ぼくが新幹線通勤を始めた理由
インタビューの前に、ぼくが
新幹線で通っている理由を少しだけ話させてください。
ぼくはずっと東京で働き、妻は群馬で働き、
住んでいる場所は埼玉でした。そんなぼくらに昨年
子どもが生まれました。
それを機に、ぼくたちはどこに住むかを話し合い、
妻が仕事に復帰することや子育てのことを考えて、
群馬県の高崎市に引っ越すことにしました。
ぼくが群馬から東京まで新幹線で通うことに決めたのです。
それでは、さっそくほかの方に話を聞いてみましょう。
1日目 21:12東京発
いろいろ考えて、隣の席に座った人に世間話のように話しかけるのが
一番自然に取材出来ると思いつきました。
大宮から30代のスーツ姿の男性がぼくの隣に座ったので、
声をかけてみました。
- ーー
- こんばんは、ひょっとして新幹線通勤をしている方ですか?
- Aさん
- はい。高崎から大宮までです。
- ーー
- そうなんですね、ぼくは高崎から東京までです。
昨年の12月くらいから新幹線通勤を始めたんですけど、
ほかの方がどういう理由で通勤しているのか
気になってるんです。少しお話してもよろしいですか。
- Aさん
- はい、大丈夫ですよ。
- ーー
- いつ頃から、新幹線通勤を始めたんですか?
- Aさん
- 始めたばかりで、やっと半年過ぎたところなんです。
- ーー
- なるほど、何をきっかけがあったと思うんですが。
どういう理由で?
- Aさん
- 群馬県内の事務所から埼玉の事務所に転勤になりまして。
それまではずっと群馬でした。
- ーー
- そうなんですね。ちなみにご家族は。
- Aさん
- 妻と、子どもは小さい子が2人いますよ。
私も妻も群馬の出身です。
- ーー
- うちも子どもが1人います。
新幹線通勤のよいところってなんですかね?
- Aさん
- 車内でゆったり出来るところですね。
帰りが遅くなったときはお酒を少し飲んだりします。
家では子育てや家事があって、
なかなかゆっくり出来ないですし(笑)。
- ーー
- そうですよね。ぼくは仕事の忙しさより、
土日の子育ての忙しさの方が、くたびれちゃいますね。
妻はそれを毎日やってることを考えると、
何にも言えないんですけど(笑)。
逆に、ここはイヤだなっていうところはありますか?
- Aさん
- やっぱり費用がかかるところですね。
会社が全額までは負担してくれないので。
通勤時間に関しては負担感はないです。
群馬県内で公共交通機関を使って
通っていたときの方が、時間はかかってました。
車社会なので電車とかバスで移動すると
距離は近くても、時間はかかるんです。
- ーー
- わかります。ぼくは群馬の大学に通っていたんですけど、
当時は自転車しか持ってなかったんです。
車がないと行きたい場所にぜんぜん行けないんですよね。
- Aさん
- あと転勤する前は、平日に子どもをお風呂に入れる時間
までには帰宅していたんです。
それが出来なくなりましたね。転勤先は忙しくて、
家に帰っても子どもたちは寝てるので、
休日しかちゃんと会えなくなりました。
- ーー
- ぼくもそうですね、帰りは早くても21時とかですね。
- Aさん
- ええ、子どもが新しいことを出来た瞬間に
立ち会う機会が減ってしまって。それが一番残念です。
- ーー
- ああ、ぼくも子どもとちゃんと接するのは土日だけです。
だから、ふと気づくと息子が
新しいことを急に出来るようになってますね。
出来ないままだと思って接していると、
『それもうとっくに出来るよ』って妻に言われちゃったり。
- Aさん
- 子どもは2歳をすぎると、もっと出来ることが増えてきますよ。
毎日成長していく姿を見れなくて寂しいんですよ。
- ーー
- そうなんですか、うちはまだ1歳だけど、
もっともっと色々なことが出来るようになるんですね。
見えないところで(笑)。それは寂しいです。
- Aさん
- でも単身赴任になっちゃう可能性もあったから、
自宅から通える場所でよかったです。
寝顔だけでも毎日見たいから。
- 中根
- なるほど。いろいろ参考になりました。
ありがとうございます。
2日目 9:12高崎発
2人がけのシートにスーツ姿の男性が座っていました。
隣の席に座り、声をかけます。
- ーー
- こんにちは、新幹線で東京まで通勤なさってる方ですか?
- Bさん
- いえ、違います。今日は東京へ出張なんです。
- ーー
- そうなんですね、荷物も少なくて
新幹線に慣れてる感じだったので通勤の方かと…
今日はどちらから?
- Bさん
- 新潟からです。月に2、3回は東京に出張してますね。
- ーー
- そうなんですね。お休みのところ失礼しました。
ありがとうございました。
荷物が少ない日帰り出張の方と、
新幹線通勤の方と見分けがつきにくいです。
お土産を持っていれば確実に出張なんですけどね。
気を取り直して再チャレンジです。
3日目 21:28東京発
50代くらいのスーツを着た男性の隣に座ります。
インタビューを始めます。
- ーー
- こんばんは、突然なんですけど
新幹線通勤をしている方ですか?
- Cさん
- ええ、そうです。東京から高崎までです。
- ーー
- そうなんですね。
どういった理由で始められたのですか?
- Cさん
- 東京への転勤がきっかけですね。
わたしの家は群馬にあるんですが、全国転勤がある職場で
10年近く単身赴任をしてきたんです。
- ーー
- 住む場所が数年単位で変わっていくのは大変ですね…
今のお仕事に就かれてから、
ずっと単身赴任してらっしゃるんですか?
- Cさん
- 長女が中学校に上がるまでは、
家族全員で引っ越していました。
娘が中学生になってからは進路のことや部活もあったので、
子どもの生活を考えて、わたしが単身赴任を始めたんです。
それが10年くらい続いて、去年やっと群馬に戻ってきました。
- ーー
- そうなんですね。やっぱり家族で暮らすっていいものですか。
- Cさん
- いいですね、わたしも妻も群馬の出身ですから。
子どもはもう独立してますけど。
単身赴任を長く続けてきたけど、通える距離ならなるべく
一緒に住んだ方がいいと思いますよ。
子どもが小さいうちは特に。
子どもと親が一緒に過ごすことができるのって、
小学校の高学年くらいまでだから。
- ーー
- ぼく群馬から通うことを決める前に、
少し単身赴任を考えていたんですよ。
でも子どもが親と遊んでくれるのって、
確かにそう何年もないですね。
- Cさん
- まあ、単身赴任って気楽ですけどね。
普段は自分のこと、仕事のことだけ考えていればいいんだから。
- ーー
- そうですよね、家族と一緒にいると
色々やらなきゃいけないことも多いでしょうからね。
- Cさん
- それと単身赴任を長く続けると、
家族と違う生活リズムが身についてしまうんですよ。
だから、今もう一度、
妻と生活のリズムを合わせている途中なんです。
- ーー
- そうなんですか。単身赴任って確かに気楽そうだけど、
もう一度家族と暮らすときに、準備が必要なんですね。
- Cさん
- そうですね。まあでも家族ですからすぐ慣れると思います。
- ーー
- ありがとうございました。
※プライバシー保護のため、主旨を変えない範囲で
一部表現方法を変更している箇所があります。
つづきます。