第6回 日本人選手がメダルをとる確率は5分の3。
永田 さて、トリノオリンピック、
フィギュアスケートの話です。
刈屋 はい。
永田 男子体操決勝の3時間20分も長いですけど、
フィギュアも長いといえば長いですよね。
それこそ、ショートプログラムが終わって
金メダルを意識し始めてからだと
体操よりも長い。
刈屋 長いですねー。
しかも当日は、
朝7時くらいから練習があるんですよ。
永田 ああ、はい。
刈屋 その練習をちゃんと見て、
お昼近くまで公式練習があって
それが終わって、
半日経った後の夜から試合ですから、
一日が長いんですよね。
永田 長いですね(笑)。
もっと言うと、ショートプログラムから
競技ははじまっているわけですからね。
とくに女子フィギュアは、
日本で唯一メダルが確実視されている
ともいわれていて。
刈屋 ええ。
永田 ということは、もう、刈屋さんは
競技前から金メダルに向けての
シミュレーションというのを
はじめてらっしゃったわけですか。
刈屋 いや、日本国内では
金メダルかもしれないとか、
メダルを複数取るんじゃないかとか
言われていましたけど、
ぼくは現地に行くまでは、
そんなにかんたんにメダルは取れない
というふうに思ってました。
日本の3人も強力でしたけれど、
やはりイリーナ・スルツカヤがいて、
サーシャ・コーエンがいて、
それからイタリアの
カロリーナ・コストナーという選手がいて。
この3人が完ぺきにやってきたら
日本はへたすると4位、5位かなと。
永田 うん、うん。
刈屋 その可能性もかなりあると思ったんですね。
実際に現地に行ったら、
やっぱりスルツカヤにしても
コーエンにしても調子がいいわけです。
しかもイタリアのコストナーが
ものすごく調子がよくて、
や、これはちょっとまずいな、と
ずっと思っていました。
永田 それはショートプログラムが
はじまる前ですか?
刈屋 そうです。
とにかく、外国人選手の調子がいい。
それで、個人的な印象になりますけれども、
安藤美姫選手はケガの影響もあって
練習不足だったので
10番以内はむずかしいだろうと思ってました。
でも、荒川静香選手と村主章枝選手は
ものすごく状態がよかったですから、
もうこの5人の争いだと。
5人のうちの3人がメダルをとるだろうな
という状態ですね。
永田 スルツカヤ、コーエン、コストナー、
そして、荒川、村主の5人。
刈屋 はい。ただ、そこから先はわからない。
朝の公式練習とか、その前の前日練習とか
いろいろ見ていても、その5人のうちの
誰がメダルをとるかというのは
ほんとうにもう、わからないわけですよ。
だから、ショートプログラムに入る時点では
日本人選手がメダルをとる確率は5分の3。
5分の3を、荒川と村主がとれるかどうか。
とくに期待したのは荒川選手ですよね。
荒川の調子がものすごくよかったですから
荒川がひとつでもとれるかどうか、
というくらいの確率だろうと思ってました。
永田 うーーー、なるほどぉ。
刈屋 だからメダルを逃す可能性もかなりあると。
永田 厳しい予測をされてたわけですね。
それはショートプログラムが終わったあとも?
刈屋 いや、ショートプログラムが終わったときに
展開が大きく変わりました。
まず、ショートプログラムで
イタリアのコストナーが大失敗をするんですね。
永田 ああ、そうでした。
刈屋 まずそこでコストナーが
メダル圏内から消えた。
すると今度は4分の3になる。
永田 はい。4分の3。
刈屋 そしてもうひとつ、
ショートプログラムでは
予想が大きく変わることがありました。
永田 というと?
刈屋 荒川選手への評価です。
ショートプログラムの点数の出方を見ると
ヨーロッパのジャッジは
荒川の評価がすごく高かったんです。

2006-06-12-MON

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN