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永田 |
荒川選手のフリーの演技に戻りますが、
3人の誰が金メダルをとるか
まったくわからないというなかで、
刈屋さんが金メダルを確信した瞬間というのは
どこだったんでしょうか。 |
刈屋 |
いや、もう、ほんとうに、
最後までわからなかったですね。 |
永田 |
あの、最後に、最終グループの選手が出てきて
リンクでそれぞれ練習をするときに
サーシャ・コーエン選手が転倒してましたよね。 |
刈屋 |
はい。
サーシャ・コーエンは
明らかにかたかったですね。
それでも、荒川が勝てるかもしれないとは
思えませんでした。 |
永田 |
なるほど。
そして、最後のフリーがはじまって、
サーシャ・コーエンが転倒します。 |
刈屋 |
それでもわかりません。
でも、転倒したあと、さらに失敗して手をついた。 |
永田 |
はい。 |
刈屋 |
そこでぼくが感じたのは、
「荒川が勝てるかもしれない」
ということではなくて、
「村主がメダルをとれるかもしれない」
ということでした。 |
永田 |
ああああ、なるほど!
そっちのほうがリアルなんですね。 |
刈屋 |
はい。
これはメダルをふたつとれるかもしれない。
そう、思いました。というのは、
以前のサーシャ・コーエンであれば、
失敗したあとが、ばたばたになるんです。
ところが‥‥。 |
永田 |
まとめましたよね。 |
刈屋 |
まとめました。
ばたばたにならなかったんです。 |
永田 |
あれも、ソルトレイクの失敗から
4年間を過ごしたという
サーシャ・コーエンの強さでしょうか。 |
刈屋 |
そうでしょうね。
あの強さを見て、
あ、これはそうかんたんにはいかない、
と思いました。
だから、荒川選手が、
金をほんとうにとれると感じはじめたのは、
スルツカヤの最初の
コンビネーションジャンプが
2回転ー2回転になったところです。 |
永田 |
転倒のところではなく? |
刈屋 |
そのまえです。
まず、最初に予定していた
コンビネーションジャンプを
スルツカヤがやらなかったんですね。
その時点で「あれ?」と思った。
つまり、いつものスルツカヤじゃないんですね。
いつものスルツカヤじゃなくても
そのまま滑り切っちゃえば
点は出るんですよ、スルツカヤですから。
ところが後半のコンビネーションに来たところで
また、やらなかったんですよ。
そこではじめて、荒川が勝てる!と。 |
永田 |
じゃあ、ほんとうに最後の最後。 |
刈屋 |
最後の最後ですね。
とくにさっき言った第二採点の部分があるので
点が出ないとわからない。
でも、それを含めても
これは荒川が勝った、と思うのはそこでしたね。
転ぶ、すこし前の時点で
2回転ー2回転になったときに
あ、荒川が勝ったと思いましたね。 |
永田 |
その後、スルツカヤがまさかの転倒。 |
刈屋 |
その時点では、もう、
荒川が勝ったと思ってましたから、
転んだときは、
「村主がメダルに届くかもしれない」
と一瞬思いました。
結果は‥‥残念ながら、
そうはなりませんでしたけど。 |
永田 |
はい。 |