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勝村 |
なんだか脱線しっぱなしで、すいません。
「元気が出るテレビ」の話とか、
高田さんの話とか、ポークソテーズとか‥‥。
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── |
いえ、それぞれ「新宿鮫」とリンクしてますし、
リンクしてなくても‥‥
おもしろいので、ぜんぜん問題ないです(笑)。
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勝村 |
あはははは、いいんですか(笑)。
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── |
でも、せっかくなので
最後に少し「新宿鮫」の話に戻りましょうか。
まず、今回の『絆回廊』については、
読んでくださってますか?
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勝村 |
‥‥それに関してはですね、
ちょっとぼく「怒ろう」と思って来たんです。
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── |
え? はい、ごめんなさい。
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勝村 |
いや、まだ怒ってないんですけどね、
あのう‥‥ようするにですよ、
マネージャーに
「今日の取材のために、読んどいてくれ」
みたいなこと言われまして。
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── |
私どもが、そう、お願いしました。
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勝村 |
だから、少し読んじゃったじゃんですよ!
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── |
つまり、今まではガマンされていたと?
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勝村 |
そうです。
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── |
それはたいへん、すみません!
でも「少し」というのは‥‥?
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勝村 |
‥‥100ページぐらいかな。
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── |
100ページといったら、どのあたりだろう?
いま、話はどんなことになってます?
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勝村 |
売人の露崎に「無理するなよ」とか
「あんたに迷惑はかけない」
みたいに鮫島さんが言ってるところ‥‥。
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勝村 |
ああー‥‥けっこう読んじゃってますね。
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勝村 |
‥‥うん。
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── |
100ページどころじゃないと思います。
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勝村 |
‥‥うん。いや、だからね、ともかくも
最後まで読めないじゃないですか!
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── |
はい、週に一度の連載ですのでね。
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勝村 |
ずうーっとガマンしてたのにですよ、
読めと言われて
最後まで読めないのをわかっていながら、
もうイヤだ、もうイヤだと思いつつ
1ページ、
さらに1ページとページをめくり‥‥。
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── |
ええ。
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勝村 |
やっとの思いでクリックを止めたんですよ。
左手で右手のクリックを抑えるようにして。
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── |
そんな大げさな。
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勝村 |
この責任を、どう取ってもらえるのか。
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── |
いや、その、すいません。
ただですね、10月15日かぎりで
それまでに更新してきた「前半部分」は
読めなくなってしまうので、
読者のみなさんには
ぜひとも、今のうちに
読んでおいていただきたいのですが。
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勝村 |
‥‥それは、読んでおいたほうがいいです。
そういうことなら、それは。
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── |
ちなみに、この「絆回廊」がスタートする前、
大沢さんと糸井重里が対談してるんですけど、
そのときに
「いまの『新宿鮫』には、
絶対に片付けなきゃならないことがあって、
次の鮫では、それをやる」
という宣言をされてるんです、大沢さん。
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勝村 |
‥‥なんですか、それは。
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── |
えー‥‥。
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勝村 |
いや、ぜったい言わないで!
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── |
ええ、あの、ぼくらも知らないんです。
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勝村 |
なんだ。
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── |
読者のみなさんからも
「こういうことなんじゃないか」みたいな予想が
上がってきてはいるんですけど。
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勝村 |
‥‥でも今回、絶対に刑事は続けるくせに、
「辞めてもいい」
みたいなこと言ってますよね、鮫島さん、晶に。
「オレはおまえを選ぶ」とかって。
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── |
めずらしいこと言ってましたね。
晶もビックリしてましたけど。
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勝村 |
あのへんが、ちょっと気になりますね。
ここんこと、鮫島さんと晶との関係って
ちょっと、ググーッと来てましたから。
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── |
今は、ヨリを戻してる感じですね。
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勝村 |
全体に、なんか会話が「濃く」なってる。
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── |
ああー‥‥会話の「濃さ」が気になるとは、
なんといいますか
俳優さんらしい着眼点じゃないでしょうか。
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勝村 |
でも、晶と関係なかったら‥‥桃井課長?
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── |
そろそろ定年ですよね。
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勝村 |
引っ越しとかね。
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── |
はい?
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勝村 |
ほら、桃井さんって、なんか川崎のほうの
ちっちゃな戸建に住んでるんでしょ、いまだに。
だから、
桃井課長の「思い切って、引っ越し」とかどう?
