「愛でたき表紙」、
書きながらエッセイとして
成り立っているのか少々不安ですが、
存分に想いの丈を綴らせて頂いてます。
よろしければ
もう少しおつきあいくださいませ。
私は以前、本の文章をあまり読まないこどもでした。
小学生4年生の頃までに
読んだ本で記憶にあるのは、ほぼイラスト。
どんな本もイラストしか見ないこどもだったのです。
写真の載っている本は、写真だけ。
説明文はあってもスルー。
小説をたまに図書館で借りたと思ったら、
やっぱり挿絵だけ見て、図書館に即返却。
おかげで読書冊数はそこそこ多かったのですが、
きちんと読んでないので
内容はあまり理解していません。
「読書してないじゃん!」と
自分でも言い放ちたくなりますが、
こどもの私自身がそうだったように、
絵だけで独自のお話を想像して
楽しんでいることもあるので、
一概に読書の定義やその善し悪しは
言えないんですよね。
それはさておき、
小学生の私は、
「絵の少ない、文字が多い本は面倒だし、
小説なんて自分には読めそうにないや」と
思っていました。
小学校高学年になった頃。
学校の図書館のカウンターのすぐそば。
本の表紙が見えるようになっている棚があって、
ちょうどいくつか新作が入ったようなので
棚を眺めておりました。
そこで、
小説を読めるようになった1冊に出会いました。
目に入った瞬間、表紙の細かいイラストに惹かれて、
すぐに借りようと思ったのを覚えています。
当時、魔法使いが活躍する小説や
いろんな種族が一緒に旅に出る
冒険映画が流行っていて、
小学生の私や周辺にもちょっとした
ファンタジーブームが起こっていました。
ブームの最中にこの本が現れたのです。
仮面と矛を持ち、一歩踏み出すかっこいい男の子。
その横にいる友達っぽい男の子。
なんだかお調子者キャラっぽそう。
後ろはお城だ! ファンタジー系の始まりっぽいな〜!
ページをパッとめくってみるとほとんどが文章で、
一瞬、「これ自分に読めるのか…?」と
躊躇ったのを覚えています。
それでも、
「表紙の仮面は何? 持っている武器もかっこいい!
うしろの人は誰だろう?」
など、絵の詳細が気になってしかたない小学生。
物語の絵なんだから、読めば分かる。
たいへんそうではあるけれど、知りたいなら、
読むしかないなぁ。がんばって読んでみよ!
このときはじめて
知りたい好奇心が、文章苦手な自分に勝ち、
1冊の物語を内容を理解しながら
読み終えることができました。
子どもながらに苦手を克服したぞ!
と快感でありました。
シリーズが進むごとに増える
いろんな種族の仲間たち。
恋あり、ピンチあり、大盛り上がりの物語。
ますますいろんなことが気になって、
夢中になって読んでいると
いつの間にか、
この表紙が生まれる元になった
物語も好きになっていました。
物語在りきの表紙だと分かると、それからは
気になった表紙をきっかけに
未知の分野の本へ挑戦するようになりました。
画面いっぱいのタイトル文字の本は、
インパクトあり、驚きありの知識が詰まったハウツー本。
白地のシンプルな表紙には、
淡々としていながら、時に
静かな熱を帯びた文章が綴られる本。
繊細なイラストの表紙には、
主人公の感情が揺れ動く、細やかな心理描写が描かれた本。
表紙が堅く、細かい箔押し装飾の施された本は、
語り部が宝物のように古き良き時代を伝える本。
表紙の扉のおかげで、
恋愛小説、ミステリー、SF、青春物、
エッセイ、ハウツー本、伝記……
多くの世界を知ることができました。
私を知識や物語の世界に
招待してくれたのは、本の表紙でした。
現在、
私は本のデザインを専攻に学んでいます。
きっかけはもちろん、本の表紙です。
いつか自分がデザインした本を手に取った人が、
「ああ、僕はこの表紙がきっかけで
この世界が好きになった。
この本に出会えてよかった。」
そう思ってもらえるような
愛でたき本の表紙を制作するのが夢です。
「愛でたき本の表紙」、いかがでしたでしょうか。
最後まで読んで頂きありがとうございました!