もくじ
第1回ペンギン会議ってナンだ? 2017-05-16-Tue
第2回中々ペンギンが出てこない、上田さんのお話  2017-05-16-Tue
第3回全部がペンギンにつながった 2017-05-16-Tue

場所を介して、何かを伝えることを、
生業にしたいと思っています。
30歳になる今年、仕事と暮す街を変えました。
ホットドックが大好きな社会人5年目です。
よろしくお願いします。

「ペンギン会議」</br>ができるまで。

「ペンギン会議」
ができるまで。

担当・かとう

第2回 中々ペンギンが出てこない、上田さんのお話 

何よりも気になっていたことなのですが・・。
先生はいったい何者なのでしょうか(笑)?
ペンギンの専門家として、一緒にお仕事をさせて頂きましたが、
一方で常勤で高校の先生もされていますよね。
上田
はい、かれこれ40年以上、勤めあげています。今日も5時間授業をして、三者面談を終えてからここに来ました(笑)。
まあ、もとを辿ると、1988年にニュージーランドで「第1回国際ペンギン会議」なるものが開催されて、そこに私がアジア人で唯一呼ばれたところから日本の「ペンギン会議」は始まっているのですが・・。
ちょっと待って下さい!
1988年というと・・先生は34歳ですよね。
高校の先生を勤めながら、どうしてそんなことになったんですか?そこにたどり着くまでが、とっても気になります。
上田
・・あまり、その前のことをきちんとした時系列で話したことはないなぁ(笑)。
わかりました。順番に話しましょう。
まず、私は「虫屋さん」から始まったんです。子どもの頃はとにかく蛾(ガ)を追いかけていて。最終的には800種類の標本を集めて小学校の自由研究として提出しました。
小学生で800種類!?
1日1種類集めたとしても2年以上かかりますね・・。
上田
当時の学校の先生が面白い人で。何のルートかはわからないのですが、標本をロンドンの動物学協会に送ってくれたんです。すると、6ヶ月後に連絡が来て「標本の中に新種が混ざっていた」と。
すごい発見!それはテンションがあがりますよね。
このまま行くと、先生は昆虫の大研究家になってしまいそうです(笑)。
上田
ところが、中学生になると『鳥』に興味が移っていくんです。
何故かというとですね。鳥は・・蛾を食べるんです!!
最初は大好きな蛾がやられるので、頭にきていたのですが・・。
段々見ているうちに「生態系において、蛾よりも強者である鳥」に興味が出てきて(笑)。
気がつくと、日本の野鳥にどっぷりとはまってしまいました。
あまりに強い悪役はかっこいい、みたいな感覚ですよね(笑)。
上田
確かに(笑)。その中でも興味があったのが「コサギ」という白くて美しい鳥で。当時、この鳥が日本で繁殖出来ている北限の場所が、わかっていなかったんです。
なんなら俺が調べてやろうと。中学2年生の時に、東北自転車一周の旅を敢行しました。
壮大すぎてイメージが追いつかなくなってきました。
上田
結局、その旅では答えを得ることが出来ず、高校2年生の時に、今度は自転車北海道一周の旅を行いました。そして、とうとう繁殖地の北限を突き止めて日本鳥学会で発表しようとしたら・・同じ内容の発表を先にされてしまったんです。
自分の発見したものと同じ場所だっただけに悔しかったですね。
はい。
上田
ペンギンに出合ったのはそんな頃だったんです。当時、僕は日本鳥学会や日本野鳥の会にも所属していて、「鳥のことなら何でもこい!」という自負があったんですね。
でも、今の妻と、高校時代に出会ったのですが、デートで上野動物園に行った時に、彼女がふとペンギンについて聞いてきて・・その質問に答えられなかったんです。
もう、海外から文献を取り寄せて、当時ペンギン研究の第一人者とされていた青柳先生という方に連絡をとったりして、ペンギンの猛勉強を始めました。悔しかったんですよ(笑)。
ペンギンとのキューピットは今の奥さまだった!
ようやくペンギンが出て来てほっとしました(笑)。
そして大学でペンギン研究を始められた・・。
上田
それが・・大学では歴史学、主に「軍事史」を専攻することになるんです(笑)。
大学3年まで日本の大学で学んだ後、ドイツの大学院に編入学して、傭兵制度の研究に本格的に取り組みました。
えぇ?いったい何があったんでしょうか?
上田
元々、大学は、京都大学で今西錦司先生が立ち上げた霊長類学を学びたかったんです。
ところが、高校の歴史の先生に「上田は、生き物ばっかり追いかけて、人間のことは何もわかってないな」と挑発されて(笑)。
もう単純なので、悔しくて。3年の2学期の途中に無理矢理文系に転向して、周りに散々アホだといわれながら、歴史学の世界に入っていきました。
その勢いのまま、ドイツにも留学される。
上田
はい。21歳から26歳までドイツのボン大学で軍事史の研究を行いました。元々は17世紀にヨーロッパで起きた30年戦争の際の傭兵制度について調べていたのですが、最終的には戦略シミュレーションの技法のようなことに、研究対象が移っていきました。
ペンギンどころか、生き物の要素も、ほとんどなくなってしまいましたね(笑)。
歴史の研究をされている時も、ペンギンへの想いは平行して走っていたのですか?
上田
好きではあったので、休みの日に動物園を見て回ったり、グッズを集めたりはしていましたが・・。
正直に言うと、歴史が好きになって、ある意味「忘れていた」んです(笑)。

ーーー
つづきます。
(最後は、上田さんが「ペンギンの不思議な力」について語ります)

第3回 全部がペンギンにつながった