神様をさがしに。  ~高尾山の巻~  どうか、神様! と、願いをかけるとき‥‥ 我々はいったい どこに呼びかけているのでしょう。 おやしろの中に? それとも、天に向かって? それとも、自分の中の奥の底? * 神様の居場所をさがしに、 おかしな一団が ぷらりと旅に出ることにしました。
第6回 天狗の権現様。
いよいよ、高尾山薬王院の
飯縄大権現に出会います。
ハタナカリーダー以外の
ご祈祷初心者の面々、緊張気味。
オイカワさんのイラストが
大活躍の回でございます!
ハタナカ ここが、高尾山薬王院の
ご本堂です。

「うわぁ‥‥」
── 仁王門の内側に
天狗がいます。

こちら、カラス天狗。


鼻の長い大天狗。
オイカワ まさに天狗がいっぱいですね。

カラス天狗。


大天狗。
── うきうきしてしまいます。
ハタナカ これから、我々5人、
本堂の中で
護摩祈祷していただくことに
なってるんですけれども‥‥。
── なんだか、すごい音が
聞こえてきましたね。
オイカワ ね。
ソブエ 何だろう?

この音はいったい何?
ハタナカ あちらです。

プー。ポワー。プー。
ソブエ ほら貝だ。
オイカワ ほら貝の生の音、
はじめて聞きました。

ぞくぞくと、ほら貝。


総勢おそらく10人くらい?
お坊さまがたが、
ほら貝を吹き吹き、やってこられました。


あの傘の方が、
祈祷してくださるのでしょうか?
── しばらく外で呆然と
ほら貝の音を浴び、
我にかえって
一同、本堂へ。
本堂の内部は
写真撮影禁止となっておりますので、
ここからはオイカワさんに
お願いしましょう。
オイカワ はい。
ぼくの活躍するときが
やってきました。
ハタナカ お願いします。
── まずは、本堂のたたみに
みんなで座りました。
そして、目の前で、お坊さんたちが
お経をあげてくださいました。
こんなようすです。

薄暗い本堂内に座る我々。
ハタナカ 祈祷の途中で、声をあわせて
「南無飯縄大権現
 (なむいづなだいごんげん)」
と7回唱えるように教えていただきましたので、
みんなでそのようにしました。
ソブエ (よしっ、いまだ!)
南無飯縄大権現、
南無飯縄大権現。
全員 (はいっ、いまですね!)
南無飯縄大権現、
南無飯縄大権現。
── ほら貝あり、
響くかね類あり、
お坊さま方の通る声が
合唱のようになって、
ご祈祷は盛大かつ荘厳でした。
ソブエさんは
「南無飯縄大権現」のところで、
思わずリズムを取られまして。
オイカワ あれは、ノッてしまいますね。
── 跳ねてましたよ、正座で。
ハタナカ そのくらい、リズムがすごかったんですよ。
── すこし怖かったです。
ソブエ 気がつけば、真ん中から火が。
ハタナカ そうそう、すごい勢いで。
── あの火はどこから来たのでしょう。
オイカワさん、どんなカンジでした?

こんなカンジ。
ハタナカ あの炎で、
煩悩を焼きつくすんですよ。
ソブエ 火の粉がキラキラと舞って
きれいでしたね。
あんなにたくさんの人数で、
祈祷してくださって、
なんだかお得でしたね。
申し訳ない気持ちに
なっちゃいました。
ハタナカ 我々5人のために。
オイカワ すごかったですよねぇ。
── 護摩祈祷が終わったら、
部屋の奥に進んで、
みんなで飯縄大権現像を
拝見しました。
こちらも撮影禁止なのですが、
薬王院からお借りした写真をごらんください。

飯縄大権現立像。
木造。江戸時代の作と言われる。
ソブエ 暗くて見えづらかったんですが、
まんなかの像の
目が光って見えました。
オイカワ 光ってましたね。
── ほかにも、まわりにたくさん
天狗や立像があって‥‥。
オイカワさんの記憶だと、こんなカンジ。

こんなカンジ。
── 最後にお清めのお香のようなものを
てのひらにそっともらって
出てきました。
オイカワ なんだかとても不思議な
体験でした。
ソブエ おもちろかったね。
いいものいただきましたよー。

受け取った御護摩札。
ハタナカ 護摩祈祷後に受け取った御護摩札には、
飯縄大権現のご神体の分身が
入っていると、
お寺の方がおっしゃっていました。
── 護摩をたいたときに
お札に分身が入るのだそうですね。
ソブエ はい。
家の中の高いところに、
お札のおもて面が
南か東に向くように置くといい、と
教えていただきました。
ハタナカ しかし、
薬王院の秘仏になっている本尊は
薬師如来です。

▼ハタナカメモへジャンプ!
ソブエ そういえば。
ハタナカ 薬師如来ではなく、
お札には、飯縄大権現の分身が入っている。
そこが、とてもおもしろいところだと思います。
── 「権現」とは、民を救うために
仏様が神様の姿になって
この世にあらわれること、といいますよね。
神様の姿の仏様って‥‥?

▼ハタナカメモへジャンプ!
ハタナカ きっとまじりあっているのでしょうね。
昔、大陸から仏教が伝来したときに、
それまであった日本の信仰と
仏教が混ざり合う、
神仏習合(しんぶつしゅうごう)がおこりました。
その結果、もともと土着の神様がいた場所に
仏教のお寺が建って、
もともとそこに建っていた施設を
奥に移築することもあったようです。
ここも、そうだったのかもしれません。
山の奥には神社があるのではないかと
ぼくは思います。
── (資料を見る)
「本堂」のその奥には、
「本社」があるようですね。
ハタナカ 行ってみましょう。
 
(つづく)
ハタナカ
ハタナカメモ
秘仏


信仰上の理由により非公開とされ、
厨子などの扉が
閉じられたままになっている
仏像のことです。
秘仏には、
全く公開しないもの
(「絶対秘仏」)と、
期間を定めて公開するものがあります。
秘仏が生まれたのは、
特定のお祭りのとき以外には
神殿の扉を開けない、
神道の影響だという説もあります。

権現

日本の神様は、仏教の仏が
仮の姿で現れたものである、
という考え方
(「本地垂迹(ほんちすいじゃく)」)
に基づいた神仏への尊称で、
「権」は「仮」という意味です。
権現にはほかに、
「蔵王権現」
「愛宕権現」などがあり、
東京の秋葉原は
「秋葉権現」という神仏が、
地名の由来になっています。
2010-09-29-WED