糸井 |
フィギュアの造形を作るときって、
CGとかは使ってないんですか?
つまり、隠れた部分の構造や、
向こう側がどうなってるかみたいなことを
理屈で知るために、
アニメーションの世界なら、
いまは、どんどん3Dにしていきますよね。
そういう仕組みは使ってない?
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松村 |
使ってないですね。
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糸井 |
なるほど、CGは補うものであって、
この場合は、骨格を知っていれば
必要ないってことですね。
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松村 |
そうですね。
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糸井 |
犬のひたいの、
左右の中心にある頭蓋骨の凹みなんかも、
最初の試作品の段階で、
すでにちゃんとありましたよね。
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松村 |
ええ、ええ。 |
最初の「ねてる」の試作。
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糸井 |
「この人は、さんざん骨を見てきてるんだな」と
思ってたんです。
ここは、毎日なでつけてる
ぼくがいちばんよく知っていますから(笑)。
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松村 |
そうですね。
じゃあ、犬の口元に、
ぽこっと出てるところ、わかります?
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糸井 |
口元の‥‥ああ、はい。 |
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松村 |
これって、臼歯なんですよ。
上あごの臼歯はこう、
下のかぶさってるところはこう。
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糸井 |
そう、そう。
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松村 |
それがこのへんにぼこっと出ていて、
そこに歯があるのがわかるんですけど、
俺、そこの立体加減が好きで。
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一同 |
(笑)
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松村 |
だから、犬のフィギュアを作るときは、
口元に必ずこのふくらみを入れるんです(笑)。
触るとわかりますよ、顔をこう触ると‥‥
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糸井 |
あるある、ありますね。
そのへんの観察はほんとにすごい。
犬そのものをよく知ってますよね。
あの、生きものって、
死んだものとか、命のないものに比べて
ぐねぐねしてますよね。
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松村 |
ええ、哺乳類がとくにそうですね。
獣は、皮膚に隠れてる部分が
多いですよね。
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糸井 |
そうか、哺乳類がとくにそうなんですね。
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松村 |
そうです。
隠れている部分がけっこうあるんですよ。
人間なんかは露出してる部分が多いですけど、
犬って、膝とかも埋まってる感じですよね。
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糸井 |
うん、そうですね。 |
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松村 |
膝まわりの関節は
体につながってる部分なんで、
こう、皮のなかでこう、
ぐりぐりぐりと動いてる。
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糸井 |
生命感って、なにかそういった
「ぐねぐね感」とつながってますよね。
よその犬って、
わりとシンプルに見えるんだけど、
自分んちの犬って、ほんと、
ぐねぐねしてるんですよ。
色気みたいなものにも通じる、
なにかがあると思うんです。
はぁー、おもしろい。
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松村 |
(笑)
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糸井 |
うちの犬はもっと汚いよっていうことと、
この白いきれいなフィギュアとのあいだの
会話があるわけ。
飼い主としては、
本物の、もっと汚れた犬に、
「この子(ちいさいブイヨン)より、
おまえのほうがかわいいよ」っていうふうに
言ってあげたいわけ。
「あんなにきれいなわけないよな」って。
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松村 |
(笑) |
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糸井 |
弱点も含めて自分んちの犬だからね。
「こんな白い犬、いるわけないよ、
よしよし」って。
昨日もブイヨンが布団にもぐってきたんだ。
俺はいつも布団から顔を出して寝ていて、
ブイヨンだけなかに入ってるんだけど、
昨日はたまたま朝方に寝て、
まぶしいもんだから、俺も布団をかぶったんだ。
ブイヨンと、同じ空間を共有した状態になって、
ここで俺が屁をした場合には
ブイヨンに悪いなと思うから
そういうことしないように
俺は布団の外でするようにしてるわけ。
で、昨日、布団をかぶったら、臭かった。
‥‥やつが。
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松村 |
ああ(笑)。
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糸井 |
先にしてた(笑)。
だいぶ時間が経ってるみたいだったけど、
いつもの犬の匂いじゃない匂いがした。
それはフィギュアでは味わえないね。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
ま、そもそもいらないな。
でも自分んちの犬については
そういうことまでが、
自分との関係ですもんね。
(つづきます) |