もくじ
第1回子どもと単身赴任。 2016-12-06-Tue
第2回家族一緒に住むこと。 2016-12-06-Tue

1984年、札幌生まれ。情報機器の営業、企業の広報誌の編集を経てコピーライターに。最近の仕事はクルマのカタログ制作が中心です。2015年、埼玉県から群馬県に引っ越して、東京まで新幹線通勤しています。Twitter :@hirakuu

あなたはなぜ、新幹線通勤を?

あなたはなぜ、新幹線通勤を?

担当・中根 拓

第2回 家族一緒に住むこと。

4日目 6:37高崎発

有給をとって遊びに行くので、
いつもより早い便に乗ることが出来ました。
早い割に席は埋まっています。
埼玉の熊谷駅で隣の席に40代くらいの
スーツ姿の男性が座ってくれたので
インタビュー開始です。

ーー
すみません、
もしかして新幹線で東京まで通勤なさってる方ですか?
Dさん
ええ、そうです。
ーー
ぼくは高崎からです。
実は、ほかの方がどんな事情で新幹線通勤しているのか
調べているんです。少しお時間頂いてもよろしいですか。
Dさん
いいですよ。
ーー
どちらからどこまで通ってらっしゃるのですか?
Dさん
熊谷から東京の港区までです。
ーー
駅から駅までの時間だけで考えると新幹線だと50分弱、
在来線(新幹線以外の路線のこと)だと
80分くらいですね。
プラス自宅から駅、駅からオフィスへの移動時間もあって。
Dさん
そうですね、通勤時間を考えて新幹線を選んだんです。
ーー
いつ頃から通っているんですか?
Dさん
だいたい3年前くらいからですね。
きっかけは、東京本社への転勤です。
それまでは埼玉県内で働いていました。
ーー
単身赴任は考えなかったんですか?
Dさん
通えるなら家から通って、家族と過ごしたいですから。
ーー
ああ、そうですよね。
新幹線通勤のいいところと、
あまり気に入らないところって
何だとお考えですか?
Dさん
いいのは、ゆったり座れるところですね。
気に入ってないところは、朝が早いところです。
特に冬は日が出ていない時間に
起きなきゃいけないのが大変です。
ーー
日の出前だと起きるのもキツイですよね。
Dさん
ええ。
ーー
車内で普段何をしていますか?
Dさん
主に仕事ですね。あと家で時間がないときには朝ごはんを食べてます。
(この日も手作りのおむすびが2つテーブルにありました。)
ーー
なるほど。
お忙しいところ、ありがとうございました。

5日目 20:52東京発

東京駅から乗車。3人がけのシートの窓側に
30代くらいのジーンズを履いた男性が。
1つ開けて通路側に座ります。

ーー
こんばんは、
違っていたら申し訳ないんですけど、
新幹線で通勤なさってる方ですか?
Eさん
今日はそうですね。
毎日新幹線で通っているわけじゃないんですけど。
普段は在来線で通ってて、
遅くなった日や週の終わりは新幹線を利用しているんです。
ーー
そうなんですね、どこから通勤を?
Eさん
高崎から江東区までです。
ーー
そうなんですか、ぼくも高崎から江東区までなんです!
群馬から通ってどのくらい経つんですか?
Eさん
1年半くらいです。それまでは東京で暮らしていました。
ーー
なるほど。何かきっかけがあったかと思うんですが、
どんなきっかけで?
Eさん
妻の実家が群馬なんです。
義父母と暮らしていた義理の妹が家を出ることになって、
両親だけを実家に残したくないという妻の希望があって
引っ越しました。
ーー
新幹線を使わないと片道2時間以上かかりますよね、
大変じゃないですか。
Eさん
慣れればなんとかなりますよ。
朝は始発で出勤しますけど座ることは出来るし。
でも家族はみんな寝てますね。
夜も遅いときがあるとみんな寝ちゃってて。
それがちょっと寂しいかな。
ーー
家族一緒に住むってことが大事なんですね。
Eさん
そうですね。単身赴任は考えなかった。
子どもが小さいから、家族と一緒がいいです。
ーー
うちも子どもが小さいくて、最近はますます
一緒にいたいっていう気持ちが強くなってきました。
生まれた直後はそんなんでもなかったんですけど。
ちなみにご出身は群馬なんですか?
Eさん
いえ、私は東京の生まれです。
ーー
ぼくも実家は群馬じゃないんです。妻の実家が群馬で。
だから友達も少なくて寂しくて。
Eさん
私もいないですね。友達もだいたい東京にいますね。
あまり地方に行ったって話は聞かないですね。
ーー
実はぼく新幹線通勤を始める前、不安だったんですよ。
ずっと、新幹線で通い続けることが出来るのかなって。
Eさん
私はこのままずっと出来ると思いますね。
でも中根さんの不安って、
新幹線で通うことだけじゃなくて、
将来への漠然とした不安が混ざっている気がしますね。
ーー
あー、確かにそうかもしれないです。
ぼく子どもが生まれてから、10年単位の先のことまで
考えるようになったんです。
それまでは、未来といってもせいぜい次の年ぐらい
までしか、ちゃんと想像したことがなかったんです。
Eさん
ええ。
ーー
この子が成人するまで、どうやって稼いで、
どうやって暮らしていけばいいのかなって。
その不安と、通勤への悩みが
ごちゃごちゃになっているのかもしれません。
Eさん
通勤に関してだけ言えば、
だめになったらそのとき考えればいいと思いますよ。
群馬で仕事を探してもいいんだし。
ーー
そうですよね。
ぼくはぜんぶを一度に解決しようとして、
不安になっていたみたいです。
Eさん
わたしが楽天的なのかもしれませんが、
一生懸命やっていれば大丈夫ですよ。
ーー
そうかもしれませんね。
話している内に色々気づかされて元気がでてきました。
今度は電車の外で話しましょう!
(Eさんとは連絡先を交換して、飲みにいく約束をしました。)
本当にありがとうございます。

※プライバシー保護のため、主旨を変えない範囲で
一部表現方法を変更している箇所があります。

取材を終えて考えたこと

なぜ、新幹線通勤を選んだのか。
それは“あなたはいま、何を大事にしたいのですか”
という質問と同じことだったと、
インタビューを通じて感じました。
親や配偶者や子どもと、どんな関係でいたいのか。
何をして、誰とどこで働きたいのか。
そのときそのときで、
わたしたちの価値観は変わっていきます。

常に優先順位は変わっていくものだから、
何かを決めるのはほんとうに難しいことです。
その決断が正解だったのかも誰にもわかりません。

でも、いま何を大切にしたいか、じっくり考えて、
何十年も先の不安も、すぐそこにある不安にも
向き合い続けていけば、
ぼくは納得して気持ちよく生きていけると思います。
たとえ通勤時間が長くても、単身赴任で寂しくても。

最後にインタビューに答えて頂いたみなさま、
ほんとうにありがとうございました。たくさんの話を聞いて、
ぼくもしばらくは新幹線通勤を続けていけると
思えるようになりました。

(最後まで読んで頂きありがとうございます。おわります)