糸井 では、次の質問に……。
「どうして、何人かで
 即興で演奏できるか、教えてください」
これはいい質問ですね!
タモリ これはやっとかないといけないですね。
糸井 「即興なのに、みんなでやれる」ですね。
山下 さっきから何度もやってきてる演奏で、
ぼくたちがそれぞれ見ている紙がありますが、
そこには和音とメロディが書いてあるんです。
その紙だけで、何十分でも演奏はできますね。
糸井 楽譜とは違うんですか?
山下 楽譜の一種です。
メロディーと和音が書いてあるだけという……。
タモリ バックはそれをくりかえすだけなんです。
12小節なら12小節をずっとくりかえすだけで。
糸井 はい。
タモリ ソロを取る人は、そこに音をのっけて、
その場で作曲していくわけですよね。
山下 そうです、そうです。
和音の進行っていうのがあるんです。
それをおぼえた上で、
それに合う音を、その場で作って……。
糸井 その場で作った音が
合わない音だったりしないんですか?
山下 「今は、この音が合う音だから」
ということは決まってますから。
糸井 素人がやれば、ちがう音が出ますよね?
山下 はい。
それにその場合には、
まず、たくさんの音を
出せないんじゃないかなぁ?
タモリ うん、出せないですね。
糸井 なるほどなぁ。
山下 そういう人は、即興の時に
どうしていいんだかわからない。
それはクラシックの名手でもそうですよ?
タモリ うん。
山下 楽譜をとりあげちゃうと、
何もできなくなっちゃいますから。
タモリ まぁ、でも、
ある程度の構文みたいなものが
ジャズにはありますから、それを活用もできる。
糸井 つまり、暗記しているものが、
貯金としてあるわけですね? ある程度。
タモリ はい、ありますから、
それをもとに変形させていけるんです。

大学の時のジャズクラブで、
先輩がアドリブをはじめていたんですけど、
大爆笑を買ったんです。
ドミソしか使っちゃいけないと
思っていたらしいんですよね。

「♪ドドミミソソドドドドミミソソド」

……なんでアドリブになったら
不自由になるんだよ!
山下 (笑)ドミソでも合ってはいるんです。
だから、いちおう、まちがいではない。
糸井 みなさんに、ご迷惑をかけないように
左の車線を30キロで走りますみたいな?
タモリ うん。
ただ、自由に展開できるところで、
ものすごい不自由にしちゃっているだけ。
糸井 そういうことですね(笑)。
山下 もちろん、
それだけでもジャズはできるんです。
(ピアノに向かって)
ただ、ドミソドミソドミソ……という、
こういう音をジャズはいちばんきらうんです。

だから、ジャズっぽい和音をこう混ぜて、
これがドミソだといいはるのが、ジャズです。
タモリさんがさっきいったアドリブをやると……。


糸井 おもしろい!
タモリ これ、おもしろいですよね。
山下 (笑)合ってはいる。
糸井 やっぱり、笑いますけどね。
タモリ 笑うでしょう?
これを大学で平気でやってたんですよ。


2005-05-15 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005