山下 |
ヨーロッパのフリージャズ一派が、
「あまりにも
何もかも自由にしようとして、
ダラダラと一時間やって、
もう、やることがなくなるから、
またビールを飲んで終っちゃう」
というジャズのかたちは、
まぁ、それはそれでいいんだろうし、
時には、憧れることもあるんだけど……。
やっぱり、ぼくにとっては、
それは気持ちの悪いものなんです。
どうしても、
音楽に、こだわっちゃいます。
だから、フォームは
ちゃんとした上で、
ある部分では、もちろん、
メチャメチャやりましょう!
という風にやってきました。
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糸井 |
ええ。
ただ、ダラダラしているだけだと、
見ている人がつまらないですよね。
お客さんとのやりとりができない。
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山下 |
そうだね。
ぼくらにも、やっぱり、
「こちらが、おたがい
やりあっているのを、
お客さんが見ている」
という意識があるんです。
極端に言ったら、
ジャズマンどうしの
技の出しあいとか勝ち負けになる。
村松具視さんが、ジャズについて、
前に、そう言ってくれましたよね。
プロレスと一緒で
相手が技をかけてきたら、
見事にかかってやらないと
おもしろくないわけで……。
やっている人どうしの
レベルが違うと、技をかけても、
相手が何のことやら
わからないとなるとダメですよね。
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タモリ |
シャドーボクシングを
ずっと見させられてるみたいな
ジャズって、あります。
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山下 |
(笑)それはまずいよね。
やっぱ、相手がいないと。
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タモリ |
それでも、二分ぐらいは
「なかなかスピードがあるな」
とは思うけど、延々やって
「……ありがとうございました」
と言われても、ねぇ?
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山下 |
(笑)
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糸井 |
あははは。
素人のカラオケって
基本的にそれですよね。
結局、本気な人ほど、
シャドーボクシングです(笑)。
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タモリ |
ジャズって、
聞いてみると……どうも、
シャドーボクシングっぽいところも、
あるんです。
もともとが、
「ちょっと聞いてくれる?」
というような音楽なんですね。
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山下 |
(笑)そうだね。
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タモリ |
「ちょっと、
俺の話を聞いてくれるか?
俺は、じいさんの代まで
アフリカにいて」
それを聞く人もいるという。
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山下 |
(笑)それは確かにそうだね。
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タモリ |
聞く人もいますけど、
聞かない人もいるでしょう?
ジャズの側面には
それがあるんです。
忙しかったり、
気分が悪かったりしたら、
聞く耳を持たないですよね?
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糸井 |
うん。
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(つづきます) |
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