なにかを好きだと言うことは、とても勇気とエネルギーがいる。
趣味はなに?
好きなものは?何が好き?誰が好き?
初対面の人と話すと、
ほとんど必ずといっていいほど聞かれるけれど
わたしは毎回、返事に困って、あやふやな笑顔を返してしまう。
だって
誰かや何かを好きだといえるほど、
わたしはその対象のことを理解できていないんじゃないだろうかと不安になるから。
もし仮に「◯◯が好き」と答えたとして、相手がわたしよりも何倍も何十倍もその◯◯を知っていることがあるかもしれない。
そう思うと怖くて、好きだなんて口にできない。
だから少しドキドキしながら、
どうかほかの塾生の方と被りませんように、読者のなかに板前さんやさかなクンがいませんように!
と願いながら発表させてもらう。
わたしは、魚をさばくこと好きだ。
自分で調理して、食べることが好き。
できれば新鮮だとやっぱりうれしくて
エビの背ワタ取りなんかも、いい。
ぴん、と張った魚のお腹に
ぷっつりと差し込まれる包丁。
みるみる内蔵が出てきて、ああ生きていたんだな。
という単純な事実に気付かされる。
そしてもちろん
感謝の気持ちが、わいてくる。
本当かどうかはわからないけれど、
さばいていると
「お、この魚はキレイな内蔵だ」
「おや?こっちの魚の内蔵は汚い。不摂生か?」
なんて思うことがあって、
魚にとっての不摂生ってなんだろう。
実は魚界にも嗜好品があるんじゃなかろうか。
日ごろから、よく鍛えていた魚なんだろうな。
なんて、とにかく勝手な想像を繰り広げるのもたのしい。
エビの背ワタ取りも然り。
背ワタがたっぷり詰まったエビもいれば、すっかすかのエビもいる。
お腹いっぱいで動きが鈍って捕まえられたんだろうか。
やや、死ぬ間際までひもじい思いをしていたんだろうか。
なんて考えていると、やっぱり生き物の命をいただいているんだな、という気持ちになるのだ。
(つづく)