糸井 |
造形師の仕事というのは
アニメーターなんかに
近い仕事なんですね。
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松村 |
おっしゃる通りですね。
とくに俺は、細かく作ることよりも、
なんというのか、
作り飛ばしていくのが好きなんですよ。
粘土でスケッチするのもそうですけど、
飴細工をつくる芸人さんみたいに、
つぎつぎに、こう、
形を作っていくようなのが好きなんですよね。 |
粘土でブイヨンの立体スケッチ中。
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糸井 |
ははぁー。
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松村 |
で、つくった全部、総数で‥‥。
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糸井 |
楽しむんだ。 |
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松村 |
ええ。このバラエティを見よ! っていう。
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糸井 |
世界観みたいなものですね。
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松村 |
そうですね。
形や色のバリエーションを作ったり。
たとえば、これ、
オオクワガタなんですけど、
これも3段階あって。
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糸井 |
3段階?
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松村 |
サナギになったばかりの薄い色のときと、
成虫になる直前のやつとか、
色分けしてるんです。
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糸井 |
やっぱりアニメーションですね。
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松村 |
そうでしょう。
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糸井 |
これ、縮尺が全部違うっていうのが
またふしぎな‥‥(笑)。
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松村 |
かたまり感でだいたい統一してますね。
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糸井 |
「かたまり感」(笑)。
グラム数も一緒ぐらいなんじゃない(笑)。
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一同 |
(笑)
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松村 |
このあたりは動物園もので、
ズーラシア(よこはま動物園)のシリーズと、
旭山動物園の「ガチャガチャ」のシリーズ。
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一同 |
(かわいい)
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松村 |
こっちはチョコエッグ、
チョコQのシリーズです。
カプセルがチョコに入ってるやつです。
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糸井 |
ああ、チョコエッグ。
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松村 |
それからこれは、小学館の
『週刊 日本の天然記念物』っていう本の付録です。
毎週なので、このころは週に2個とか作ってて。
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『週刊 日本の天然記念物』(小学館)の付録例
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糸井 |
毎週‥‥どうしてそんなことできるんだろう。
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松村 |
いや、大変だったんですよ。
スケジュール的に、もう、
どうにもならなくなっちゃって。
だから、少ない制作期間のなかで、
いかにおもしろいものにするかってことを
考えてました。
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糸井 |
松村さんは、もともと、
アニメーターだったんですか?
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松村 |
いえ、もともとは絵を、
生きもののイラストを描いてまして。 |
松村さんがイラストを担当した本。
『アニマル・ウォッチング〜
日本の野性動物』(晶文社)
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糸井 |
そうか、それが立体化したわけですね。
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松村 |
そういうことですね。
あ、これも天然記念物のシリーズです。
ホタルイカ。
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ホタルイカのフィギュア。
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糸井 |
このイカは、透明感のある素材で
作っているんですか?
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松村 |
これは、イカに内臓が入ってる感じを
わかるように作りたくて、
胴をつかんで足をひっぱって抜くと‥‥ |
イカのフィギュアが銀色っぽい
てらてらした内臓つきの足と、胴にわかれる。
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一同 |
え!
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松村 |
そして、これをこうやることによって‥‥
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一同 |
わぁ!
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糸井 |
あー、なるほど、
内臓の色が透けて見えてるわけだ。
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松村 |
そうです、そうです。
イカの光沢感をなにか手軽な方法で
表現できないかと思ったんですね。
で、内臓を分けて作って、
胴に抜き刺しできるようにしてみたら、
あ、これはいい、って(笑)。
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糸井 |
いや、もう最高、最高です。
食べられそうですよ、ほんとに。
このホタルイカと、
さっきのチョコエッグのフィギュアでは、
材質が違うんですか?
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松村 |
ええ、違います。
チョコエッグって、フィギュアをカプセルに詰めて、
それをさらに、チョコのなかに入れてたんですね。
だから、チョコに匂いが移るといけないんで、
匂いがある素材は使えないんです。
柔らかい素材は溶剤の匂いが多少あるから、
チョコエッグは硬い素材を使ってます。
こっちのホタルイカは、本に入ってるものなので、
ちょっとぐらい臭気を発しても大丈夫で(笑)。
柔らかい素材を使ってます。
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糸井 |
ブイヨンのフィギュアの素材はというと?
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松村 |
ブイヨンの場合は「ポリストーン」といって、
どちらともまた、違う素材ですね。
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糸井 |
また違うんだ。
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松村 |
陶石の粉が少し入ってるので、
ちょっとずしっと重いんです。
これでぱっと軽いと、
ちょっと、あれ? って感じですけど、
この重さはいいですよね。
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糸井 |
そうそう、いいですね。? |
松村 |
ブイヨンのフィギュアは、
素材だけじゃなくて、ほかのフィギュアと、
もう全然、やり方が違うんですよ。
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糸井 |
ほう。
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松村 |
チョコエッグや『日本の天然記念物』の
フィギュアは、金型を使って成形しているので、
やろうと思えば、それこそ何万個だって作れるんです。
こういう模様とかも、印刷できるんですよ。
「タンポ印刷」とか、「マスク」といって、
穴の空いた金属の型をカチャっとはめて、
その上からスプレーでぷぷっと吹きつける方法とか、
模様も印刷できちゃうんです。
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糸井 |
へぇー。
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松村 |
でも、ブイヨンのフィギュアは
それができないんです。
本体自体がもろいですから、
落としたらパリンと割れちゃう。
だから、手塗りメインで
ペイントしてるんですよ。
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糸井 |
なるほどなぁ。
(「ちいさいブイヨン」をしみじみ見ながら)
おなかの軽いピンク色とか、
いいですよねぇ。
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松村 |
やりすぎない程度に、うっすらとね。 |
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(つづきます) |