糸井 |
それにしても、このホタルイカは、
何度見てもすごいですねぇ。
こういうのは、いまはもう、
手に入らないものなんですか? |
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松村 |
ええ。これは『週刊 日本の天然記念物』の
付録のフィギュアで、配本が終わってますから。
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糸井 |
絶版になってるわけですね。
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松村 |
そうです。
このなかでいまも続いてるのは
旭山動物園の「ガチャガチャ」のシリーズくらいかな。
いまは、スノードームのようなのに
動物が入っているのを作ってますね。
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糸井 |
じゃあ、このチョコエッグとかも、
もちろんない。
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松村 |
これはチョコエッグから、チョコQと、
名前が変わってからのものですけど、
これももうないですね。
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糸井 |
昔あったあれ、またほしいなと思っても、
ほとんどがもうないということですね。
そういう意味では、
仏像なんかと近いのかもしれない。
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松村 |
ほんと、永劫には続かないです。
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糸井 |
チョコエッグのブームって、
もう10年くらい前になりますよね。
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松村 |
最初のシリーズがはじまったのが、
1999年でした。
そのころのチョコエッグって、
ずいぶんあっさりしたものだったんですよ。
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糸井 |
あっさり(笑)?
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松村 |
たとえば、これ、
シリーズ後期のカメなんですけど。 |
シリーズ後期のカメのおなか。
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一同 |
おお!
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松村 |
で、こっちが初期のカメ。 |
後期と比較するとシンプルなつくり。 |
一同 |
はぁー。
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松村 |
こんなふうに、
あっさりした単純な形だったのが、
すごい細かいものに
ちょっとずつ変わっていったんです。
それも、もともと単純な形だったのに、
中国の工場が、もっと簡単に
勝手に型を変えてきちゃったりして。
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糸井 |
向こうで?
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松村 |
ええ。色なんかもすごい省いてきてて。
最初はこちらも、
「これを中国で作るのは、やっぱ難しいのかな」
とか思いながら、ひとまずダメ出ししてみたら、
ちゃんと直ってきたんです。
できるとわかって、じゃあ、色はもっとこうして、
ここはこういうふうにして、って
細かく指示していったら、
「こうやりゃあ、いいんだろ」みたいな感じで、
工場のほうでも、バシッ、と
最初から決めてくるようになってきて。
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糸井 |
すごいね(笑)。
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松村 |
ええ。それで結局、ものすごい細かいものでも、
そのままできるようになったんです。
「すごいよねぇ」っていいながら、
ますます細かくなっていったんですけどね。
そして、1回製造が終わって
つぎにまた再開するとなったとき、
工場の見積もりが、
ものすごく高くなったんです。
工場も気づかないくらい
じょじょに複雑になっていったもんで、
最初はそのままやってくれてたんですけど、
1回中断して、もう1回始めるとなったときに、
ハタと冷静になったんだと思うんですよ。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
騙されてたんじゃないかと。
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松村 |
とてもじゃないって、思ったんでしょうね。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
あの単純なカメで引き受けたら
いつの間にか、こんなに複雑なカメを
作ってたってことですもんね、工場にしてみたら。
そりゃあ、ショックだ。
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松村 |
ええ、勘弁してくれ、ってことだと思います。
まぁ、厳密に言うと、そのころは
数もものすごくたくさんやってたんですが。
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糸井 |
このなかで、いちばん工場泣かせなのは、
どれなんだろう。やっぱりエビですか。 |
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松村 |
どうだろう‥‥うん、そうですね。
色とか、やっぱり。
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糸井 |
ひどいですよ、エビ(笑)。
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松村 |
でも実は、俺的には最初のころの、
単純なもののほうが好きなんですけどね。
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糸井 |
ほう。
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松村 |
どんどん細かくなっていったのは、
世の中の流れが、
すごい細かいほうにいっちゃったんで、
しかたなしにもう、追うしかなくて。
でも、俺としては、
こっちの単純なのでいいんだったら、
そのほうが好きなんですよ。
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糸井 |
これでいいんだったら、
という考えは、たしかにありますね。
それって、文章を800字で書くか、
俳句で書くかの違いに似てます。
800字の内容を、俳句の12文字で
言いあらわせたりしますからね。
なるほどなぁ。
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松村 |
単純な形で、十分成立してると
俺は思うんですけどね。
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糸井 |
「こんなにする必要ないんですよ」
「ああ、なるほどな」って、
ときどき、こんなふうに、
フィギュアを作ってる人の考えと
自分が重なるときがあって、
おもしろいなぁ(笑)。
(つづきます) |