糸井 次の質問にいきます。

「今、世界でも
 ジャズがさかんに演奏されて、
 きかれている地域というのは、
 アメリカですか? ヨーロッパですか?
 それとも、日本や、アジアなのですか?」
山下 これはよくいわれるんだけども、
ジャズのCDがいちばん買われるのは、
世界のなかでも日本だとされていますね。

日本人はとてもジャズが好きで、
NYのジャズクラブなんかでも
日本人のお客さんが来ないと
成りたたないというような意見もあります。
タモリ へぇー。
糸井 前に、シャンソンについても、
同じ話をきいた気がしますね。
タモリ シャンソン、
フランスで絶滅したんですよね?
糸井 あんまりきかれてないらしいです。
日本では、おすぎとピーコとかがいるけど。
山下 (笑)
タモリ 日本人が向こうでシャンソンやると、
フランスの年配の人たちが
よろこんでききに来るらしいんです。
つまり、誰もやってないんですよね。
糸井 ジャズもそうですか?
山下 日本は、CDとかいうものの
マーケットとしては、すごいらしいですよ。
糸井 山下さんがアメリカに住んでたら、
食いっぱぐれるんですか?
山下 ありうるかもしれませんね。
糸井 ……ヨーロッパもダメなんですか?
山下 ヨーロッパの受けいれかたは
日本とよく似ていて、
アメリカのジャズを
現代芸術として捉えて、
ちゃんと鑑賞するんですよね。

夏のジャズフェスティバルの
さかんな加減は日本以上かもしれません。
アメリカ本国がいちばんだめなんですね。
ジャズマンが尊敬されていないというか、
仕事の機会が、あまりないんですよ……。
タモリ アメリカは、
芸術はジャズしか生んでないからね。
料理もアメリカ料理ってないもんね。
文化的には、不毛なところなんです。
山下 ただ、ジャズを使って
文化政策はやるんです。
日本の終戦直後、占領政策として、
アメリカ文化の影響を日本に与えるには、
野球と軽音楽が最適だということを、
議会で決めてるんですよね、アメリカは。
糸井 あぁ……うちの父親、
そんなに知的な人じゃなかったけど、
ジャズを聴いてるフリをしてました。
山下 (笑)「フリをしてる」というのは?
糸井 ラジオでジャズみたいなのが、流れますよね?
俺は番組をかえたいのに、父親はきいていて。
でもあれは、占領政策だったんですね(笑)。
タモリ いまだにアメリカには、
ジャズ帝国主義みたいなところがありますね。
山下 ジャズ帝国主義はありますね。
「ジャズは俺たちのものだ」という。
ベニー・グッドマンを、
はやくからモスクワに送っていたり。
そういう使いかたをちゃんとします。
タモリ ジャズの布教を、ていねいにやったんだ。


2005-05-05 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005