飯縄大権現を拝観し、
薬王院の奥へ奥へと進む一行です。
小さなリュックを背負って
(ひとりは「手さげかばん」ですが)
山をたのしく登りながら、
我々は知らず知らずのうちに
古来より人びとが願いをかけてきた何かに
近づいていく‥‥のでございます。
上には本社があります。
本社の手前、階段脇に
たくさんの像。
ソブエさん、ていねいに
見て回ります。
草木のあいだに
子供の像
かわいいねぇ!
──
不動明王に従う
36人の童子たち、だそうですよ。
本堂からさらに階段をのぼって
本社に到着。
ここにも天狗がいます。
ここの天狗、
とてもかっこいい。
「飯縄大権現」の文字が
掲げてあります。
飯縄大権現は、
山岳信仰と修験道が合わさった、
神仏習合の神様と言えると思います。
修験道のお寺や神社にいることが多いですね。
飯縄大権現の使者、
きつねの姿も見えます。
──
結局、飯縄大権現は、
神様なんですか?
それとも仏様なんですか?
うーん。
まぁ言えば、ちょうど中間。
全員
中間!
神仏習合、神仏分離、
いろんな考えがまじったり離れたり、
栄枯盛衰さまざまな時代を経て、
この場所は、ここまできたのでしょう。
──
必要とされる考えは
時代によって変わるから‥‥。
人々が願いをかけてきたものの跡が
残っている場所は
たくさんあるんですけれども、
ここ高尾山は、
そのまざりぐあいがすごいと言えます。
──
飯縄大権現は、
カラス天狗に似たお姿でしたが。
きっと、天狗より先に
飯縄大権現があって、
天狗という考えや姿は
あとから追いかけてきたものなんでしょうね。
飯縄大権現は、もともとは、
信州の飯縄山の
山岳信仰が発祥の神様です。
本堂の上に本社があって、
さらに上に続く階段があります。
奥の院ですね。
行こう、行こう。
ここが奥の院です。
説明書きがあるよ。
──
えーっと、
(お堂の横の説明書きを読む)
もともと、いま本堂の場所にあったものを、
明治時代に移築して
不動堂としたもの、だそうです。
木造の不動明王立像が
安置してあるようですね。
いまは、中は見られないんですね。
あ‥‥あっちに
もうひとつ、何か建ってますよ。
おやしろがありました。
──
ハタナカさん、これは、
鳥居があるから
神社ですよね?
これは、浅間神社ですね。
「浅間神社」って、よくありますけど‥‥。
富士山の神様です。
富士山をあおぐ場所に
建っていることが多いです。
晴れてたら、
ここからも富士山が
見えるのかなぁ。
‥‥いまは、天気が悪いから
くもしかみえないけど。
くも
プププププ。
足もとにも
くも発見ー!
____
オワァァ、立派なくもが!
このくもはいつも
富士山をあおいでるんですね。
富士山が見えるここが、
この山でいちばんの
場所なのかもしれないなぁ。
──
山から山を仰ぎ見る場所が。
はい。
山の神様の様式というのは、つまり──
まず、民衆の暮らす場所には
「里宮」と呼ばれるものがあります。
それは、今日ぼくらが最初に訪れた
遥拝所のような意味合いの神社です。
そして、山の上には「奥宮」があります。
富士山を臨む場所だったり、
その場所が富士登山の
経路となっている場合には、
浅間神社が建立されます。
山の上であり、なおかつ
富士山が見えるこの場所というのは
とってもいい場所なんですね。
昔から、山は神様だったんですよ。
その「もともとのいい場所」は、
みんなが畏怖を抱く場所ですから、
修験道、富士山信仰、仏教、
みんなにとっていい場所です。
だから、いろんなものが建つんだね。
──
もともとここが人びとの
信仰が集まる場所だったとして‥‥
(資料を見る)
高尾山薬王院として
開創したのが、奈良時代の
天平16年。
聖武天皇の勅願により
行基によって開山という
歴史が残っているそうです。
そのときは、薬師如来がご本尊。
飯縄大権現はいつ登場するんでしょうか。
14世紀に
高尾山薬王院中興の祖といわれる
俊源大徳の前に、
飯縄大権現が姿をあらわしたことから、
飯縄大権現をまつる
修験道の道場となったそうです。
そのときの繁栄の大きな要因は、
飯縄大権現が戦国武将の守り神と
されていたことにあったのでしょう。
──
そして、現在は
新義真言宗智山派に所属する大本山。
神仏習合の施設というのはつまり、
神社でもお寺でもないというのが
いちばん正確なんだと思います。
どっちでもない、か。
お薬師さんがいて、
それを守護する役割として
飯綱権現様がいる。
わたしたちは、真言宗の祈祷を受けたのですが、
持って帰るのは、いわば神様の分身です。
ここは、ある時期のこの国の、
典型的な信仰の姿を
残していると言えるのかもしれません。
そういう、複雑に絡み合った歴史を。
高尾山にハイキングに来て。
──
少しずつ知っていく、
というわけですね。
さて、どうしよう、これから。
どうしましょうね。
(つづく)
飯縄山
長野県北部にある
標高1917メートルの山。
飯縄山の名称は、
ご飯のように
食用となる砂という意味をもつ
「飯砂(いいずな)」に由来します。
これは菌類など微生物の複合体、
「テングノムギメシ」
(天狗の麦飯)のことを指し、
以前は飯縄山中に生息していたものの
現在は絶滅したそうです。
浅間神社
富士山を神様と
見立ててお祀りする神社で、
富士山麓をはじめ、
富士山が眺められる地に
数多く見受けられます。
浅間は「せんげん」と読みますが、
かつては軽井沢の近くの
浅間山と同様に、
「あさま」と読んでいました。
「あさま」は火山を示す古語で、
阿蘇山の「あそ」も
同じ系列の言葉だといわれています。
2010-09-30-THU