もくじ
第1回誘われたときの選択肢。 2017-10-17-Tue
第2回人前で話すということ。 2017-10-17-Tue
第3回不確実なおもしろさ。 2017-10-17-Tue
第4回悩みを手元に置く。 2017-10-17-Tue
第5回誰かが喜ぶ顔を見たい。 2017-10-17-Tue

岐阜で生まれ育ち、現在は東京・武蔵野で家族三人、猫一匹と暮らしています。狂おしいほどナッツが好き。

燃え殻×糸井重里</br>ちょっと長めのアフタートーク

燃え殻×糸井重里
ちょっと長めのアフタートーク

担当・なちまさと

銀座ロフトでのトークイベントの3日後に
ほぼ日のオフィスで燃え殻さんと糸井重里が
ふたたび顔を合わせました。
お客さんの前ではしゃべらないテーマで話そうと始まった対談は、
永ちゃんから100円玉のやりとり、ふたりの肩書きまで、
思いもよらない方向に話は転がっていきますが、
最後はふたりの好きな芸術家の話題へつながります。

うんうん、と共感するところもあれば、
本当に? とつっこみたくなるところもあるはずです。
でも、ここにあるのはふたりがこれまでに
たくさん悩んできたことを本音で語り合ったもの。

120分を超える対談を全5回にまとめました。
ぜひご覧ください。

プロフィール
燃え殻(もえがら)さんのプロフィール

第1回 誘われたときの選択肢。

糸井
よくがんばってるよねえ。
ストレスを感じてませんか?
いいことも悪いことも、
変化することはストレスだから。
燃え殻
ここ2か月ぐらいは
今までの人生にない変化しかしてなくて、
それに少しだけ慣れました。
 
フェイスブックに1年前の今日を振り返る機能があって
糸井さんと写ってる写真が表示されたんです。
糸井
はい。
燃え殻
糸井さんから気軽にロフトでのトークライブに
誘っていただきましたけど、
人前で話すってことが人生初だったんです。
あれは緊張したなあ。その写真を見たときに、
この状況に少し慣れたかもしれないって思ったんですよ。
 
糸井
でも、誘ったときは断る権利を与えてたはずですよ。
「よかったら、こういうのに出ていただけませんか」って。
燃え殻
そうでした。
糸井
そこは僕のしぶといところで、
絶対に断られるんじゃないかって
いまでも本気で思ってるんです。
燃え殻
それは自分ががっかりしたくないからですか?
糸井
そうではなくて、
誰が何と言おうとそれは行きたくないとか、
ちょっと今は勘弁してほしいとか、
人にはいろんな理由があるから、
断れるように誘ってほしい。
だから、「すく来いよ」みたいなことを
言うまでの関係はまだ作れないかなあ。
燃え殻
ちゃんと選択肢を与える。
糸井
うん。相手がノーと言える空き地を作っておく。
そのおかげで、自分はだいぶ長生きできると思うよ。
損得で考える必要はないけど、
たぶんものすごく健康でいられる気がする。
燃え殻
そうなんですね。
糸井
燃え殻さんは、自分が誘ったら
この人は絶対に来るだろうなと思って
声をかけたことはない?
燃え殻
それは本当にないですね。
僕自身、直前で嫌になってしまうときがあるんです。
 
初めて糸井さんにここでお会いしたとき、
僕は友達と一緒に来ましたよね。
彼は小学校からの友達なんですが、
彼から焼肉に誘われたことがあって。
何度も行った焼肉屋なんです。
味も知ってて、嫌なことが起きないこともわかってる。
糸井
うんうん。
燃え殻
なのに、行きたくないってことがあったんです。
そのとき、「ごめん、俺、今日行きたくない」って
言えたんですよね。
糸井
そう言えたんだ。
燃え殻
言えたんです。
そしたら、「まあ、そういうこともあるわな」って
そいつが言ったんですよ。
ああ、友達だなって思いました。
糸井
それは友達だね。
うん、でもあるよね。
いわゆる、ドタキャン。
 
燃え殻
でも、ほとんどの場合、我慢するじゃないですか。
たぶんそれが少なければ少ないほど
長生きできる可能性が高いのかもしれない。
糸井
そうですね。
燃え殻
ドタキャンは世間的にしちゃいけないって
言われるじゃないですか。
糸井
ぼくは、ドタキャンをしないために
最初から断ることがどんどんできるようになった。
燃え殻
どうやって断るんですか?
「今度ご飯食べましょう」っていう誘いを断ると、
そんなに一緒に食べたくないのかって思われるので
「あ、そうですね」って
まず言わなきゃいけないじゃないですか。
糸井
うん、それは言うかもね。
あ、言わないときもある。
「あー」って言って(笑)
燃え殻
「あー」って(笑)
糸井
「あー」。「んー」。
燃え殻
「んー」。吸い込んでる(笑)
 
糸井
そうやって、音だけ出してる。
仮に、20年前にテレビ番組で一緒に仕事した
プロデューサーみたいな人から
「久しぶりですね。ご飯食べに行きましょうよ」と言われたら、
もう完全に「あー」だよね。
だって、行く理由ないもん。
燃え殻
そうなんですね。
糸井
「飲みに行きましょう」と言われる場合は
「あ、俺飲まないんですよ」と言って断る。
燃え殻
それは切り札としてありますよね。
糸井
うん。それはやってましたね。
あと、友達からご飯を誘われたときに、
今は忙しくて行くのが難しいとしても
「あー」でも「んー」でもなくて、
「あ、いいね」って言います。
燃え殻
(笑)
糸井
断らないけど、そこに置きっぱなしにするのが
「あー」だとして、行く気があればだいたいオーケーです。
燃え殻
断ることもある?
糸井
うん。5、6年に一回はあるんじゃないかな。
はっきり「嫌だよ」って言ったりする。
誘う立場だったら、相手が断る可能性を考えて、
誘われた側のときは「嫌だよ」から「んー」、
「いいね! いつにする?」っていうのまで
バリエーション豊富に揃ってる(笑)
燃え殻
僕は答え方がひとつだから苦しいのかな。
糸井
そうかもしれないね。
燃え殻
「ああ、いいねえ」って絶対言っちゃうんです。
会社の若手の食事会があって、それに誘われるんですが、
おそらく若手も本当は来てほしくないと思ってるんですよ。
糸井
(笑)
燃え殻
ただ、誘ってなかったってこともまずいじゃないですか。
糸井
ああ。
燃え殻
だから、たぶんお知らせのつもりで言われるんですけど、
「いいね」しか選択肢がないので、
毎回、最初の段階で「ああ、いいね」って。
あとで陰で「あいつ、行くらしいぜ」って
若手に言われてると思うんです(笑)
糸井
おもしろいですね、そのさじ加減。
燃え殻
だから、結果的にドタキャンになるんですよ。毎回そう。
糸井
なるほど。
燃え殻さんの場合は、その場をなんとかキープしたいって
考えなんでしょうね。キープリズム(笑)
燃え殻
ええ、セッションしてます(笑)
そのクセがあるんです。それで自分を追い込んでしまいます。
 
糸井
仕事もそうやって引き受けちゃうんだ。
燃え殻
はい。
糸井
今日もそれで来たんだ。
燃え殻
違います(笑)
糸井
「違います」の早さ、すごく好感をもてた(笑)
そんな人がこの2か月を過ごしてきたなんて
ちょっと考えられないね。

(つづきます)

第2回 人前で話すということ。