番組のすきなところを書くだけでも、
コンテンツとしては成り立つのかもしれないけれど、
あと少しだけ、書きたいことがある。
すきを語るにあたって、私が気付いたもの。
わたしのすきは、コンプレックスと
隣り合わせのところにあったということだ。
この回で、書かせてほしい。
「誰かの好きを見るのが、わたしはすきだな」
課題への取り組みを通して、自分自身の思いに気が付いた。
でも、もう一つ気が付いてしまったことがある。
マツコの知らない世界に出られるような、
何かひとつのことをまっすぐすきでいられるその人が、
私はずっと、うらやましかったということだ。
小さいころから飽きっぽくて、
ひとつのことをずっとすきでいられる子どもではなかった。
すきなもの、とくいなことは何ですかという質問には、
答えを言えるまでの時間が未だに必要だ。
そんな自分だから、一つのことに熱中できる生き方の人に対して
尊敬も嫉妬も羨望も、恋い焦がれるようにしていた。
きっと自分にないからこそ、強く惹かれてやまないのだ。
多分わたしは、そういう好きへのまっすぐさを通して、
トクベツになりたかったんだと思う。
突き詰めた先でおおきなことを成し遂げて、誰かに認められる。
そんな風にずば抜けた、ヒーローみたいなトクベツさに私はずっと
あこがれていた。
だから、ゲストの皆さんにだって完全にお門違いも甚だしいが
わたしは少しだけ、嫉妬している。
あれだけ好きになれる一つを見つけられて、
好きのバロメーターをぶっちぎるトクベツさは、正直うらやましい。
今書いていることは人に言ったことがなくて、
本当ならば、だれにも見られたくない部分だ。
うらやましさや、劣等感に悩む自分なんて
なかったようににこにこしているのがいいのかもしれない。
でも、こうして書いているのは、書いて伝えることを通して
今まで見ないふりをしてきた、
うらやましさも劣等感もある自分のことを認めたうえで
私はこれからの私を、ちゃんと生きていきたいと思いはじめたからだ。
そう思ったのは就職活動を始めて、
自分のことについて考える機会が増えたことがきっかけだった。
考えれば考えるほど、私はヒーローよりも
それを支える立場の方が向いているような気がして、
ひとつのことを追求するよりも、
いろんなことに挑戦することの方をすきといいたくて。
なりたかった自分のまま書こうとした
インターンシップのエントリーシートだって
結局はうまく書けなかったし、
書けたとしても、きちんと落とされた。
昔なりたかったヒーロー像みたいな存在には、
自分はなれないことに気が付いた。
認めてしまおう。私はそういう人間じゃない。
でも今は、自分のことをわかった上で私はこの私で勝負がしたい。
マツコの知らない世界に出られなくたっていい。
出られない私でも胸を張ってこの番組が好きだといって、
やっぱり興味深く、ふむふむ、おー、すごい!と見ることに変わりはない。
そして、いろいろなことにあちこちと目を向けながら、
器用貧乏といわれても、ふてくされることなく
生きていこう。そう、決めた。
マツコの知らない世界を通じて
こんな風に自分について考えるとは思わなかったけれど、
書いたことで自分のことについて考えて、
私の中の見てこなかった部分を知った。
そして、これからの私の世界はまだ誰も知らない。
まえよりも、生きていくのがちょっと楽しみになった。
トクベツになれなくても何か、私にとっての特別なものを探して、
これからの自分を、生きていこう。