糸井 |
いやいやいや、このたびはほんとに、
ありがとうございました。
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松村 |
いえ、こちらこそ。
ありがとうございました。
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糸井 |
途中、ものすごく細かく
注文をつけてしまって
すいませんでした。
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松村 |
いえいえ、そんな(笑)。
だいじょうぶです。
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糸井 |
完成するまでのあいだに、
何度もかたちを修正させてもらって、
その度に、ああでもない、こうでもないと、
さぞかし、うるさいなと思ったでしょう(笑)。
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松村 |
いや、おっしゃっている内容は
よくわかりましたので、
「あ、なるほど」と。
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完成したブイヨンフィギュア(上「まってる」 下「ねてる」) |
糸井 |
こんなふうに、
生きて動いている「現物」をモデルにして
フィギュアを作るというのは、
制作者にとっては、きっと
さぞかしプレッシャーがあるものでしょうね。
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松村 |
それもなくはないですが、
今回の場合はやっぱり、
「特定の犬」だということが
いちばん‥‥ですね。
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糸井 |
「特定の犬」。
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松村 |
たとえば、ぼくがふだん作っている
動物のフィギュアなんかだと、
「この動物なら、こういう形にすればいい」、
ってことがあるんですね。
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糸井 |
ええ、ええ。
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松村 |
どんな動物にも多少個体差はあるんですけど、
そういう細かい部分を考えずに、
ある程度、いいセンでつくるんです。
それが、今回のブイヨンみたいに、
特定の犬を作るとなると、
すべてが「特徴」じゃないですか。
もう、あらゆるところが。
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糸井 |
うん。そうですよね。
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松村 |
だから‥‥
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糸井 |
ひどい話ですよ、それは(笑)。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
いや、ほんと、そう思います。
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松村 |
まぁ、なんというか(笑)、
やっぱり、その犬特有の印象ってのが
ありますからね。
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糸井 |
人がどう見ているのか、ということですね。
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松村 |
ええ。たとえば、人間の顔は平面的なので、
わりと捉えやすいと思うんですけど、
犬って立体的なので、写真に撮ったときと、
生で見るのと、けっこう印象が違いますよね。
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糸井 |
違いますね。
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松村 |
実際にこちらにうかがって
初めてブイヨンを見たときも、
それまで写真で見ていたのと
けっこう雰囲気が違うと思ったんです。
上から見るか、横から見るかでも違うし。
なので、作っていてもなにか迷うんですね。
「あー、似ねぇなー」って。
そういうことが、ずいぶんありました。 |
ブイヨンと対面。
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糸井 |
これは正しいはずなんだけど、
なにか違うという感じですか。
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松村 |
そうなんです。
これで合ってるはずと思っても、
別の向きから見ると、
毎回ちょっと違って見えたり。 |
松村さんの1回目のラフスケッチ(会う前)
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糸井 |
このスケッチの段階で、
もうすでに雰囲気がでてますよね。
やっぱりすごい見てるんだなぁと思った。
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松村 |
これは最初の、現物のブイヨンを見る前に
描いたスケッチですね。
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糸井 |
実際にブイヨンを見て、
いちばん違ったのはどのへんですか。 |
松村さんの粘土のスケッチ(見ながら)
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松村さんの2回目のラフスケッチ(会った後)
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松村 |
もっと体が長い感じがしてたんです、写真では。
でも、実際のブイヨンを見たら、
意外に、コンパクトっていうか。
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糸井 |
コンパクト(笑)。
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松村 |
ええ、前後にコンパクトだったんです。
写真だと、上から撮るからだと思いますけど、
足が短く、胴が長く見えちゃってたんです。
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糸井 |
写真って、嘘ではないんだけど、
あたえる印象は、違うんですよね。
かならずしも、客観的事実を
そのまま写しとってるわけじゃない。
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松村 |
フィギュアみたいな立体でも、そうですよ。
こっちから見たら
頭がすごくデカく見えたり、
あっちから見たら
顔が小さく見えたりするわけでね。
だから、印象で彫っていく、
という感じなんですよ。
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糸井 |
つまり、フィギュアも実は、
イメージの調整をしていて。
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松村 |
ものすごいしてます。
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糸井 |
リアリズムではない、
っていうことなんですよね。
つまり、みんなが思っているほど
リアリズムを追求しているわけじゃない。
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松村 |
そうです、ええ。
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糸井 |
ぼくも含めて、
フィギュアはリアリズムだと
みんな思ってて、いかに精密か、
精密さのことばかり言うけど、
精密ってだけでは、表現じゃないんですよね。
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松村 |
そうですね。精密ってだけなら、
標本みたいなのがベストということに
なっちゃいますしね。
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糸井 |
やっぱり、作ってる人じゃないと、
わからないんですよ、それは。
ぼくは、今回、自分んちの犬の
フィギュアだったから、
それがよくわかったんです。
イメージの調整という面で
今回、なかなか悩ましかったのは、
あれですよね、
あの、犬の「顔の細さ」のこと。
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松村 |
そうそう、そうです、そうです。
(つづきます) |