糸井 |
さて都築さん、
「さすが、これ知ってるんですか」
というような歌をひとつ、
お願いしたいです。
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都築 |
では、どろどろのやつを
行かせていただきたいと存じます。
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糸井 |
お願いします。
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都築 |
これを‥‥
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THE KARAOKE 5♪
「飢餓海峡」石川さゆり
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糸井 |
前奏からして、
「取っておき」っぽいですね。
吉岡治さんが作詞。
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都築 |
ええ、このあいだ
亡くなっちゃったんですが、
吉岡治さん、すごく好きです。
石川さゆりさんの歌を
たくさん書いてらっしゃって、
「天城越え」もそう。
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みうら |
この歌のタイトル、
「飢餓海峡」っていうんですか。
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糸井 |
水上勉の小説とおなじ?
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都築 |
ええ、あのストーリーがそのまま
歌になってます。
「ちり紙に つつんだ‥‥」
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みうら |
出だしからすごいなぁ。
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糸井 |
すごいなぁ。
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都築 |
「足の爪‥‥」
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田島 |
すげ。
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都築 |
「後生大事に‥‥」
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みうら |
うわー。
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糸井 |
吉岡さん!
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都築 |
「頬っペにチクチク 刺してみるー」
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みうら |
ヘンタイですよ、歌に出てくる女の人。
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糸井 |
はぁあー。すげー。
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都築 |
「漕いでも、漕いでも‥‥
たどる岸ないー」
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糸井 |
大盛ですねぇ。
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都築 |
「飢餓海峡」
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糸井 |
飢餓じゃないよ、これ。
Aランチ、Bランチ、全部合わせて
こってり盛ってるよ。
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みうら |
爪、入ってますからね。
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田島 |
チクチクほっぺに
刺すんですからね。
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都築 |
「一夜の逢瀬でわかります‥‥」
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みうら |
あのことを逢瀬っていうんですか。
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都築 |
「泣いてるみたいなー、恐山‥‥」
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みうら |
どこ行ってるんですか。
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都築 |
「爪たててー」
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糸井 |
また爪出てきた。
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都築 |
「連れてってー‥‥」
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糸井 |
すげー。
大盛てんこ盛り、デザートつき。
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都築 |
「飢餓海峡」
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糸井 |
呆れた。吉岡!
飢餓の意味はもうどこにもなかった。
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都築 |
石川さゆりさんのコンサートに行くと、
ギター1本の伴奏で、
間奏のあいだにひとり芝居を入れつつ、
この1曲だけで20分ぐらい、やるんですよ。
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みうら |
そうなんですか!
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都築 |
アコースティックバージョンで
めちゃくちゃかっこいいです。
とんでもないことになってます。
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糸井 |
でも俺、この歌、ちょっとわかります。
絵描きさんが
ご贔屓の人も手を出せないような危な絵を
ニョキッと描きたがるように、
やりたいんだよなぁ。
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都築 |
そういえば、日本画の大家の人で
女の絵を描くときに、
いったん裸の姿を描いてから
上に着物を塗るという人、いました。
見えないところも、描いちゃう。
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みうら |
ああ、聞いたことある。
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糸井 |
いやぁ、わかるなぁ。
都築さん、こういう歌を
どこで?
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都築 |
こういうどろどろ系の歌は、
スナックで憶えます。
いろんな店へ行くとね、
とてつもないのを歌ってる
おばさんがいたりします。
そうすると、
「これ、何ていうんですか?」
と訊きます。
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田島 |
へぇえ、そうなんだ。
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糸井 |
そのおばさんが、
それをなぜ歌ってるのか、
訊きたくなりますよね。
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都築 |
「何があったんですか?」という感じですね。
でも、普通のおばちゃんみたいな人が、
そのどろどろの歌を
カラオケでさらっと歌ってるわけでしょ、
そういうところがすごいなと思いますよ、
日本は。
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糸井 |
だって、みんなが
「天城越え」を歌ってる国ですから。
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都築 |
ええ。あれも、とてつもない歌詞だし。
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糸井 |
そこにいるAさんもBさんも、
みんなしあわせに暮らしてるはずなのに、
「天城越え」って、歌ってますから。
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みうら |
‥‥松本清張が根底にいるんですよね。
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田島 |
そうかもしれない。
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都築 |
みんな、気づいてないだけで。
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一同 |
(笑)
(つづきます) |