糸井
Itoi |
結婚のことも驚きましたけど、
あなたがフィギュアスケートの競技に
復帰するっていうのは、
私たちにとって大きなニュースでした。
じつはぼくは、あなたはスケートから
離れて行くんじゃないかと思っていたんです。
というのも、あなたはフィギュアスケートだけでなく
さまざまな分野に興味と才能を持っている。
だから、アスリートとしては、
年を取ると体力的には難しくなっていくけれども、
ジョニー・ウィアーの世界は、
スケート以外の分野に花開いていくんじゃないかな、
というふうに思っていたんです。 |
We were surprised at the news of your marriage, but even more at your return to competitive figure skating. I see you as a very talented person, and your talent goes far beyond the ice rink. When I saw you branching out into other areas of interest, especially with the tendency of athletes to face physical struggles as they get older, I figured you would just gradually depart from figure skating and flourish in other places. |
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ジョニー
Johnny |
そういうふうになればいいな、と思います。 |
I hope so. (laughs) |
糸井
Itoi |
でもあなたはソチ五輪への出場がかかる
このシーズンにカムバックした。
ぼくは素人ですが、年齢的に、肉体的に、
オリンピックを目指すことが
簡単ではないことはわかります。
そういう、厳しい競技に戻ってくるっていうのは、
どういう気持ちなんですか?
フィギュアスケートに戻ってくることで
いろんなことができなくなるわけでしょう? |
But you actually came back to face the Sochi Winter Olympics. I’m just an amateur, but as I understand, it’s not an easy task to aim for the Olympics with your age and physical fitness, relatively speaking. How did you feel about your decision to come back to compete? Doesn’t that hold you back from other opportunities beyond figure skating? |
ジョニー
Johnny |
そのとおりです。
でも、やっぱり、オリンピック以上に
達成感を味わえるものってないんですよ。 |
Yes, but there’s no feeling like competing in the Olympic Games. |
糸井
Itoi |
ああー。 |
Ahh. |
ジョニー
Johnny |
どんなに探しても、あれと同じ達成感はない。
小さい頃からフィギュアスケートをやってきたので
あの達成感を味わいたいというときに、
フィギュアスケート以外に思いつかない。
それで、去年、競技に復帰したんですが、
ケガとか、健康面のいろいろな問題があったり、
克服すべき課題がたくさん見つかったりしたんです。
でも、そういった課題があのタイミングで
出たということについては、
むしろよかったと思っています。 |
Nothing that I’ve found has the same feeling of accomplishment. And, given that I’m a figure skater from a very young age, figure skating is the one thing that I want to be accomplished in more than anything else. Last year I tried to compete, and I had a lot of health problems and issues that I couldn’t have foreseen. But thank God it happened when it did. |
糸井
Itoi |
なるほど。 |
I see. |
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ジョニー
Johnny |
それから、競技に復帰したいちばんの理由は、
ぼくのファンはもちろん、ぼくを嫌っている人にも、
がんばればできるんだ、
っていうことを見せたかったんです。
歳とってても、太ってても、やせっぽちでも、
やればできるんです。
実際、これだけブランクがあって、
競技に復帰した人はいままでいないわけで、
去年、優勝はできなかったけれども、
ぼくはちゃんと競技に戻ってきた。
それを見て、「ほんとうに誇りに思う」とか、
「逃げ出すところだったけど
もう一度がんばろうと思った」とか、
そういうことを思った人がたくさんいたんです。
だから、オリンピックで金メダルをとるとか、
全米選手権で4回目のチャンピオンになるとか、
そういうことだけじゃなくて、
人々をハッピーにして、みんなが笑顔になって、
みんなが自分のことが信じられるようになる、
そのためにがんばっていると思います。 |
But, the main reason I wanted to compete again was to show my fans especially, and anybody that hates me, that you can do anything if you work hard and do your best. It doesn’t matter how old you are, how fat you are, how skinny you are—you can achieve anything if you try.
And, while I didn’t win my competitions last season, I did something that very few skaters do, and actually returned. I finished a competition, and good or bad, I did what I said I would do. And now so many have written me to say that they’re really proud of me.
I was able to overcome something hard in my life to show that this is possible. That’s why I did it. Not to win a gold medal at the Olympics, not to become four-time national champion. But to make people happy, to make people smile, and make people believe in themselves.
