最初から「登山」と構えるから
いけないのかもしれません。
何ごとにおいても、
目的にむかってひたすら努力あるのみ、
というよりは、
ふらふらしているあいだに
気づけばゴールだった、
というのが理想ではありませんか。
そのとおりの道筋を、
我々はいま、歩いています!
門のわきに
「健脚祈願」のお堂がありますね。
実はぼく、偏平足なんですよ。
これからが本番、
気が引き締まります。
神変大菩薩とありますね。
「健脚祈願」だけでなく
「腰痛平癒」ともあります。
おお、ぼくは腰痛の悩みもあります。
拝んでいきましょうね。
このかねは、何回鳴らせばいいの?
1回でいいんじゃないでしょうか。
拝むとき、何と言えばいいのかな?
そうですね、
「南無神変大菩薩」
神様を呼ぶかねを鳴らします。
熱心に祈願する
ソブエさんの両脇に
善童鬼、妙童鬼の像があります。
偏平足のソブエさんの足が
最後まで疲れませんように。
──
じゃあ、ここからは
本気の本気で
登りましょう!
ここに、高尾山薬王院までの
道のりをあらわした
地図がありますよ。
まだ、ここ。
ということは、もうすぐ、
道がふた手に分かれるようですね。
観光地などでもよくありますが、
ひとつが女坂、ひとつが男坂です。
一般的には、
女坂のほうがなだらかで、
男坂のほうが急勾配。
道がふた手に分かれます。
左が男坂。
うーーーーん。
どうしよっか。
どっちにしましょっか。
ここはひとつ。せっかくだし。
全員
急なほうの男で。
いくら健脚祈願したとはいえ
目前の階段に多少不安をおぼえます。
(言い聞かせるように)
ウンウン、きっと
苦労して登ったほうが
ご利益があるよね。
──
ちょぴっと、なだらかなほうで
行きたい気分も‥‥。
いや、ここは修行の場ですよ。
修行大師さんもいらっしゃいます。
──
でも、階段が苦手で‥‥。
しかも、修験道の108の階段です。
煩悩の数と同じ
108段あるらしい。
じゃ、ほんとに
108段あるかどうか、
数えながら、行ってみる?
いち、に。
さん、し。
はち、く。
ごじゅご、ごじゅろく。ハーハー。
きゅじゅろく、きゅじゅなな‥‥。
(ゼェゼェ)
これは、108を数えることによって
しんどさをごまかしているのです。
そのとおりです。
(フゥフゥ)
気を紛らわしています。
ひゃくなな、ひゃくはち‥‥あれ?
「108だ!」
意外にしっかり108段です!
──
すごい、ちゃんとしてます!
煩悩の数です。
しかし、ハァハァ。
ゼーゼー。
すっかり人影もなく。
──
意外に涼しいですね。
ちょっと暗くなってきたりしてますね。
要は、やっぱり
出発が遅い、ということですね。
──
そういえば、お昼に集合したはいいものの、
我々、天狗焼きしか食べてませんね。
このお店に
ソフトクリームがありそうだけど、
いまは食べてられないね。
顔つきのソフトちゃんと
いっしょにパチリ。
──
薄暗くなってきたので、
とりあえず薬王院に行ってから、
そのあとのことを考えましょう。
そうしましょう。
お! あの石碑に
「ミシュランの三つ星」と
書いてありますね。
ミシュラン三つ星として
世界に認められた高尾山の自然、
というメッセージが。
──
ここから先の道は、
お札がたくさん並んでますよ。
いよいよ、お寺の近くという
雰囲気になってきましたね。
杉苗奉納のお札です。
──
奉納した方のお名前が
たっくさん並んでます。
ここに自分の名前があったらびっくりするね。
──
しますね。
むかしさ、まんが雑誌の
プレゼント当選コーナーで、
応募もしてないのに一所懸命
自分の名前を探さなかった?
──
いや、特には‥‥。
ソブエさんは、そんなことを?
うん、やってた。
そもそも応募しなきゃ載らないんだ、
ということが
わかってなかったんです。
──
では、ここのお札も、同じように。
納めてないのに、探しちゃう。
──
でも、これだけの人が
奉納してるんですから、
知り合いがいてもいいですよね。
あ、それはそれでびっくりするね。
さがそうか。
糸井さん‥‥糸井さん‥‥。
──
糸井、糸井‥‥(なぜ、糸井‥‥?)。
わ! ねぇ、これ、何の木?
大木です。
──
これだけのみなさんが
杉苗を奉納されてるんですから、
むろん、杉でしょう。
そうなの?
太すぎじゃない?
つまり、太杉‥‥プププププ。
──
太すぎですね。
樹齢はきっと、
百年単位でしょうね。
あのくらい生きたいねぇ。
あ、これは、高すぎ‥‥ププププ。
高杉です。
──
杉だと何でも言えちゃいますね。
なら、あれは?
クワガタが上に
乗っかってるみたいじゃない?
クワガタに似すぎ‥‥。
クワガタに似杉。
──
と、杉の話をしているうちに
とうとう我々、
目的地までやってきたようですよ。
右手にお寺の山門が見えてきました。
着きました。着いた、着いた。
ツイッター,ツイッター。
──
うわぁーい。
いよいよ、高尾山薬王院へ。
(つづく)
神変大菩薩
この難しい名前は、
修験道の開祖である
役行者(えんのぎょうじゃ)の
尊称です。
役行者は実在とされていますが、
伝説の中では
遠く離れた山に
橋を架けようとするなど、
超人的な人物として描かれています。
善童鬼と妙童鬼は
行者につき従っていた夫婦の鬼で、
善童鬼が夫で「前鬼」、
妙童鬼が妻で「後鬼」とも呼ばれます。
2010-09-27-MON