山下 今日の楽隊を紹介しましょう。


ドラムスは堀越彰です!


ベースは斉藤草平です!


管楽器奏者はフルートのMIYAです!

ピアノトリオでもジャズはやりますが、
そこにひとり管楽器奏者が入りますと、
これがいちばん
オーソドックスなジャズの形になります。

ジャズのエッセンスは、「即興演奏」ですよね。
ただ、即興とは言っても、テーマを決めて、
「この和音の上でまちがえないようにしなさい」
というジャズのルールを守る上で演奏するから、
クラシックのような決まりを残しているんです。
そこが、ジャズのおもしろいところなんですね。
だから、すたれないんだとぼくは思っています。
タモリ テーマがあって、和音の進行があって、
それを何度もバックはくりかえすんですよね。
ソロの人がその和音の上に音をつけてやると。
山下 はい。
リズムの人も即興ですから、
ソロの人と会話をかわすように、
「あなたがこう来たならこういくよ」
というようなやりとりが起きるんですね。
それを見てくれると、
すごいたのしめるんだと思うんです。
タモリ だから、ジャズ聴いていると、
音楽ができる場にいあわせているんだ、
というよろこびが、なんかあるんです。
山下 そうそう。
タモリ それを「アドリブ」があると味わえると……。
山下 そうですね。
そこが伝わっていくといいと思います。
では、弾かせていただきましょう。

(演奏)

山下 (拍手を受けて)
ありがとうございます。
糸井 ホッとしました。
山下 (笑)すこしマトモですかね。
タモリ かなりまともになりました。
山下 (笑)まともです、彼らは。
糸井 なぜこの曲をお選びになったんですか?
山下 このグループは
今日のために集まったメンバーです。

やはり、ジャズマンの間の約束として、
会ってすぐできる曲っていうのは、
いくつかあるんです。

これならみんながやりやすかろうというもの。
それから、前に立つ人(フルート)が
機嫌よくできることが、やっぱり大事ですね。
糸井 あぁ、なるほど。
山下 こういうグループだと、
前の人がイヤイヤやってるとよくないんです。
だからMIYAにきいて、
彼女のレパートリーのひとつだというので、
じゃあこの曲にしましょうと、
だいたいそんなふうに決まります、曲は。
タモリ 意外と合議制で優しいですよね。
糸井 (笑)合議制。
山下 もちろん、
今日だけのバンドであろうと、
ぼくがいちおうバンマスですから、
ものすごくむずかしい
ぼくのオリジナルを持ってきて、
「絶対にこれをやる」と伝えれば、
それはもう、必死になって
みんなやってくれるでしょうが……
そういうもんじゃないと思いまして。
糸井 演奏の途中でMIYAさんが
「ニヤッ!」となさったのは、
あれはなんなんですか?
とても、うれしそうになさったので……。
タモリ (小声で)失敗したんじゃないですか?
山下 (笑)あはははは!
糸井 (笑)気持ちがいいのかなぁ、
と思ってたんですけども、
あそこから、会場のみなさんは、
何を感じていればよかったんですか?

MIYAさんの笑顔にはじまり、
演奏全体から、よくわかっている方は、
初心者とはちがう特別ないいものを、
感じていたりするものなんでしょうか?

わからない人より、
わかってる人のほうが、
より気持ちがいいようなことが
あるんじゃないかなと思いながら、
聴いてたんですけど。
タモリ あぁ、慣れもありますよね。
クサヤも、食ってくうちに
うまくなるっていう話もありますから。
山下 (笑)あはははは。


2005-04-29 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005