はじめてのホーム戦。
今年5月、試合スケジュールを見ていてふと思う。
大阪へ行くなら今じゃない?行けるんじゃない!?
1000円を投じた新しいスタジアムは
完成以来ずっと憧れの聖地だったし、
もうひとり旅もできる。
両親も「いいじゃん、いってらっしゃいな」と言う。
そうと決まればすぐホテルを予約し、
直近の試合のチケットをゲットした。
3日後の5月13日。ジュビロ磐田戦。
新幹線、地下鉄、モノレールと乗り継いで
スタジアムに向かうと、
柱や階段や柵まで駅がすでにガンバ大阪一色だった。
階段をのぼれば、選手の旗がずらっと並んで迎えてくれる。
ここは大奥か!殿になった気分で歩く。
さすが「ホーム」だ…!
アウェイ慣れした私はそれだけで感激だった。
いざ、吹田スタジアムへ。
気分は殿から一戦士に。われも戦いに行くのだー。
出陣じゃ!ぷわぉ〜〜(法螺貝)
入場から私のテンションは最高潮だった。
その日ガンバ大阪は勝った。それだけではない。
「遠藤選手のゴールで」、ガンバ大阪は勝った。
嬉しい、なんてもんじゃない。
J1通算99ゴール。この目で見てしまった!!
えらいぞ3日前の私!よくぞ思いついた!
遠藤選手が好きなことを話していた
隣の席の地元のおじさんは
ひとりの私と一緒にはしゃいでくれた。
同じホテルで帰りに会った
ジュビロ磐田サポーターのご家族は
私の背番号を見て「うわー遠藤じゃん…」と
ふざけながら声をかけてきたものの、
東京から来たと話すと
「そうかー!悔しいけどそりゃおめでとうだな!」
と嬉しいことを言ってくれた。
Jリーグはいいなぁ、ガンバが好きだなぁと
興奮しながらもしみじみしてしまう。
その晩は初めてのひとり旅にもかかわらず
ネットニュースやゴールの動画を見ながら
まっっったく緊張せずにやにやしているうちに寝ていた。
試合はないけれど、ふたたび大阪へ。
ガンバを好きになってから
公開練習の見学とそのあとのファンサービスが
ずっと憧れだった。
ただ、試合の前後数日は練習が公開されないので、
試合もない平日に行くのは…と
いくら好きでもさすがに迷う。お財布も気になるし。
地元のサポーターの特権かな、と半ば諦めていた。
しかし、初ホーム戦のわずか3ヶ月後、
その機会はやってきた。
母が京都に出張だという。
それに合わせて私は大阪に行ってしまえ!と
ふたたび衝動のまま新幹線に乗った。
8月のある日、練習は9時からだった。
朝なのに太陽はじりじりと焼けるように暑い。
フェンスの向こうのフィールドで練習がはじまった。
女子校だったから妄想だけど、
憧れのサッカー部の先輩を覗いている感じ。
これめちゃくちゃ的確。妄想だけど。
試合との一番の違いは、音がよく聞こえること。
ボールを蹴る音、選手同士のコミュニケーション、
そしてしきりに笑い声が聞こえる。
ああ、ここが楽園か。
そのあとはお待ちかねのファンサービス。
周りのみなさんは慣れたようにその場所に向かう。
私もいそいそとついていく。
初心者の私は隣に立っていたお姉さんに
「ここで待っていれば大丈夫ですか?」と尋ねた。
「大丈夫ですよ。はじめてですか?」
「はい。」
「お住まいは大阪ですか?」
「いや、東京で…」
と言うやいなや、
「このこ、東京から来たんやて!」
とお友達に伝わり、そうしたら周りの方々まで
「それならここに入りな!ここ!」
「ヤットが好きなん?」
といきなり歓迎ムード。
驚いたけれど嬉しかった。なんて優しいんだろう。
同じものが好きというだけで
はじめましてだったとしても
そこにはこんな「仲間意識」がうまれるのだ。
ガンバが好きな人たちは、(大阪の人は?)
その「仲間」の表し方がすごーくうまい、と思う。
ひいき目かもしれないけど。
さあ、選手がひとりひとり順にまわってくる。
緊張しながらも声をかけると
あの選手、この選手が、立ち止まって
私のバッグにサインを入れてくれている…。
どっひゃー!じんわり嚙みしめる間もなく
また次の選手が来る。
幸せの乱れ打ちである。バンバンバン。
目の前にいる選手にもこれほど高揚してるのに、
どうしても目の横で遠藤選手をちらりと確認。
あ、あと3人、2人、あ、次だ来る来る来る!!
私は太陽の塔のほぼ日手帳を持ってきていた。
太陽の塔のある万博記念公園は
まさにガンバ大阪の地。
この「黒い太陽」はサポーターがつくる
応援フラッグのモチーフにもなっている。
どんぴしゃだと思った。
私はひとこと「応援してます」と
この手帳カバーを手渡した。
伝えたいことはもう何万字とあるのに
こういうときって言葉にはならないもので!
ぐるぐるしながら精一杯「応援してます」と言った。
もどかしいけど好きってそういうものよね…。
するとファンとの交流も淡々としている遠藤選手から
「ぁぃ」の声が!くぅ、震えた。
銀色の手帳はまさに画竜点睛。
このサインが入って完成したなと思った。
世界に唯一、岡本太郎と遠藤保仁の共作!
すぐにも同じ遠藤選手好きの父に
画像を送って自慢した。
いいなぁあああ!とうらやましがっていた。
うふふ。家宝である。