第6回
22世紀を見据えた都市計画。

新井
わたしたちの創業理念に
みっつの「わ」、というものがあります。

日本の「和」、サークルの「輪」、
そして、対話の「話」‥‥なんですが。
糸井
はい。
新井
わたしたちは、あくまでも
「そのような場を提供したい」主体で
その「場」に、
お客さまにコミットしていただきたい。

つまり「関わってください」と。
糸井
ええ、ええ。
新井
昨年の受益者総会では
ぜんぶで「800人」ものお客さまが
集まってくださったんですが
うちの役職員は、
アルバイトを入れて13人しかいません。

運営できるわけがないんです。
糸井
ほんとですね。
新井
そこで、毎回30人くらいのお客さまに
受付係をはじめ
ボランティアをしていただくんです。
糸井
ようするに
「関わってもらわなくてはならない状態」
なわけですね(笑)。
新井
ええ(笑)、そんなこともあるので
鎌倉投信の理念には
「お客さまが内在している」んです。

会社とお客さまを、わけていないんです。
糸井
おもしろいです。
新井
最初からコミットしてもらわないと
成立しないんです。
わたしたちだけでは、どうしようもない。

お客さまに
対話していただかなければダメだし、
投資先の企業が
絡んでくださらないと実現できない。
糸井
それって、顧客というより‥‥。
新井
仲間、パートナーだと思っています。
糸井
その言葉を、使ってらっしゃる?
新井
はい。
糸井
ぼくらも、言葉を探してるんです。

ほぼ日に興味を持って
読んだり、買ったり
イベントに来てくださる人たちも
ぼくらの仲間の一員だと思っているので
読者というより、ユーザーというより、
コンシューマーというより‥‥。
新井
なるほど。
わたしたちは「パートナー」ですね。
糸井
「サポーター」とは、ちがう?
新井
サポーターは、わたしたちだと思います。
投資先の企業のサポーター、ですから。
糸井
ああ、そうか。
新井
投資先の企業にたいして、
わたしたちは「乱入」することはしません。
いきなり経営権を奪って
「おれが監督だ」なんて言うつもりは、
まったくないんです。

ただ、ちゃんとプレイしてもらえなければ、
もんくを言いに行きます。
糸井
もんく。
新井
はい。もんくです。

ただ、それも「利益」に対してではなく、
「いい会社」と謳っている以上、
「いい会社」の理念を徹底してください、
ということを、言いに行くんです。
西條
ぼく、最近、
「チーム」っていい言葉だなあと、
あらためて思っていて。
糸井
ええ、いい言葉ですよね。
西條
「組織」という言葉は、
「内と外」とを、わけると思うんですね。

でも、「ふんばろう」には境界がなくて、
名簿すらもなくて、
内なんだか外なんだかって感じで
やってましたし、
実際に、現地で物資を配るときなんかも
内か外かは関係なく、
手伝ってくれる人手が、必要なんです。
糸井
ええ、そうですよね。
西條
なので、
「組織」ではなく「チーム」と言ったら、
ぼんやりと
そのあたりまで含められる気がして。
新井
もう、本当におもしろいんですけど、
「ボランティア飲み会」なるものがありまして、
その場には、
鎌倉投信の役職員は出席できないんです(笑)。
糸井
ああ、いいですねえ(笑)。
新井
関わってくれた人たちが、
また「別のコミュニティ」をつくって、
楽しんでいるんですよね。

その場では、鎌倉投信の「いい」も「悪い」も、
すべて、話されているわけです。
糸井
すごいコミットのしかたですよね。
西條
つながりたい欲望って、誰にでもありますよね。
「ふんばろう」のボランティア組織でも、
飲み会を大切にしていましたし。

もしかすると、ソーシャルと成果のあいだには、
「楽しい」とか「つながる」「関わる」
という感覚が、あるのかなあ。
糸井
ぼくは、人が最終的にやりたいアートって、
「都市計画」じゃないかなあと、思うんですよ。

その目で鎌倉投信がやっている仕事を眺めると
「見えない都市計画」ですよね。
新井
都市計画‥‥。
糸井
つまり、
鎌倉投信を中心した「町」に住む人たちは、
こうであってほしい、というね。

そこは、効率のいい商売をする場ではなく、
農業をやりたい人は、すればいい。
ウェイターをしながら
歌を歌っている人がいてもいい、みたいな。
新井
なるほど、都市計画ですか‥‥。

あの、わたしたちの「結い2101」という
投資信託の商品は
22世紀を見据えた投資なので、
22世紀の世界観、社会観を共有していて。
糸井
うん、うん。
新井
その意味では、
まさに「22世紀へ向けた都市計画」だと
言えるのかもしれません。
<つづきます>
2015-06-29-MON

シェアする

金融・投資信託の専門家・新井さんと
心理学・哲学の研究者・西條さん。
ふたりのプロの「わかりやすい」最新作。

鎌倉投信・新井和宏さんの
『投資は「きれいごと」で成功する』と、
西條剛央さんの『チームの力』
前者は「いい会社」に投資しながら
国内投信1位となった鎌倉投信のことを書き、
大きな話題を集めています。
また後者は
「『進撃の巨人』の巨人とは何か?」という
興味深い序章からはじまる、
西條さんらしい「チームのつくりかた論」。
(序章はこちらのページで試読できます)
新井さんは金融・投資信託の、
西條さんは心理学・哲学の専門家ですが、
どちらの本も平易な文章で書かれているので
専門知識のない人でも、おもしろく読めます。
ご興味のある方は、ぜひ。

新井和宏
『投資は「きれいごと」で成功する』
Amazonでのおもとめはこちら。

西條剛央
『チームの力』
Amazonでのおもとめはこちら。