主張するかも無論重要ではありますが、
むしろ、いかに自由に発想し表現しうるか、
テレビにおける形式や制約から
いかに自由でありうるかという、そのこと自体が、
まさにテレビにおける
最大の主張たりうるのではないかと考えております。
これが現在の私の心境です。 |
ーーテレビマンユニオンニュース NO.81より抜粋 |
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浦谷 |
ちなみに、著名人で、うちのメンバーになったのって
欽ちゃん(萩本欽一さん)と伊丹さんだけなんです。 |
糸井 |
おもしろいねー‥‥。 |
浦谷 |
こっちもさ、いいでしょう?
たぶん、伊丹さんが映画を撮りはじめる直前の
ことばなんじゃないかな。1983年だから。
伊丹 |
失ったものの大きさが
いかに凄いものかという自覚から
始めないとダメだな。
サイレント映画の末期には、
映画は完成の域に達してたんだからね。 |
|
ーーテレビマンユニオンニュース NO.415より抜粋 |
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糸井 |
うわー、いいコメントですねぇ‥‥。 |
浦谷 |
「伊丹十三の映像解読術講座」って銘打って
インタビューしたんだよ。 |
糸井 |
浦谷さんが? |
浦谷 |
うん、訊いてるのはオレ。
‥‥ああ、あとこれこれ、これもいいと思うんだ。
「体験的テレビマンユニオンを語る」って特集で、
伊丹さんのインタビューがあるんだけど
『遠くへ行きたい』について話してるところが‥‥。
伊丹 |
『遠くへ行きたい』って非常に楽しい番組なんだよネ。
僕としても、ああいう体験は初めてだった。
というのは、結局あの、
大体ピラミッド型の人間組織な訳ネ、
モノって云うのをつくる場合は
テレビにしても何にしても。
でテレビの例えば『遠くへ』なんかの場合は
いっせいに駆け出すしかない訳。
キャメラ、録音、ディレクターにレポーターと‥‥
おばあさんがあっちのタンボから来たらもう、
皆んなその場でディレクターになってやるしかないのネ。
レポーターはおばあさんから一番良い話を聞こうとし、
キャメラはその状況を自分の興味で
撮っていこうとするし、
ディレクターはその場の設定と
目を光らせて様々な判断して、
音の人はそう云った事をすべてきっちり録り、
全部が同時に走るって感じで‥‥。
そう云う所がとても面白くて、非常に新鮮だった。 |
ーーテレビマンユニオンニュース NO.432より抜粋 |
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糸井 |
はー、言ってることが、ブレてないなぁ‥‥。
いやぁ、おもしろーい(笑)。
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浦谷 |
でしょう? |
糸井 |
いや、浦谷さん、ホントいい素材だよ、これ。
もう、ぜんぶ出しちゃってもいい? |
浦谷 |
んー、いいんじゃない? |
糸井 |
テレビマンユニオン的にも、怒られない? |
浦谷 |
うん、怒られない。たぶん(笑)。
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|
<終わります> |