糸井 |
犬のフィギュアを作りながら
松村さんが最後の最後まで
ジタバタするのはどこだったんですか?
やっぱり顔ですか?
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松村 |
顔というか、「目」ですね。
「ねてる」ほうみたいに目を閉じてると、
表情があるようでないんで、
すんなり決まるんです。
もう悩みがないっていうか。
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糸井 |
なるほど。 |
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松村 |
だけど「まってる」ほうは、
ちょっとした目の距離の取り方ひとつでも、
表情や顔つきががらっと変わってしまいますから、
悩むところですね、目は。
で、犬の目って、顔に対して
けっこうななめの位置にあるんですよ。
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糸井 |
ああ、そうですね。
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松村 |
その位置がちょっと変わるだけで、
印象がまったく変わりますしね。
だから目を開いてるほうが、
結局、悩むんですよね。
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糸井 |
鼻や口とのバランスでも
変わりそうですね。
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松村 |
そうですね。
まぁとにかく、生きものって、
ほんと、よくできているんですよ。
犬も、目と鼻との位置関係とか、
走るときにじゃまにならないように
ちゃんとなってる。
ようするに、目が真っ正面を見たときに
鼻が下にくるようになってるんです。
(目の前に鼻があるかっこうをしながら)
こうじゃなくて。
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糸井 |
うんうん、そうですね(笑)。
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松村 |
よく、犬を絵に描くと、
目のすぐ前に鼻があるような格好に
なりがちなんですけど、
実際にはそうはならなくて。
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糸井 |
あり得ない。
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松村 |
ええ。
目を真っ正面に向けたときには、
鼻は下に下がって、
じゃまにならないように
ちゃんとなってるんです。
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糸井 |
そうか。
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松村 |
だから、立体にするときにも、
そこらへんはちょっと
意識してやりますね。
で、当然ながら動くんです、目は。
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糸井 |
はいはい、動きますね。
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松村 |
犬には、人間みたいな
眉の部分の骨がないですから、
目玉が動くと、目がぐりって
動いたように見えるから、
それでまた雰囲気が変わって見えたり。
そういう意味で
目を閉じてる「ねてる」ほうは、
悩みがなかったです。
こっちは顔の表情より
後ろ姿がポイントですね。
背中から見たときに、
ぼてっと落っこちる感じが特徴かなと。
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糸井 |
豊かさがあるんですよねぇ。
それから、「ねてる」ほうは、
なんといっても
「肉球」が芸の見せどころですよね。
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松村 |
そうです、そうです。
あと、爪です。
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糸井 |
そう、爪とね(笑)。 |
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糸井 |
塗り残しと思われそうだけど、
こういう爪の色なんですよね。
飼い主としては、
そこまでやるのかーって(笑)
うなったところで。
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松村 |
自分で撮った写真を見ると、
そうなってたんですね。
作るほうとしては、
せっかく裏まで作るんだし、
爪と肉球を同じようにしないと
逆にへんだな、と思いますから。
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糸井 |
この耳の先っぽもそうですよね。
欠けたかと思われそうだけど、
ここは、みんなが喜ぶんじゃないかなぁ。 |
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糸井 |
「まってる」ほうの座り方も、
これ、こういうおすわりなんですよね。
きっと、意識しなければ
普通のおすわりで作ってしまうところ
なんじゃないですか。
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松村 |
いや、ぼくも前から、
ブイヨンの本とかを見ていて、
座ってるときに、後ろ肢がぱっと前に出ていて、
ぼーっとしてる姿がいいなぁと思ってたんです。
だから、この座り方は最初から、
こうしようと思ってましたね。
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糸井 |
そうか、最初からこの座り方が
おもしろいなと思ってたんですね。 |
最初のラフ、座っているポーズ。
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松村 |
ただフィギュアのポーズとしては、
やっぱり、ぼーっとしてるのは
ちょっとへんだろうと思って、
かわいく前を見るようにして。
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2回目のラフ、座っているポーズ。
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糸井 |
どこをとっても、
なんとなくです、っていうのは、
ひとつもないんですね。
こうやって、ひとつひとつ説明できるまで
考えたんだっていうことが
ちゃんとなかったら、
結局、答えは出ないということですよね。
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松村 |
特に「この犬」っていう個体になると。
自分で答えがでないですからね。
実際のところ、自分が飼ってる犬でも
わかんないですから。
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糸井 |
あぁ、そういうものですか。
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松村 |
ぼく、前に自分の犬を
作ったことがあるんですよ。
雑誌の撮影用に見える側だけを作ったので、
半立体なんですけど。
これ、うちの犬。
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一同 |
(笑)
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松村 |
こう、ベロを出して、
ハァーッてやってる顔が好きなもので(笑)。
こういう感じは、全部作ってしまうと
逆にうまく見えないので、
このくらい縮めたほうがいいなと思って。 |
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(つづきます) |