柳瀬 |
チームのすごさ、というお話が出たところで‥‥。
採用する側、すなわち会社の側が
「チームの仲間」を選ぶとき、
どういうところを見てるんでしょう、川上さん?
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川上 |
やはり、どの企業にも共通していることといえば
「いっしょに、はたらきたいかどうか」です。 |
柳瀬 |
『はたらきたい。』のテーマにも通じますね。 |
糸井 |
「チームの仲間」を選ぶんだから、当然ですよね。 |
川上 |
コミュニケーション能力とか、
まぁ、企業によっていろんな言いかたをしますが、
最低限の、共通した基準は、そこでしょう。 |
柳瀬 |
なるほど。 |
川上 |
さきほど、前川さんもおっしゃいましたけど、
たったひとりで、
すべてが完結する仕事って、ほとんどないですよね。
むしろ、大きな仕事になればなるほど
より多くの人たちが絡んできます。
だから、なんだろう‥‥人としての総合力というか、
いろんなプロを巻き込みながら
うまくやれるちからが、求められてきますよね。 |
柳瀬 |
それって「転職」の場合も、同じなんでしょうか? |
前川 |
基本は、やはり、同じだと思います。
ぼくも、採用面接をしたことありますが、
新卒と中途採用者がちがうのは、1点だけ。
「あなたは、いったい何ができるのか」ということ。
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柳瀬 |
具体的なスキルのことですね。 |
前川 |
ええ、そこはもちろん、問われます。
でも、言ってしまえば「それだけ」です。
それ以上に、
この人が、自分たちのチームに入ったとき、
他のメンバーと仲良くやれるかどうか、ということが
大きなポイントになってくると思います。 |
糸井 |
それに、いまは、昔とちがって
スキルって、あっという間に進化しますから。 |
渋谷 |
しますね。 |
糸井 |
すぐに陳腐化してしまう技術より、
「いっしょに、はたらきたい」と思わせるちから。 |
柳瀬 |
経営者としての糸井さんご自身は
社員を採用するとき、どういうところを見てるんですか? |
糸井 |
採用の面接は、社員に任せてます。
つまり「いっしょに、はたらきたいかどうか」の判断を
その採用現場のチームにゆだねて、
ぼくは、彼らの結論を見て、
「ああ、よかったね」ってパターンがほとんどですね。 |
柳瀬 |
ほほう。 |
糸井 |
ほんとに「スキル」で採らなければならないときって、
そこが欠点だということですからね、会社の。 |
柳瀬 |
そこに穴が空いてる、と。 |
糸井 |
うん、そして、組織の弱点なんていうものが、
だれかひとりのちからで埋められるとも思えないし。
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柳瀬 |
もっと構造的な問題ですね。 |
糸井 |
そう思います。
‥‥ちなみに今、
新卒の学生さんって、どのくらいいるんですか? |
川上 |
リクナビの会員で58万人ぐらいですね。 |
柳瀬 |
登録してる学生さんだけで、58万人。 |
川上 |
リクナビには「ほぼ登録している」という前提で言うと、
ざっくりと、約60万人ぐらいでしょうか。 |
糸井 |
たとえば、このランキングの上位20社に
その60万人のなかの
どのくらいの学生が入社できるんですか? |
川上 |
いちばん多いところ‥‥メガバンクのひとつが、
だいたい2400人くらいですから‥‥
20位まででしたら、
1万人くらいじゃないかなと思いますけれど。 |
柳瀬 |
つまり、人気上位の企業に入れるのは
60万人のなかの、約1万人ということですか。 |
川上 |
そんなもんでしょう。 |
柳瀬 |
つまり、それって、大半の学生さんが
志望の会社には入ってないということですよね?
そのあたり、どうやったら、
うまく自分の気持ちに
折り合いをつけられるんでしょうか。 |
糸井 |
直接的な答えになっていないかもしれないけど、
ひとつ、言えるのは‥‥
みんな「もうちょっとがんばれば、できるから」って
言われながら、大人になるじゃないですか。
でもさ、よっぽどね、運でもよくないかぎりは、
「もうちょっとがんばればできる」ことって
じつは、そうとう難しいことだと思うんですよね。 |
柳瀬 |
「あと1歩」ってのが、いちばん難しいと。 |
糸井 |
だから、すばらしい才能の水泳選手が、
「自己新で日本新記録を更新した」なんてニュースは
めったにあり得ないことだから、ぼくらは拍手する。 |
川上 |
そうですよね。
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糸井 |
ぼくたち、ふつうの人間というものは
できるに決まってることでも
できないくらいだと思ったほうがいいんですよ。 |
柳瀬 |
うん、うん、うん。 |
糸井 |
逆に言えば、自分ができる精一杯のことを
ごまかさずに、きちんとできるってことは、
ある意味、本当にすごいことなんですよね。
なにより、
まわりの人に「約束できる」じゃないですか。 |
柳瀬 |
約束。 |
糸井 |
チームの仲間にも、お客さんにも‥‥
約束したことを、きちんと守り続けてる人って、
ほんとうのちからがついてくる。
つまり、人の進化っていうのは
「右肩あがり」の「ななめグラフ」じゃなくて、
らせん構造、スパイラルなんですよ。 |
柳瀬 |
うん、うん。 |
糸井 |
自分ができるだけのことを
きちんきちんとやってこれたら、ちょっとずつ‥‥。 |
柳瀬 |
ちょっとずつ。 |
糸井 |
その人は、ちからを、つけていきますよね。 |
柳瀬 |
はい。 |
糸井 |
あらゆる社長が、言うじゃないですか。
自分でじゃ何もできないんで、できる人を集めたって。
あれって謙虚なんじゃなく、たぶんホントなんですよ。
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渋谷 |
できることを、ちゃんとやるっていうことのすごさを
すぐれた社長さんは、知っていますよね。
毎日毎日、できることをやる。
100メートルを11秒で走れっていわれても
絶対ムリですけれど、
毎日毎日、たとえば社員に声をかけるだとか、
営業の現場を見てまわることはできるんです。 |
糸井 |
そして、そういうことをやれる人が、すごい。
いろんな「社長」に話を聞いてきましたけれど、
その経験からも、実感しますね。
<つづきます>
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