神様をさがしに。  ~高尾山の巻~  どうか、神様! と、願いをかけるとき‥‥ 我々はいったい どこに呼びかけているのでしょう。 おやしろの中に? それとも、天に向かって? それとも、自分の中の奥の底? * 神様の居場所をさがしに、 おかしな一団が ぷらりと旅に出ることにしました。
第4回 煩悩の階段。
最初から「登山」と構えるから
いけないのかもしれません。
何ごとにおいても、
目的にむかってひたすら努力あるのみ、
というよりは、
ふらふらしているあいだに
気づけばゴールだった、
というのが理想ではありませんか。
そのとおりの道筋を、
我々はいま、歩いています!
ソブエ 門のわきに
「健脚祈願」のお堂がありますね。
実はぼく、偏平足なんですよ。

これからが本番、
気が引き締まります。
ハタナカ 神変大菩薩とありますね。

▼ハタナカメモへジャンプ!
オイカワ 「健脚祈願」だけでなく
「腰痛平癒」ともあります。
ソブエ おお、ぼくは腰痛の悩みもあります。
拝んでいきましょうね。
このかねは、何回鳴らせばいいの?
ハタナカ 1回でいいんじゃないでしょうか。
ソブエ 拝むとき、何と言えばいいのかな?
ハタナカ そうですね、
「南無神変大菩薩」

神様を呼ぶかねを鳴らします。


熱心に祈願する
ソブエさんの両脇に
善童鬼、妙童鬼の像があります。
偏平足のソブエさんの足が
最後まで疲れませんように。
── じゃあ、ここからは
本気の本気で
登りましょう!
ハタナカ ここに、高尾山薬王院までの
道のりをあらわした
地図がありますよ。

まだ、ここ。
ソブエ ということは、もうすぐ、
道がふた手に分かれるようですね。
ハタナカ 観光地などでもよくありますが、
ひとつが女坂、ひとつが男坂です。
一般的には、
女坂のほうがなだらかで、
男坂のほうが急勾配。

道がふた手に分かれます。
左が男坂。
ソブエ うーーーーん。
どうしよっか。
オイカワ どっちにしましょっか。
ハタナカ ここはひとつ。せっかくだし。
全員 急なほうの男で。

いくら健脚祈願したとはいえ
目前の階段に多少不安をおぼえます。
ソブエ (言い聞かせるように)
ウンウン、きっと
苦労して登ったほうが
ご利益があるよね。
── ちょぴっと、なだらかなほうで
行きたい気分も‥‥。
オイカワ いや、ここは修行の場ですよ。

修行大師さんもいらっしゃいます。
── でも、階段が苦手で‥‥。
ハタナカ しかも、修験道の108の階段です。

煩悩の数と同じ
108段あるらしい。
ソブエ じゃ、ほんとに
108段あるかどうか、
数えながら、行ってみる?

いち、に。


さん、し。


はち、く。


ごじゅご、ごじゅろく。ハーハー。


きゅじゅろく、きゅじゅなな‥‥。
ソブエ (ゼェゼェ)
これは、108を数えることによって
しんどさをごまかしているのです。
ハタナカ そのとおりです。
(フゥフゥ)
気を紛らわしています。

ひゃくなな、ひゃくはち‥‥あれ?


「108だ!」
ソブエ 意外にしっかり108段です!
── すごい、ちゃんとしてます!
煩悩の数です。
ソブエ しかし、ハァハァ。
ハタナカ ゼーゼー。

すっかり人影もなく。
── 意外に涼しいですね。
ハタナカ ちょっと暗くなってきたりしてますね。
ソブエ 要は、やっぱり
出発が遅い、ということですね。
── そういえば、お昼に集合したはいいものの、
我々、天狗焼きしか食べてませんね。
ソブエ このお店に
ソフトクリームがありそうだけど、
いまは食べてられないね。

顔つきのソフトちゃんと
いっしょにパチリ。
── 薄暗くなってきたので、
とりあえず薬王院に行ってから、
そのあとのことを考えましょう。
ハタナカ そうしましょう。
お! あの石碑に
「ミシュランの三つ星」と
書いてありますね。

ミシュラン三つ星として
世界に認められた高尾山の自然、
というメッセージが。
── ここから先の道は、
お札がたくさん並んでますよ。
ソブエ いよいよ、お寺の近くという
雰囲気になってきましたね。

杉苗奉納のお札です。
── 奉納した方のお名前が
たっくさん並んでます。
ソブエ ここに自分の名前があったらびっくりするね。
── しますね。
ソブエ むかしさ、まんが雑誌の
プレゼント当選コーナーで、
応募もしてないのに一所懸命
自分の名前を探さなかった?
── いや、特には‥‥。
ソブエさんは、そんなことを?
ソブエ うん、やってた。
そもそも応募しなきゃ載らないんだ、
ということが
わかってなかったんです。
── では、ここのお札も、同じように。
ソブエ 納めてないのに、探しちゃう。
── でも、これだけの人が
奉納してるんですから、
知り合いがいてもいいですよね。
ソブエ あ、それはそれでびっくりするね。
さがそうか。
糸井さん‥‥糸井さん‥‥。
── 糸井、糸井‥‥(なぜ、糸井‥‥?)。
ソブエ わ! ねぇ、これ、何の木?

大木です。
── これだけのみなさんが
杉苗を奉納されてるんですから、
むろん、杉でしょう。
ソブエ そうなの?
太すぎじゃない?
つまり、太杉‥‥プププププ。
── 太すぎですね。
樹齢はきっと、
百年単位でしょうね。
ソブエ あのくらい生きたいねぇ。
あ、これは、高すぎ‥‥ププププ。

高杉です。
── 杉だと何でも言えちゃいますね。
ソブエ なら、あれは?
クワガタが上に
乗っかってるみたいじゃない?
クワガタに似すぎ‥‥。

クワガタに似杉。
── と、杉の話をしているうちに
とうとう我々、
目的地までやってきたようですよ。

右手にお寺の山門が見えてきました。
ハタナカ

着きました。着いた、着いた。

ソブエ ツイッター,ツイッター。
── うわぁーい。

いよいよ、高尾山薬王院へ。
 
(つづく)
ハタナカ
ハタナカメモ
神変大菩薩


この難しい名前は、
修験道の開祖である
役行者(えんのぎょうじゃ)の
尊称です。
役行者は実在とされていますが、
伝説の中では
遠く離れた山に
橋を架けようとするなど、
超人的な人物として描かれています。
善童鬼と妙童鬼は
行者につき従っていた夫婦の鬼で、
善童鬼が夫で「前鬼」、
妙童鬼が妻で「後鬼」とも呼ばれます。
2010-09-27-MON