高田純次さんと浦沢直樹さんが毎週日曜に放送している
文化放送のラジオ番組「純次と直樹」に
糸井重里がゲストで招かれ、
特別番組としてオンエアされました。
その番組の収録時間は余裕の2時間半超え!
3人の短い言葉のやりとりに潜む
絶妙な味わい深さをあらためて楽しんでいただけるように
「ほぼ日」のテキストにして、
みなさまにお届けいたします。
ラストの高田さんのノーパンの話は、
同席したスタッフは今も忘れることはできません。
- 高田
- お話を伺っていると、糸井さんは
ほかの人のことばかりを
ずいぶん考えていらっしゃいますね。
- 糸井
- 自我が薄くなっているのかもしれません。
なにかおいしいものを食べても、
一緒に食べに行った人が
おいしがっているのがうれしい。
- 浦沢
- ああ、わかります。
明らかにそのほうが楽しいですよね。
- 高田
- 俺は、自分がおいしくて
人がまずいと言ってるのが一番いいです。
- 浦沢・
糸井
- (笑)
- 高田
- この前ね、「寿司が大好きだ」って言う女の人と一緒に
お寿司屋さんに行ったんだけど、
彼女が「わさびを抜いてくれ」と
言ったときは驚いたよ。
- 糸井
- 寿司が好物で、わさびが嫌い、と(笑)。
- 高田
- でもその人、面白い人でねえ。
「高田さん、今日わたし、ノーパンなんですよ」
って、急に言い出すんだよ。
- 糸井
- ええ?!
- 高田
- もうそこから先、俺は何食ったか覚えてない。
- 浦沢
- すごいね!
- 糸井
- わはははは。
- 高田
- 彼女がトイレに行くときなんて、
チラチラ見ちゃってさ。
- 浦沢
- ははは。
- 糸井
- そりゃあそうでしょう。
- 高田
- で、最後に
「嘘です、穿いてますよ」
と言われたときにゃ、
俺、腰抜かしたよ。
- 浦沢
- うわあ、転がされちゃったんだ。
- 高田
- でもね、実際にそう言われると、
ほんっとに、何食ったかわかんなくなりますよ。
- 糸井
- そうだろうなあ(笑)。
- 浦沢
- それはすごい。面白い。
- 高田
- いいでしょ?
- 浦沢
- ノーパンが嘘だろうと本当だろうと、
そう言った時点で、
そこに何かが生まれますよね。
- 高田
- 生まれるよ。
- 糸井
- そのとき「嘘だろう」って、
一度も思わなかったでしょ?
- 高田
- 思わない。
- 糸井
- 俺も思わないと思うな。
- 浦沢
- 面白い実験だなあ。
そう言われた男性がどんな精神状態になるのか、
脳波計かなんかをつけてみたい。
- 高田
- 俺はそのときにさ、
「俺も穿いてないよ」
というような返しができなかったんだよ。
それくらい言えりゃ‥‥!
- 浦沢
- 「ノーパン」の一言で
頭の中がバーンと飛んじゃったんだね。
- 高田
- そうなのよ。
「ああ、実は俺もそうなんだ(クールに)」
ぐらいに言えりゃあね!
- 浦沢
- 何を食ったかもわからないなんて、
わははは(涙)。
- 高田
- 人間なんてそんなもんです。
ちょっとした言葉で転がされるよね。
- 糸井
- この話、全体的に素晴らしいなあ‥‥!
- 高田
- すごいですよね。
では時間になりましたので、
最後に「今の自分を作った曲」を
紹介してください。
- 糸井
- すごい切り替え(笑)。
ノーパンのせいで、
心が音楽から遠のいちゃってますよ。
- 高田
- 遠のいたけど、曲は流しましょう。
「今のスタイルでいこうと決めた頃の曲」で、
何を挙げたんだっけ?
- 浦沢
- 高田さんは「このスタイルでいこう」って
どこかで決めたんですか?
- 高田
- 決めたわけじゃないけども、
でもちょうどこの曲は、
役で初めてオールバックにしたときにかけてたな。
それ以降、俺はオールバックです。
よろしいでしょうか。
- 糸井
- よろしいです(笑)。
(ロイ・オービソン『イン・ドリームス』が流れる)
- 浦沢
- 高田さんの選曲は、すっごく甘い歌が多いんですよ。
- 糸井
- うん、いいねえ。この曲もそうだね。
- 浦沢
- さあ次ですよ、
糸井さんを作った曲は?
- 糸井
- はい、この曲です。
この歌詞を書いたときは、
仕事のひとつとして普通に関わった気持ちでいました。
この曲が発売されたのちのある日、
通りがかった街のキャバレーのスピーカーから
ジャーンと流れてきたことがあったんです。
ウワッと思って、思わず
そのキャバレーに入っちゃった。
「もしかしたら俺、何か違う運命になっちゃうぞ!」
と思った曲です。
(沢田研二『TOKIO』が流れる)
- 高田
- 浦沢さんの選曲はね、
「漫画家を続けることがキツいときに支えてくれた曲」
ですって。
- 浦沢
- この曲はアニメーションの『YAWARA!』の
エンディングテーマでした。
このアニメはとても視聴率がよかったんですね。
それで、最終回を迎えたときにお店を貸し切って、
打ち上げのようなことをしました。
アニメーターの人たち全員呼んだら
300名ぐらい、みんな来てくれて。
会の最後に、
LAZY LOU's BOOGIEのボーカルの方が
歌ってくれたんです。
- 高田
- カッコいいじゃない。
- 浦沢
- 漫画って、アシスタントさんはもちろんいますが、
いわば僕ひとりで原稿に
向かうような制作形態なんです。
でもアニメーションだと
300人ぐらいのスタッフが動いている。
そのみんなでお祝いしたとき、なんだかすごく
「ひとりで仕事してるんじゃないんだなあ」
と思いました。
その思い出の曲です。
(LAZY LOU's BOOGIE
『いつもそこに君がいた』が流れる)
- 高田
- ということで、
この顔合わせによる初めてのラジオ鼎談でした。
第2回はあるんでしょうか。
また次の機会があるかどうかわからないけど‥‥
高田純次と、
- 浦沢
- 浦沢直樹と、
- 糸井
- 重里!
- 高田・
浦沢
- でした!
(おわり)
2018-12-16-SUN
協力:文化放送 編集:中川實穗
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