糸井 では、次の質問です。
「友人に誘われてジャズのライブに行くと、
 一曲ずつが長く、つい眠くなってしまいます。
 短い演奏が好きなプレイヤーもいるんですか?」
山下 レコードになっていたものは、みんな短いですよ。
SP盤というのは、2分50何秒のなかで
カルテットとかトリオをやっちゃうんですから。
それでもチャーリーパーカーなんて、
観賞にたえうる名演奏を残してるわけですよね。

ただ、ライブで2分で終わったら、
やっぱりちょっとダメだと思うんです。
ライブというのは、
いくら長くなってもいいからライブなわけで……。
それは、やっぱり、つきあってくれなきゃ、ね?
糸井 やっぱり「俺の話」なんですね(笑)。
タモリ 「俺の話」をきいてあげる姿勢なんです。
山下 「何をいってるんだこいつは。
 同じことをダラダラいいやがって」
と思ってもいいんです。
でも、それもジャズだからね。
「この人、今日は当たってないなぁ」
というふうにきけばいいんです。
「言葉、ろれつもまわらないのに何いってんだ」
って思って、きいてやってください。
糸井 (笑)ではこのへんから中級の質問にまいります。

「私が見てきたジャズマンは、
 演奏させるとピカイチでスゴイですが、
 ふつうのときには、時間には遅れるし、
 女にはだらしないしと、
 人間的に好きになれない感じがします。
 こういう人が多いのは、なぜでしょう?」
山下 (笑)はっはっはっは!
タモリ だいたい、人間ぜんぶ、そうじゃないですか?
えらい人っていうのは……。
糸井 (笑)これ、質問じゃないよね!
山下 きっと好きになりたいんだよね。
好きになってあげてくださいよ。
なんですか、時間に遅れるくらいで。
まだ好きなんです。きらいになりたくない。
だからこういっているんですよね……。
糸井 あんまり悪いことしてないですもんね。
山下 してない、してない。
演奏させると、ピカイチでスゴイ。
……こんな褒め言葉、ないよ。
糸井 うん。
べつに泥棒してるわけでもないし。
タモリ じゃ、演奏だけを
きいてりゃいいんじゃないですかねぇ。
山下 うん、そうだね。
タモリ そいつと待ちあわせなんか、
する必要ないですよね。
山下 (笑)そうだね。


2005-05-12 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005