目次
これまで、経済や金融の「常識」として、
「社会性」と「経済性」は
両立しないと考えられていたそうです。
つまり、企業が「いいこと」をしようとすると
「もうけ」が減ってしまう‥‥。
しかし、投資信託の運用会社・鎌倉投信では
「いいことをする会社にしか投資しない」
というやり方で、しっかり利益を出し、
投資信託の賞で第1位にも輝きました。
「いいことをする会社」が
「きちんと、もうかる」時代になってきた?
「まごころ」や「あたたかさ」など
従来の「投信」のイメージにあてはまらない
鎌倉投信の新井和宏さんと、
これからの時代の投資や会社の話をしました。
新井さんをご紹介くださった
「ふんばろう」の西條剛央さんもご一緒に、
全8回の連載となります。おたのしみください。
新井和宏さんプロフィール

第1回
足で稼ぐ、投資の会社。

糸井
西條さんは、最近は何を?
西條
大きいところでは、ネパールの支援とか。
糸井
ああ、なるほど。
西條
ネパールには、東北の地震のときに
「ふんばろう」で活用したインフラがない。

具体的に言えば
Amazonさんとクロネコヤマトさん、
なんですけど。
糸井
その差は、大きいですよね。
西條
いま、登山家の栗城(史多)さんと一緒に、
ネパールに
「ふんばろう」の仕組み
をつくりました。

栗城さんとは、
以前から面識じたいはあったんですけれど、
「ネパール支援に向かいます」
という記事を、たまたま読んだんですね。
糸井
ええ。
西條
ぼくの手元には「ふんばろう」の
物資支援の仕組みとノウハウがあったので、
「役に立てるかもしれない」と思って、
物資だけじゃなく、
「仕組み」自体を持って行ってもらおうと、
すぐにお会いしたんです。

やっぱり、仕組みだけあっても
現地で状況を見て判断する人がいなければ、
「宙に浮いちゃう」ので。
糸井
手や足を使って、やるしかないんですよね。
だいたいのことは「肉体労働」というか。
新井
肉体労働だから、誰もやらないんでしょうね。
西條
たしかに。
糸井
ぼくらが「ほぼ日」でやってることも、
じつは労働集約的で、
もし、「手を抜ける仕組み」でやってたら
立ちゆかないんです。

そういう会社なんです。
西條
その点、新井さんの鎌倉投信も‥‥。
新井
もう、まったく同じです(笑)。
ベタなことを、ずっと。
糸井
そうですか。
新井
一般的に、金融業界では
アナリストが、企業のさまざまなデータを
いろんな角度から分析してますから
「数字」は把握できるんです。

でも「ぼくらが知りたいこと」は、
その数字からは、わからない。
糸井
つまり‥‥。
新井
たとえば、どんな会社か知ろうと思って、
「障碍者雇用率」だけ見ても、
社会的責任を果たしてますと言うための
「お化粧をした数字」かもしれませんね。

だから、
上場企業がつくっている特例子会社
(障碍者の雇用の促進及び安定を図るため、
 事業主が
 障碍者の雇用に特別に配慮をした子会社)
の経営者の集まりに、出かけて行くんです。
糸井
なるほど。
新井
そうしないと、
リアルな情報を手に入れることはできない。
糸井
そこまでやってるんですね。
新井
企業の「本質」を見極めるためには、
やはり「現場に当たるしかない」んですね。
そこではじめて「本音」が出てくる。

「で、その現場の声とやらが
 投資信託にとって、どんな意味があるんだ?」
と聞かれたら‥‥。
糸井
ええ、ええ。興味ありますね。
新井
それは、障碍者も健常者も関係なく、
「その職場に
 モチベーションがあるかないか」が
わかるじゃないですか。
糸井
つまり、そこが判断基準?
新井
そうです。

実際、障碍者雇用をしている会社に
投資しようと決めたときも
彼らのモチベーションの高さで選びました。
糸井
おもしろいです。
新井
だって、職場の障碍者の方が、言うんです。
「はやく月曜日になってほしい」って。
糸井
へえ、仕事がおもしろいんだ。
新井
そうなんです。大事なのは、そこなんです。

生産性を上げるのは、彼ら彼女らのやる気。
ただ、それだけ。
健常者も障碍者も関係ないんですね。
ただ、それを「数字」に表すことは不可能。
糸井
はい。
新井
ですから、そういう生の情報を得るために
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

本社屋のある鎌倉には
ほとんどいないという状況なんです(笑)。
糸井
文字どおり、「足で稼いでいる」と。
新井
私はいつも、「ほっつき歩いてる」んです。
で、楽しそうな顔で帰ってきては
「感動した!」と社員に言っている(笑)。

そういう会社なんです。
<つづきます>
2015-06-22-MON

金融・投資信託の専門家・新井さんと
心理学・哲学の研究者・西條さん。
ふたりのプロの「わかりやすい」最新作。

鎌倉投信・新井和宏さんの
『投資は「きれいごと」で成功する』と、
西條剛央さんの『チームの力』
前者は「いい会社」に投資しながら
国内投信1位となった鎌倉投信のことを書き、
大きな話題を集めています。
また後者は
「『進撃の巨人』の巨人とは何か?」という
興味深い序章からはじまる、
西條さんらしい「チームのつくりかた論」。
(序章はこちらのページで試読できます)
新井さんは金融・投資信託の、
西條さんは心理学・哲学の専門家ですが、
どちらの本も平易な文章で書かれているので
専門知識のない人でも、おもしろく読めます。
ご興味のある方は、ぜひ。

新井和宏
『投資は「きれいごと」で成功する』
Amazonでのおもとめはこちら。

西條剛央
『チームの力』
Amazonでのおもとめはこちら。