第3回 俺の話を聞いてくれる?

山下 ヨーロッパのフリージャズ一派が、

「あまりにも
 何もかも自由にしようとして、
 ダラダラと一時間やって、
 もう、やることがなくなるから、
 またビールを飲んで終っちゃう」

というジャズのかたちは、
まぁ、それはそれでいいんだろうし、
時には、憧れることもあるんだけど……。

やっぱり、ぼくにとっては、
それは気持ちの悪いものなんです。
どうしても、
音楽に、こだわっちゃいます。

だから、フォームは
ちゃんとした上で、
ある部分では、もちろん、
メチャメチャやりましょう!
という風にやってきました。
糸井 ええ。

ただ、ダラダラしているだけだと、
見ている人がつまらないですよね。
お客さんとのやりとりができない。
山下 そうだね。

ぼくらにも、やっぱり、
「こちらが、おたがい
 やりあっているのを、
 お客さんが見ている」
という意識があるんです。

極端に言ったら、
ジャズマンどうしの
技の出しあいとか勝ち負けになる。
村松具視さんが、ジャズについて、
前に、そう言ってくれましたよね。

プロレスと一緒で
相手が技をかけてきたら、
見事にかかってやらないと
おもしろくないわけで……。

やっている人どうしの
レベルが違うと、技をかけても、
相手が何のことやら
わからないとなるとダメですよね。
タモリ シャドーボクシングを
ずっと見させられてるみたいな
ジャズって、あります。
山下 (笑)それはまずいよね。
やっぱ、相手がいないと。
タモリ それでも、二分ぐらいは
「なかなかスピードがあるな」
とは思うけど、延々やって
「……ありがとうございました」
と言われても、ねぇ?
山下 (笑)
糸井 あははは。
素人のカラオケって
基本的にそれですよね。
結局、本気な人ほど、
シャドーボクシングです(笑)。
タモリ ジャズって、
聞いてみると……どうも、
シャドーボクシングっぽいところも、
あるんです。

もともとが、
「ちょっと聞いてくれる?」
というような音楽なんですね。
山下 (笑)そうだね。
タモリ 「ちょっと、
 俺の話を聞いてくれるか?
 俺は、じいさんの代まで
 アフリカにいて」

それを聞く人もいるという。
山下 (笑)それは確かにそうだね。
タモリ 聞く人もいますけど、
聞かない人もいるでしょう?

ジャズの側面には
それがあるんです。

忙しかったり、
気分が悪かったりしたら、
聞く耳を持たないですよね?
糸井 うん。
 
(つづきます)



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2004-12-28-TUE


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