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糸井
Itoi |
そういう理由のために戻ってくる場所としては、
やはり、オリンピックなんですね。
アイスショーで演技することと、
オリンピックに出ることでは
たぶん、すごく大きな違いがあるんですね。 |
I can’t think of a better place than the Olympics to make a comeback for a reason like that. So what you’re saying is that performing in an ice show and competing for the Olympics are two very different things. |
ジョニー
Johnny |
まったく違います。
やっぱりアイスショーはエンターテイメントなんです。
もちろん、難しいジャンプを跳びますし、
競技と同じような技術もつかうんですが、
ずっと自由なんです。
競技のほうには細かいルールがたくさんあって、
正直、そのルールは嫌いなんですけど、
やっぱりそれを克服して得られる
かけがえのないものがあるんです。
たしかにぼくは、ルールの多い競技よりも
自由なアイスショーのほうが好きだけど、
トレーニングを積んで競技に出ることには
ものすごい満足感がある。 |
Yes, absolutely. Figure skating in an ice shows is for entertainment. Of course, we do difficult jumps and things that we do in competition, but there’s freedom to it. There are so many strict rules to follow in competition. Frankly speaking, I hate all those rules, but they can be very inspiring. So while I like the freedom of the ice shows more than competition, training and competing is very fulfilling. |
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糸井
Itoi |
いつでも乗り越えるべき壁みたいなものが
あることが、あなたの活力なんですね。 |
You seem to be energized by the obstacles that confront you. |
ジョニー
Johnny |
はい。
そういった壁でこそ、人は作られると思います。
その障壁は、持って生まれたものじゃなく、
自分でつくったものでもなく、
その人を押さえつけるようなものだけど、
それこそが、その人がどんな人かを
あぶり出してくれると思ってます。
みんながそういうふうに
考えるわけじゃないでしょうけど、
ぼくにとって壁というのは、なくてはならないもの。
それがあるから、続けようって思えるし、
もっとよくしようって思える。
体力的な問題、年齢的な問題、経済的な問題、
たくさんあるそれぞれの問題が、
人として、それを乗り越えさせる力をくれる。
それは、新しいインスピレーションの元なんです。 |
Yes. Obstacles make us who we are. It’s not the things you’re born with or the things that you create. It’s the things that knock you down that really show what kind of person you are. Not everybody feels this way, but in my opinion, obstacles have always been the better part of the journey. Every time, I feel like I can continue, and I can improve myself, whether it has to do with my body, my age, my sport, my finances, or my life issues. Somehow as humans we always overcome obstacles, and that’s a very inspiring thing to accomplish.
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糸井
Itoi |
あなたは、小さいときから、
ずっとそんなふうにしてきたみたいですね。 |
It sounds like you were like that from a very young age. |
ジョニー
Johnny |
そのとおりです。
ぼくはすごく小さい村の出身で、
将来がまったく見えない場所だったんですね。
小さいころから、何をするにも壁があって、
それこそが、ぼく自身とぼくの人生をつくっていった。
そういう場所に育ったことに、
ぼくは打ち克たなくてはいけなかった。
それは、ぼくの人生にずっと流れてることで、
いろんな面でぼく自身をつくってくれたともいえる。
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Absolutely. I’m from a very small village, and there aren’t a lot of opportunities to look forward to. I grew up with the obstacle of creating my own life, and had to learn to overcome even my geography. That’s been the common thread through my whole life, and it makes me better at everything that I do. |
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糸井
Itoi |
前に会ったときも、
生まれ故郷の小さな村の話をしていましたね。
やっぱり、あなたにとって大きなことなんですね。 |
You also mentioned your small hometown when we met last time. That must be a big influence on you. |
ジョニー
Johnny |
そうですね。
小さなところから出てきて大きいものを目指す
というのは、確実に自分の中にあると思います。
そういう正反対のものってすごくおもしろくて。
小さいところから
すごく大きい舞台で活躍する人がいたり、
逆にすごく大きい舞台のところで生まれ育った人が
ものすごくシンプルな生活に憧れたり。
黒と白、明暗、大小、
そういう極端な対比を人は求めるし、
それはやっぱりおもしろいと思います。 |
I think there’s something very special about coming from a small place and becoming big. And there’s also something nice about people that are big, but keep it a secret and live like they are small. Those opposites are really interesting in life—black and white, love and hate, big and small. Whenever you have something, you always want the opposite. So when you have a lot of money and are born into a beautiful city and have everything you could want, all you want is a simple life, and vice versa. |
糸井
Itoi |
小さい村で、
いろんな環境がないところで育つときには、
自分の考えとか自分のボディっていうのが、
とても貴重な道具でもあるわけですよね。 |
So when you come from a small village that lacks external resources, all you have to propel yourself forward is your own thinking and your own body. |
ジョニー
Johnny |
夢を見ないと駄目なんです。
夢を見るしかない。 |
You have to dream. It’s the only answer I have. You have to dream. |
糸井
Itoi |
夢を見るのが、生きていく方法。 |
So to live, you have to dream. |
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ジョニー
Johnny |
そう思います。 |
Yes. I think so. |
糸井
Itoi |
それをあなたが言うと、すごくリアリティがある。 |
When you say it, it’s got such a punch of reality to it. |
ジョニー
Johnny |
ありがとう。
でも、糸井さんだって、いつかは
オリンピックのフィギュアスケートの
チャンピオンになりたいっていう夢があるでしょ? |
Thank you. And I know Itoi-san dreams of being an Olympic figure skating champion. |
糸井
Itoi |
うーん、ぼくの夢はその形をしてないな。 |
Hmm, my dream looks a little different than that. |
ジョニー
Johnny |
(笑) |
(laughs) |
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To Be Continued......
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