浅生鴨×糸井重里
「隠れること」と「表すこと」

第3回 “目立つ”を選んだ「中の人」時代
- 糸井
- 浅生さん、子どもの頃から自然に目立っちゃうことが多かったと思うんですけど。
- 浅生
- そうですね。ぼくはどうしても外見で目立ちがちなので、あんまり目立たないようにするにはどうしようかなって、いろいろ考えました。
- 糸井
- はい。
- 浅生
- 「気配を消してうまく溶け込む」はもちろんそうなんですけど、逆に「突き抜けるぐらい目立つ」と、また違う立ち位置に行けるんですよね。
- 糸井
- 「突き抜けるぐらい目立つ」っていうの、どういうこと?
- 浅生
- 例えば、みんながやらないようなことにあえて「はい」って手をあげる。いずれ押し付けられる可能性があるものに関しては、自分から先にいっちゃう。

- 糸井
- うん。
- 浅生
- そうすることで、「自分から目立つことを選んだんだから、目立つのはしょうがないよね」って自分自身を納得させるというか。
- 糸井
- 「NHK_PR」時代なんて、結構そういう開き直りを感じましたね。
- 浅生
- ああ、そうですね。
- 糸井
- 企業のアカウントがユルさを出すなんて、当時ノウハウがないじゃないですか。あれはおもしろかったね。
- 浅生
- あれも結局、突き抜けましたね。やっぱり、自分も楽になったような。
- 糸井
- 楽になる?
- 浅生
- ええ。「あいつはしょうがない」って思われるのが一番楽なんです。
- 糸井
- 「あいつはしょうがない」けども、人に迷惑はかけないっていうの、すごいバランスですよね。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- 最終的には「おもしろい」になってたよね。「NHK_PR」は、おもしろいが武器になっていたケース。
- 浅生
- でも、冷静によくよく見ると、そんなにおもしろくないんですよ。1つ1つは。
- 糸井
- 1つ1つじゃないもの。

- 浅生
- 相対として「なんかおもしろいかも」っていう雰囲気だけはあるんですけど、よく見ると、そんなにおもしろくなかったりするんですよね。
- 糸井
- 「それ、他の人がまだ言ったことないな」みたいな新しいツイートがいっぱいあって、おもしろかったですよ。あれ、ほぼ24時間活動してたんですよね。
- 浅生
- いや、あれはほぼやってないんですよ。
- 糸井
- どういうことですか?
- 浅生
- 返信とかリツイートも含めて、全部タイマーで、前日に設定しておくんです。
- 糸井
- でも俺、NHK_PRさんと何回かリアルタイムでやりとりしたことがあるよ。
- 浅生
- リアルタイムをたまに混ぜるんです。

- 糸井
- 混ぜてるんだ。
- 浅生
- はい。だから、嘘にほんとを少し混ぜると、全部がほんとに見えるっていう。映像もそうですよね。全部がCGじゃなくて、そこに実写の人を何人か混ぜるだけで、もう全部が本物に見えてくるというか。
- 糸井
- なるほど。テクニカル。
- 浅生
- これもきっと、幼い頃に経験したような、「強いワルとどう向き合うか」に近いんだと思います。分析して構造を考えて、どこに何を置けばいいか、何を言えばいいかを戦略立てる。
- 糸井
- そういう作戦を考えるのが昔からお好きなんですね。