- ——
- もし、卵を食べちゃダメって言われたら、
どうするんですか。 - ツレハナ
- えー……どうしよう……食べないのかな……
どうしよう、考えただけで悲しい気持ちになってきた…
人生の楽しみをそがれてしまうよ……考えられないよ… - ——
- あの、たとえば、卵を食べるために
無理難題を出されたらどうするんですか?
食べたいなら、毎日マラソンしなさいとか。 - ツレハナ
- うーん……やるかも……やるかもなあ……
ああ、ほんと、悲しい気持ちになってきちゃった… - ——
- (笑)
卵は、いつから好きなんですか? - ツレハナ
- 私は、料理もすごく好きなんだけど、
最初の料理の記憶も、卵料理なんだよねえ。
小学校低学年の頃かなあ、
両親が共働きで、あんまり家にいなかったのね。
火は使うなと言われてたんだけど、
電子レンジは使ってよかった。
子どもだったから、
料理のテクニックもバリエーションもないんだけど、
やっぱり卵を食べたかったみたいで。 - ——
- 小学生の頃、すでに、「卵が食べたかった」んですね(笑)
- ツレハナ
-
それで、みんなが通る道だと思うけど、
卵を割ってお皿に入れて、
レンジでチンして、爆発させてた(笑)当時はインターネットもないから、
針で穴あければいいこともわからなかったから、
何度も何度も爆発させてたの。 - ——
- それでも食べたかったんですね!
- ツレハナ
- そうそう。
めげずに、いろいろ試してわかったのが、
卵をといてからチンすると爆発しないってこと。
卵をといて、塩こしょうして、
レンジに入れると、たまごがぷわーってふくらむのね。 - ——
- へえ!
- ツレハナ
- 1分チンして、
ぷわーってふくらんだら、
取り出して、かき混ぜて、
また1分チンしたら
ぷわーってふくらんで……っていうのを、
すっごい作ってた。
今思うと、たいしておいしくなさそうなんだけど(笑)
それを何度も作って、おやつに食べてたの。 - ——
- 卵をといて、チンして、ぷわーってなって、
それをもう一回混ぜるんですか? - ツレハナ
-
そうそう、最初は溶き卵1個分を、
いきなり3分チンしたりしてたんだけど、
そうすると、外だけがやたらにかたくなっちゃうでしょ。それを、何度かいろいろ工夫してみて、
「1分やって、外がかたまって中が半熟になったら、
混ぜて均一にして、それをまたチンする…ってすると、
ちゃんと均一に火が通るなとか、
しかもそれを3回やったほうがおいしいな、とかって
だんだん気づくんだよね。 - ——
- すごい! すでに、卵への強い思い入れがある……
- ツレハナ
- ただそれだけのものを、よく食べてたの。
- ——
- 今作ってみたら、
すっごくおいしいかもしれないですね! - ツレハナ
- うん、たぶん、
「たんなる卵だ」って味だろうね(笑) - ——
- それは、何回くらい作ったんですか?
- ツレハナ
- 月2回は作ってたから、
50回くらいは作ったんじゃないかな - ——
- もはや熟練…!
ほかには何を作ってたんですか? - ツレハナ
- あとは目玉焼きとか、卵焼きかな。
でもあるときね、親の本棚に、この本があるのを見つけて。
これ、当時私が見つけたそのままの、親の本なんだけど。
- ——
- えー!!!そうなんですか!!!!
- ツレハナ
-
昭和52年に発売の本で、
本棚にこれがあったんだよね。
小学生のとき、この本を読んで、
「なんておいしそうなんだろう!」って感動して。
最高だ!!!! と思って、もう何回も何回も読んで。
もちろん当時は、フランスに行ったこともないんだけど、
食べるのが大好きだったから、
赤線を引きたいくらいの気持ちで読んだの。それで、このなかに、オムレツって言葉がでてくるのね。
タイトルにもなってるんだけど。
で、「このおいしそうなものはなんだろう?」
「バタってものを溶かす、これは何?
バターやマーガリンとは違うの?」って思って。1,卵をよくかきまぜること、
しかし泡がたつほどかきまぜすぎないこと。
2,バタまたは油が熱したところに卵を入れること。
3,火加減は強めにする。
4,卵を流しこんだら、そのままほっておかず、
かきまぜること。
5,焼き立てを食べさせること。
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(石井好子、暮らしの手帖社)
- ツレハナ
-
この5つがあれば、
オムレツは誰でもおいしくできるって書いてあったの。
それを読んで、親に
「お母さん、私、このオムレツっていうのが食べたい!
この通りにつくって!」って言ったのね。そしたら親には、
「オムレツなんて、いつも食べているじゃない」
って言われて。
母のなかでは、オムレツと、
普段作ってくれていたたまご焼きが、
同じものとして見なされてたみたい。 - ——
- ああ、わかります。
作りかたは似てますもんね。 - ツレハナ
- そうそう。そのときは、
「たしかに、卵だし、焼いてるし、
『オムレツ』っていうものは、これなのかな」
て思ったんだけど。
でも「なんかやっぱり、納得がいかないな」と思って。 - ——
- どうやら、違うんじゃないか、と。
- ツレハナ
-
そうそう。
それでますます、この本の中のオムレツに憧れたの。
あとね、この本に載ってた、
「ベルベールの卵」にもすごく憧れた!
グラタン皿に、半熟の卵を並べていって、
ベシャメルソースにトマトピューレを入れた
色がついたソースをのせて、それをオーブンで焼くのね。
スプーンを入れると、中身が半熟の卵で、
その上にドロッとしたソースがかかっていて、
それをふうふう冷ましながら、
フランスパンと一緒に口に入れる……とか書いてあって!なんじゃそら! おいしそう! と思ったなあ。
それで、この本は暗記するくらいずっと読んでたんだよね…
それが小学校の高学年くらいかな。
べつに、卵のことばかり考えて
生きてきたわけではないんですけど(笑) - ——
-
いや、じゅうぶん、
卵のことばかり考えてきたのでは……!すごい。卵のこと、よくわかりました。
しかも、卵料理がうまくなった気分です……!
ありがとうございました! - ツレハナ
- よかった。
卵のことをこんなに話せて楽しかったなー。
(最終回は、ツレヅレハナコさんの目玉焼きレシピ!)