糸井 では、次の質問にいきます。
「ジャズをどうきけばいいのでしょうか?
 イメージではソファーなどで座って
 足を組み、グラス片手に目をつむり、
 音をわかってるふうに
 ちいさくリズムを取るというか……。
 手拍子や合いの手、掛け声などは禁止。
 服装は、ドレッシーなんでしょうか?」
ずいぶん長いですけども……(笑)。
山下 さっき、ぼくはMIYAのソロの後に、
ちょっと拍手をうながしてしまいましたが、
ああいうソロが終わった時というのは、
遠慮なく、何か言ってほしいんですね。
糸井 そこでどう言えばいいんですか?
「イェイ!」は、ロックっぽい?
山下 「イェイ!」だっていいですよ。何でも。
糸井 ブラボー! 音羽屋! みたいな決まりはある?
タモリ クラシックの「ブラボー」は、
あれ、ちょっとつらいですね。
糸井 なんでイヤミな感じが、するんでしょうねぇ……。
山下 あれは、直後に言って、
ライブレコーディングに
自分の声残したい人がいるんだって。
だからその人は間髪入れずにやるんです。
実に、困った人がいるんだとききました。
タモリ ブラボーマニア。ブラボープレイ。
山下 ほんとは終わったら、数秒、余韻があって、
それからバラバラバラバラと拍手があって、
それがぜんぶに広がっていって、
クラシックのオケの人たちもおたがい顔を見て、
「完璧だったね」っていう……
そういう瞬間が、年に一、二度あるそうですね。
ヨーロッパではほんとにすごいとそうなるって。
お客さんがシーンとしちゃってから、
ウワァーとなるっていうんですがね。
日本のクラシックでは、
どこにいってもブラボー屋がいますから。
ぶちこわしですよね。わざとらしくって。
タモリ あれでクラシックをきくのが
イヤになった人っていると思います。
山下 ジャズはどうやっても、
何をいってもいいです。

アメリカでやっててわかることもあります。
たいていは、
メシなんか食うところでやりますよね?
日本の人たちは、最初から
「キャーッ!」ときいてくれるんです。
ところが向こうの人たちは余裕があるから、
最初は食べたり飲んだりしゃべったりする。

ところが、ある一曲のなかでも
「ここぞ」というところが
ジャズの演奏にはあるんですけど、
そこは、観客が逃さないんですね……
そこにくると、シーンとしてきいている。
これが、却って、やる側にはたまらんのです。
最初から真剣にきかれるのもいいんだけど、
ダラついているのが、だんだんくるという、
あれが、いいですね。
わかったところでわかった顔をする人もいて。
こわいのはバーできいている同業者ですけど。
糸井 寿司屋が寿司食いに行くみたいなやつですね。
山下 (笑)そう!
糸井 でも、いい同業者はうれしいでしょ、また。
山下 もちろん、楽屋に来て、
「よかったぜ」
と言ってくれる人もたくさんいました。
つまり、なんていうんでしょうか……
自分がきいているよっていうことを、
いくら表現してもいいと思います、ジャズでは。
糸井 なるほどなぁ。


2005-05-11 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005