- 唐池
- 「手間をかける」ことでいえば、
糸井さんの「ほぼ日」だって、
ものすごく手間がかかっています。
ひとつひとつの
コンテンツもそうですし、
さきほど見た
「生活のたのしみ展」もそうです。
- 糸井
- 「ほぼ日」は本当に
「労働集約型」なんだと思います。
たいへんな思いをするだけ、
人はよろこぶみたいなところが、
どこかにあるんでしょうね。
- その大もとにあるのって、
「人がすることを、人はよろこぶ」
という考えなんだと思います。
たとえそれを、機械ができるとしても。
- 唐池
- さらにつけ足すなら、
「人がまじめに、
一所懸命することを、人はよろこぶ」
ということですよね。
- 糸井
- そうだと思います。
- いろんな説がありますが、
人類(ホモ・サピエンス)の誕生が、
ひとまず20万年くらい前として、
いろいろ便利になってから、
まだ300年も経ってないですよね。
- 唐池
- そうですね。
- 糸井
- そうやって考えると、
いまのような便利な時代に、
生物としての人間の体や、
機能や、感情とかは、
まだ追いついていない気がする。
- 不便だった時代の
19万何千年という積み重ねの上に、
いまの人間がいるわけで、
そうやってつくられてる人間を、
どうしたらよろこばせられるのか。
そのあたりを
もうちょっと考えてもいいのかなぁ、
と思っているんです。
- 唐池
- だから、手間をかけて‥‥
(会場の進行のほうを見て)え?
あら、もう時間だそうです。残念。
- 糸井
- はい、タイムアップのようです。
ぼくはあと2時間ぐらいは
平気でやれますが(笑)。
- ええ、どうすればいいのかな‥‥
(まわりに向かって)じゃあ、
ぼくたち、もう帰っちゃいます。
- 観客
- (笑)
- 進行
- (慌ててマイクを持ち)
ああ、ちょっとまってください!
もっとお話をお聞きしたいところですが、
ここからは「Q&A」とさせてください。
- お時間の都合で
おひとりだけとなるのですが、
なにかご質問がある方は‥‥
あ、はい! では、そちらの男性の方!
- 男性
- いや、まさかこんな
贅沢な質問ができるとは‥‥。
きょうはありがとうございました。
- いま、おふたりは
「手間をかけること」が
感動を生むとおっしゃいました。
それは事実だと思います。
でも、それは
必要十分条件ではないというか、
手間をかけたからといって
必ず感動してもらえるわけでは
ないような気がするんです。
- そのあたりのご意見を
お聞かせいただけますでしょうか。
- 糸井
- うんうん、そうですよね。
じゃあ、これは唐池さんから
先に答えてもらおうかな。
- 唐池
- はい、わかりました。
おそらく、ポイントは
「どの方向に手間をかけるか」
だと思うんです。
わたしの場合は
「自分がよろこぶ方向」に
手間をかけるようにしています。
- 自分が食べたい店、食べたい焼きとり、
行きたい店、乗りたい列車など、
いつも自分で自分を
マーケティングしています。
- わたしは鉄道会社の会長ですが、
じつはその、あんまり‥‥
(小声で)鉄道が好きじゃない。
- 観客
- (笑)
- 唐池
- でもね、そんな男がですよ、
たのしくてワクワクするような列車を
水戸岡鋭治さんといっしょに
つくってきたんです。
だから「ななつ星」は、
「鉄道が好きじゃない男でも
乗りたくなるような列車」
ともいえるんですよね。
- レストランも同じです。
「自分が食べたくなる店」だったり、
他の店の「いいなぁ」というのを、
自分の店で惜しみなく手間をかけて
再現しています。
自分の好みに向かって手間をかける。
そんなところでしょうか。
糸井さんはいかがですか?
- 糸井
- いまの話は、
ぼくも聞きたかったくらいでした。
ありがとうございました。
- ぼくの答えはわりと単純です。
珍しさがないものって、
やっぱり人に素通りされるんです。
つまり、いまはあまりにも
手間をかけない時代なので、
「手間をかける」ことが、
もうすでに珍しいことなんです。
- 唐池
- ああ、なるほど。
- 糸井
- 手間をかけていると、
それを見た人が
「なんでこんなにも手間をかけるんだろう」
って立ち止まってくれます。
それをまじめにつづけていると
「なんでだろう」という場所から、
もっと近づいてきてくれて
「ああ、なるほどねー」という
共感が生まれたりもします。
- 珍しさと共感。
このふたつが得られたときに、
成り立つようなことって、
きっとたくさんあるんだと思います。
ぼくの考えは、
そんなところでしょうか。
- 唐池
- きっと質問された方にも、
ご自身の考えがあるんでしょうね。
- 糸井
- そうでしょうね。
本当はいまの答えから、
もっとしつこくやりとりしたほうが
いいとは思うんです。
(会場の進行のほうを見て)
でも、まあ、とりあえずきょうは、
時間がないようなので‥‥ね。
- 男性
- あ、はい、ありがとうございます、
ありがとうございます。
- 糸井
- お互いにがんばりましょう。
本気ですからね。本気、本気。
- 唐池
- そうですよ。
(自分の本を手に取って)
本気になって何が悪い(笑)。
- 観客
- (笑)
- 糸井
- また唐池さんと、
こういうのやりたいなー。
こんどは5時間ぐらいね(笑)。
- 唐池
- ぜひやりましょうよ。
きょうはたのしかったです、
ありがとうございました。
- 糸井
- こちらこそありがとうございました。
聞いてくださったみなさんも、
どうもありがとうございました。
- 観客
- (大きな拍手)
(おわります。最後までお読みいただき、
ありがとうございました。)
2017-12-18-MON