4日目 6:37高崎発
有給をとって遊びに行くので、
いつもより早い便に乗ることが出来ました。
早い割に席は埋まっています。
埼玉の熊谷駅で隣の席に40代くらいの
スーツ姿の男性が座ってくれたので
インタビュー開始です。
- ーー
- すみません、
もしかして新幹線で東京まで通勤なさってる方ですか?
- Dさん
- ええ、そうです。
- ーー
- ぼくは高崎からです。
実は、ほかの方がどんな事情で新幹線通勤しているのか
調べているんです。少しお時間頂いてもよろしいですか。
- Dさん
- いいですよ。
- ーー
- どちらからどこまで通ってらっしゃるのですか?
- Dさん
- 熊谷から東京の港区までです。
- ーー
- 駅から駅までの時間だけで考えると新幹線だと50分弱、
在来線(新幹線以外の路線のこと)だと
80分くらいですね。
プラス自宅から駅、駅からオフィスへの移動時間もあって。
- Dさん
- そうですね、通勤時間を考えて新幹線を選んだんです。
- ーー
- いつ頃から通っているんですか?
- Dさん
- だいたい3年前くらいからですね。
きっかけは、東京本社への転勤です。
それまでは埼玉県内で働いていました。
- ーー
- 単身赴任は考えなかったんですか?
- Dさん
- 通えるなら家から通って、家族と過ごしたいですから。
- ーー
- ああ、そうですよね。
新幹線通勤のいいところと、
あまり気に入らないところって
何だとお考えですか?
- Dさん
- いいのは、ゆったり座れるところですね。
気に入ってないところは、朝が早いところです。
特に冬は日が出ていない時間に
起きなきゃいけないのが大変です。
- ーー
- 日の出前だと起きるのもキツイですよね。
- Dさん
- ええ。
- ーー
- 車内で普段何をしていますか?
- Dさん
- 主に仕事ですね。あと家で時間がないときには朝ごはんを食べてます。
(この日も手作りのおむすびが2つテーブルにありました。)
- ーー
- なるほど。
お忙しいところ、ありがとうございました。
5日目 20:52東京発
東京駅から乗車。3人がけのシートの窓側に
30代くらいのジーンズを履いた男性が。
1つ開けて通路側に座ります。
- ーー
- こんばんは、
違っていたら申し訳ないんですけど、
新幹線で通勤なさってる方ですか?
- Eさん
- 今日はそうですね。
毎日新幹線で通っているわけじゃないんですけど。
普段は在来線で通ってて、
遅くなった日や週の終わりは新幹線を利用しているんです。
- ーー
- そうなんですね、どこから通勤を?
- Eさん
- 高崎から江東区までです。
- ーー
- そうなんですか、ぼくも高崎から江東区までなんです!
群馬から通ってどのくらい経つんですか?
- Eさん
- 1年半くらいです。それまでは東京で暮らしていました。
- ーー
- なるほど。何かきっかけがあったかと思うんですが、
どんなきっかけで?
- Eさん
- 妻の実家が群馬なんです。
義父母と暮らしていた義理の妹が家を出ることになって、
両親だけを実家に残したくないという妻の希望があって
引っ越しました。
- ーー
- 新幹線を使わないと片道2時間以上かかりますよね、
大変じゃないですか。
- Eさん
- 慣れればなんとかなりますよ。
朝は始発で出勤しますけど座ることは出来るし。
でも家族はみんな寝てますね。
夜も遅いときがあるとみんな寝ちゃってて。
それがちょっと寂しいかな。
- ーー
- 家族一緒に住むってことが大事なんですね。
- Eさん
- そうですね。単身赴任は考えなかった。
子どもが小さいから、家族と一緒がいいです。
- ーー
- うちも子どもが小さいくて、最近はますます
一緒にいたいっていう気持ちが強くなってきました。
生まれた直後はそんなんでもなかったんですけど。
ちなみにご出身は群馬なんですか?
- Eさん
- いえ、私は東京の生まれです。
- ーー
- ぼくも実家は群馬じゃないんです。妻の実家が群馬で。
だから友達も少なくて寂しくて。
- Eさん
- 私もいないですね。友達もだいたい東京にいますね。
あまり地方に行ったって話は聞かないですね。
- ーー
- 実はぼく新幹線通勤を始める前、不安だったんですよ。
ずっと、新幹線で通い続けることが出来るのかなって。
- Eさん
- 私はこのままずっと出来ると思いますね。
でも中根さんの不安って、
新幹線で通うことだけじゃなくて、
将来への漠然とした不安が混ざっている気がしますね。
- ーー
- あー、確かにそうかもしれないです。
ぼく子どもが生まれてから、10年単位の先のことまで
考えるようになったんです。
それまでは、未来といってもせいぜい次の年ぐらい
までしか、ちゃんと想像したことがなかったんです。
- Eさん
- ええ。
- ーー
- この子が成人するまで、どうやって稼いで、
どうやって暮らしていけばいいのかなって。
その不安と、通勤への悩みが
ごちゃごちゃになっているのかもしれません。
- Eさん
- 通勤に関してだけ言えば、
だめになったらそのとき考えればいいと思いますよ。
群馬で仕事を探してもいいんだし。
- ーー
- そうですよね。
ぼくはぜんぶを一度に解決しようとして、
不安になっていたみたいです。
- Eさん
- わたしが楽天的なのかもしれませんが、
一生懸命やっていれば大丈夫ですよ。
- ーー
- そうかもしれませんね。
話している内に色々気づかされて元気がでてきました。
今度は電車の外で話しましょう!
(Eさんとは連絡先を交換して、飲みにいく約束をしました。)
本当にありがとうございます。
※プライバシー保護のため、主旨を変えない範囲で
一部表現方法を変更している箇所があります。
取材を終えて考えたこと
なぜ、新幹線通勤を選んだのか。
それは“あなたはいま、何を大事にしたいのですか”
という質問と同じことだったと、
インタビューを通じて感じました。
親や配偶者や子どもと、どんな関係でいたいのか。
何をして、誰とどこで働きたいのか。
そのときそのときで、
わたしたちの価値観は変わっていきます。
常に優先順位は変わっていくものだから、
何かを決めるのはほんとうに難しいことです。
その決断が正解だったのかも誰にもわかりません。
でも、いま何を大切にしたいか、じっくり考えて、
何十年も先の不安も、すぐそこにある不安にも
向き合い続けていけば、
ぼくは納得して気持ちよく生きていけると思います。
たとえ通勤時間が長くても、単身赴任で寂しくても。
最後にインタビューに答えて頂いたみなさま、
ほんとうにありがとうございました。たくさんの話を聞いて、
ぼくもしばらくは新幹線通勤を続けていけると
思えるようになりました。
(最後まで読んで頂きありがとうございます。おわります)