糸井 |
イメージの調整という面で、
今回、なかなか悩ましかったのは、
犬の「顔の細さ」のことでしたよね。
本当のブイヨンは、意外と顔が細いのに、
ぼくらは実際よりも太く、鼻先を丸く
見ようと見ようとしていて。
|
|
松村 |
そうです、そうです。
|
糸井 |
ほんとはそれほど丸くないってことを
飼い主のぼくも、実は知ってるんですよ。
でも、試作品の犬の顔の印象が
カチッとしすぎてるように感じて、
「細いままにしないでください」とか、
「鼻先は、もっと丸く」みたいなことを
言ってたんです。
|
フィードバック例より。「鼻先を丸く」の指示。
|
松村 |
そうですね。
|
糸井 |
そして、最終的には、
いい落としどころに落ち着いたんですが。
|
松村 |
最終的に、顔の形は
「ラッキョウな感じ」ということで(笑)。
|
糸井 |
そう、ラッキョウ。
ラッキョウ顔。 |
「ラッキョウ」の指示。
|
松村 |
この最終的な「ラッキョウ」という顔の形と、
最初に修正を依頼された
「鼻先を丸くする」ことというのは、
実は、両立しないんですよね。
|
糸井 |
そう、矛盾してますね。
|
松村 |
でも、どちらも、
言ってることはわかるんですよ。
ただ、最初の修正を依頼されたときには、
そのまま丸いほうに引っぱり過ぎちゃうと、
それはそれでまた違うだろうなとは
思ってました。
|
糸井 |
つまり、その時点ですでに松村さんは
ぼくらの言ってることがわかるところまでは
すでに頭の中で組み立ててあるんですよね。
「こういうことを、言いたいんだろうな」
みたいなことは、もうわかってたわけですよね。
|
松村 |
いろんな見方で見てはいるのでね。
こういう面もあれば、
ああいう面もある、ってことは
ずっと考えてましたから。
|
糸井 |
加えて、これがよそんちの犬だったら
こんなことは分かりゃしないっていうことも
言いますし、飼い主は。
|
松村 |
(笑)
|
糸井 |
結局、途中ああでもない、
こうででもないと
言ってたぼくらが、
ようやく落ち着き先が分かったのは、
試作品をぼくがいつも「気まぐれカメら」に
載せている写真のように
撮ってみたときなんです。
「あ、似てる」っていう状態になった。
写真を見て、みんなが腑に落ちたんですよ。
|
すけっち。
犬は、「Kようどう」さんに
「ふぃぎゅあ」というものを
つくってもらうことになりました。
で、写真だけじゃなくて、
「実際にお会いして、よく見たい」
って言ってもらったんです。
こんなふうな「すけっち」も、
つくられちゃった。うふっ。
よろしくお願いしまーす。
<『ブイヨンの気持ち(余感)』より> |
松村 |
たとえば、この耳なんですけど、
作っているあいだ、ずっと、
耳はふたつ並行に、
スッと上を向いていたんですよ。
|
試作品の写真(修正前)
|
糸井 |
ええ。
|
松村 |
ギリギリまでそうなっていたんですが、
原型を完成して工場に送る寸前に、
こう、ぱっと、
上を向いていた耳を横に広げたんです。
|
|
糸井 |
あ、広げた。へえ。
|
松村 |
耳の立ち上がり方については、
ずーっと悩みがあったんですけど、
自分で撮った写真がたまたま、
わりと耳が並行になっていたもので、
そのままできてたんです。
で、最後の最後、送る1時間ぐらい前に、
あ、やっぱこっちだ、と思って。
|
糸井 |
ちょっと開こうと。
|
松村 |
ええ。逆ハの字がいいなと思って。
で、バスバスと切って、ちょっと開いて。
|
一同 |
へぇー。
|
糸井 |
それは、作っている本人にしか
分からないかもしれないですね。
ぼくらは、開いた耳の形も見慣れていて、
ブイヨンの耳はこうだと思い込んでるから、
まったく違和感がなかったです。
ぼく、よく「三菱」って言ってるんですよ、
ブイヨンの耳のこと。
|
松村 |
ミツビシ。
|
糸井 |
うん、ブイヨンの耳は、
三菱のマークの菱形に似てるんです。
|
|
松村 |
ああ(笑)。
|
糸井 |
うちの犬は、
「三菱」で「ラッキョウ」なんですよ、ってね。
|
一同 |
(笑)
|
松村 |
とくに後ろから見たときのシルエットは、
耳が開いてるほうがいいかなと思ったんですよ。
|
糸井 |
ブイヨンの妹の、ハンナっていう子は、
耳がちょっと角みたいな格好になってるんです。
で、みんな、ちょっとずつ背が違ってるんで、
親からするとシルエットで区別がつくんですよね。
いやぁ、耳。そうでしたか。
|
松村 |
ええ、そういうことがけっこうあります。
(つづきます) |