高田純次さんと浦沢直樹さんが毎週日曜に放送している
文化放送のラジオ番組「純次と直樹」に
糸井重里がゲストで招かれ、
特別番組としてオンエアされました。
その番組の収録時間は余裕の2時間半超え!
3人の短い言葉のやりとりに潜む
絶妙な味わい深さをあらためて楽しんでいただけるように
「ほぼ日」のテキストにして、
みなさまにお届けいたします。
ラストの高田さんのノーパンの話は、
同席したスタッフは今も忘れることはできません。
- 高田
- オフの日は完全に休まれますか?
- 糸井
- 毎日更新しているほぼ日の原稿を書く仕事が
20年以上続いているので、
完全な休みというのはないんですよ。
- 高田
- 浦沢さんもでしょ?
毎日絵を描くから。
- 浦沢
- 完全な休みは、
ぼくはもう35年間、ないですね。
- 高田
- 俺なんかの仕事は、
休みがあるとちょっと怖いんですよ。
海外ロケに行ってるときも
「日本にいないと俺の席がなくなるんじゃないか」
って、ずーっと考えてきたから。
- 浦沢
- 高田さんの席はひとつです(笑)。
- 高田
- でもずっと不安ですよ。
- 糸井
- その心情はプレイヤー独特のものじゃないでしょうか。
プロデューサーだったら、
そういうことは思わないかも。
- 高田
- 今、糸井さんはリーダーでしょ?
- 糸井
- はい、リーダーというか、社長ですね。
- 高田
- こんなリーダーは御免蒙りたいという
最悪のリーダーってどんな人ですか?
- 糸井
- えーっと(笑)、
リーダーリーダーしたリーダーは、嫌ですね。
- 高田
- あ、かえってね。
- 糸井
- 自分はそうなりたくないってだけのことだけど。
- 高田
- じゃあ、社員にラーメンとか炒飯とか
おごってあげてるんでしょうか?
- 糸井
- (笑)
- 高田
- 糸井さんが69歳で、浦沢さんが58歳で、僕が71歳。
年齢を重ねたことで、
仕事に対する考え方に変化はありますか。
- 糸井
- 自分が選手であることにこだわらなくなりましたね。
選手であるよりも、
自分のチームの選手が活躍するほうがうれしいです。
- 高田
- 俯瞰から見るという感じ?
じゃあ、糸井さんが生きているうちに
成し遂げたいことは?
- 糸井
- 僕がいないほうが会社がうまく回る、
というふうにしたいです。
- 高田
- 糸井重里の銅像かなにかを置いておいて
悠々自適で宇宙旅行とか、そんな感じですか。
- 糸井
- (笑)悠々自適にしたいという気はあまりなくて、
会社に遊びに来させてほしいと思ってます。
ちょっと迷惑な老人という感じで
ほぼ日という場所にいたいから。
何年もずっと社長でいるつもりはありません。
- 浦沢
- じゃあ、最高顧問?
- 糸井
- 肩書はもっとノーネームなものがいいな。
例えば「老人」とかね。
社長でいるのがなんで嫌かというと、
「浦沢くんにこの仕事頼みたいな」って仮に思っても、
「あいつ連載いくつもやってて忙しいから
これを頼んだらかわいそうだな」
と考えてしまうから。
でも、それが社長じゃなくてただの老人だったら、
「浦沢くん、もう1本どうだ?」
「あとはどうにかしろ」って言えると思うんですよ。
- 高田
- 肩書がなくなっても、
糸井さんが会社に来ると空気がぐっと締まったり、
揺れ動いたりするんじゃないですか?
- 糸井
- 今でも揺れ動いてないです。
- 高田
- そうなんですか。
- 糸井
- でも、若い人が遊び相手になってくれるのは、
社長だからこそでしょうね。
これが肩書「老人」だったら
遊んでくれないかもしれない。
- 高田
- 付き合う女の人は自分より年上がいいですか、
年下がいいですか?
- 浦沢
- わはははは。
- 糸井
- (笑)展開がすごいな。
僕はどっちでもいいです。
- 高田
- 年上だと70過ぎますよ。
- 糸井
- ええ、大丈夫だと思います。
- 高田
- 浦沢さんが生きてるうちに成し遂げたいことは?
- 浦沢
- そうだなあ‥‥、うーん。
- 高田
- じゃあ、質問変えます。
「お葬式や偲ぶ会などで流してほしい音楽は?」
これはあるでしょう、ボブ・ディランでしょうか。
- 浦沢
- このあいだ、知り合いの大学教授のお葬式に行ったら、
お経なしでずーっとニール・ヤング流してました。
- 糸井
- ああ、いいですね。
ニール・ヤングはいいですね。
- 高田
- うん、いいね、それね。
- 浦沢
- そのお葬式でもみんな
「俺もニール・ヤングでいいよ」って言ってた。
- 高田
- 糸井さんはどうですか、お葬式に‥‥。
- 糸井
- 僕は音楽はわりとどうでもいいんだけど、
お別れの会を2日間やってほしいんです。
会場に泊まっていってもいいし、
3時とか4時になって
「俺、一旦家帰って風呂入ってくるわ」
なんて言ってまた来てもいいし。
集まった人同士がすごく楽しく
無駄話をしてるような葬式が憧れです。
- 高田
- ああ、楽しくね。
- 糸井
- ついでに言うと、
キレイどころを集めて「喪服ガールズ」っていうのを
お願いします(笑)。
- 高田
- ああ、いいですね!
でも自分は死んじゃってるから、わかんないよ?
- 糸井
- いい。
- 高田
- いいの?
- 糸井
- あきらめる!
- 高田
- あきらめるの?!
(つづく)
2018-12-15-SAT
協力:文化放送 編集:中川實穗
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