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── |
いや、「どう?」と言われましても(笑)。
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勝村 |
‥‥まぁ、でも、それはないな。
妻と子の思い出の詰まった2階の部屋を
そのままにしておくような人だから。
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── |
奥さんとお子さん、かなり前に
交通事故で亡くなってるんですよね、たしか。
でも川崎から新宿って、何線ですかね?
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勝村 |
川崎といっても広いですから。
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── |
田園都市線で渋谷経由? ‥‥似合わないですね。
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勝村 |
あれ、いや、大田区でしたっけ? 多摩川沿いの。
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── |
あ、そうだったかも。
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勝村 |
そしたら、目蒲線だな‥‥。
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── |
それならなんか、イメージどおりです。
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勝村 |
あの家には、鮫島さんも行ってんですよね。
缶コーヒーを2本買って、手土産にして。
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── |
そうそう、なんか、いいシーンですよね。
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勝村 |
でも、オレ、ひとつ言いたいことがあって、
それは、
鮫島さんの愛車って「BMW」じゃないですか。
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── |
はい。
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勝村 |
じゃなくて、ブルーバードに乗ってたら
笑えるのになーとか、思ってたんです。
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── |
ブルーバード?
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勝村 |
むかし、サメみたいな顔したブルーバード、
通称「サメブル」ってのがあったんですよ。
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── |
サメブル。へぇー‥‥。
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勝村 |
色はもちろんシルバーでね。
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── |
もう、いちファンとしての意見になってるから、
発言が勝手で、とてもいいですね(笑)。
それじゃあ最後に、なにか印象に残っている
「鮫島のセリフ」があったら、教えてください。
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勝村 |
セリフかぁ‥‥。
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── |
あとで調べますから、正確じゃなくてもいいです。
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勝村 |
えーーーーーーと‥‥。
あ、そうか、ここに書いてあったと思う。
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── |
おお、さっきの「ラブレター」に。
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勝村 |
えーーー、あったあった。ここ。
「法律は目に見えない。
警官は柵。
柵をこえると、自分も他人も傷つく。
だから柵の先に行かないように思わせる
存在であればいい」
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── |
ははー‥‥かっこいい。
「行かないようにする」じゃなくて
「思わせる」という部分に
鮫島の哲学が潜んでいる気がします。
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勝村 |
二作めの『毒猿』に出てくるセリフなんだけど。
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── |
その『毒猿』について
勝村さんが言ってる「セリフ」も、いいですね。
「『ゴッドファーザー』以外に
評判のいい続編はないと思っていた。あった」
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勝村 |
やっぱり、新宿という街を舞台にした、
手負いの天才刑事・鮫島さんの「一代記」であり、
彼のまわりで
起こる出来事をつづった「叙事詩」なんだと
思いますね。
この「新宿鮫」という物語は。
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── |
なるほど、
「一代記」であり「叙事詩」であるとは、
まさにそんな感じがします。
新宿で生き抜いてきた鮫島という人間と
その刑事としての歴史が、
ずーっと、記されてきたわけですもんね。
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勝村 |
だから、大沢在昌さんの筆のうまさですけど、
「鮫島さんが、実際に
新宿のどこかにいるような気がする」って
思っちゃうのも‥‥。
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── |
一代記であり、叙事詩だから。
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勝村 |
そう。こんどの「絆回廊」に出てくる
不気味な「60代、白髪のナゾの大男」だって
きっとどっかで
鮫島さんとすれちがってる気がするし。
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── |
あの「樫原」という大男は、
22年間、刑務所に入っていたらしいんで、
もしかしたら
刑事になりたての若き鮫島と、どこかで。
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勝村 |
今回、鮫島さんの協力者として出てくる売人も、
一作目のころからずっと
新宿の東口あたりで薬を売ってたんですよ。
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── |
ああ、露崎も‥‥そんな気がします。
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勝村 |
つまりは、
そういうことを簡単に連想させてしまうところ、
なんじゃないでしょうか。
「新宿鮫」の魅力って、たぶん。
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── |
鮫島という刑事の一代記であって、
新宿という街の叙事詩である、ということ‥‥。
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勝村 |
そう。
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── |
なるほど。
本日は、本当にありがとうございました。
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勝村 |
いえいえ、こちらこそ。
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── |
今日のお話を原稿にまとめたら、
「二通目のラブレター」になりそうですね。
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勝村 |
あはははは、おまかせします(笑)。 |
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<おわります>
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