糸井 では、次の質問です。

「『ズージャ』といってしまう人には、
 逆らわないほうがいいのでしょうか?」

こういうの、ありましたねぇ。
タモリ かつて、ジャズマンが使った業界用語を、
さらにテレビ関係者が使っていたんですよね。
あれは、なんだったんですかね?
山下 やっぱり、ひとつの仲間意識だろうね。
「一般の世間とは違うんだぜ」と……。
糸井 負のエリート意識というか。
「俺たちは、はぐれもんだからよぉ」と。
タモリ で、堺正章先生が、
業界用語を極限におしすすめまして。

「いやぁ、昨日さぁ……
 ワーカのレーガナに、ズンタッタ!」

「何ていったんですか?」

「川の流れにたたずんだ」
山下 (笑)あはははは!
タモリ そこまでいって、その文化は終りました。
山下 今の世代は
「ズージャ」だのいう人はいないもんね。
ピアノはピアノ。「ヤーノピ」ではない。
糸井 昔、山下さんにきいたんです。
「1文字のものは
 どうやってひっくりかえすんですか?
 たとえば『眼』はどうするんですか?」
そしたら……「エーメ」と。
山下 そうです。母音が出てくるんですよ、急に。
糸井 そのあとに、
「たとえば『耳』はどうするんですか?」
ときいたら、
「耳は、心の中で逆さにするんだ」と。
タモリ (笑)あはははは!
糸井 だから「ミーミ」なんです。
そこは意識の問題であると。
山下 ええ。「ミーミ」です。
糸井 それは、なんか説得力ありましたけどねぇ。
ミーミとエーメは、おぼえておきましょう。
山下 (笑)おぼえないほうがいいですよ!
糸井 次は、基本的な質問にいきましょう。
「ジャズの定義は、なんですか?」
山下 むずかしいですよね。
タモリさんは、
「ま、たかが民俗音楽でございますから」
というセリフを残しています。

確かに、民俗音楽の一面もあります。
アフリカとヨーロッパが、
新大陸アメリカで出会ってできたものだから。
糸井 アフリカの音楽と、
ヨーロッパの音楽が、衝突したと。
山下 まあ、そうですね。
タモリ そうですよね。
糸井 衝突して発火するわけですね。
タモリ ふつうは、土着の音楽と
外来の音楽が衝突するわけですけど、
ジャズの不思議なのは、
ヨーロッパとアフリカが、
おたがい何にも関係のない
アメリカ大陸で衝突してるんですよね。
糸井 おもしろいなぁ。
外部で戦ったんだ。
タモリ はい。
糸井 「便所の裏に来い!」
みたいなことですよね。
タモリ (笑)いや、ちょっとちがいますけど。


2005-05-06 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005