糸井 |
他人に見せる用の
「丸裸」という衣装を
着ている人もいますよね。
「ぼくは
こんなに恥ずかしいことも
あなたに伝えています」
という語りを、
すべての人にできるという。 |
塩野 |
はい。
その時は相手を
こちらがこう見ていると
伝えたほうがいいですよね。
ぼくはおとといまで
屋久島の杉を切ったり守ったり
してきた人のところにいたんですが、
そのおじいさんは、
どうも友達がひとりもいない。
ぼくがそれを訊ねたら
そうだといいました。
「お酒も飲まない。
タバコも吸わない。
女の話もしない。
頭の中は屋久杉と切り株しかないんだから、
そりゃあ、ともだちは絶対いないでしょう」
とぼくは感じたことをそのまま言います。
この言葉はたぶん
本人もイヤと感じていないんです。
失礼に見えるかもしれませんが、
ぼくは友達がいないことを
悪いとは思ってないし、
その人がどう見えているのかを
伝えただけなんですよね。
ぼくはあなたをこう見ています
というメッセージです。 |
糸井 |
話している中で
材料を目の前においてみようという、
塩野さんの意志ですよね? |
塩野 |
はい。反応を集めるんです。
「家に帰って何をしていますか?」
「何もしないなぁ。九時に寝るよ。
何しろ朝は四時に起きるから」
「じゃあ、奥さんとは
どんな話をしますか?」
「……しないなぁ」
そういう話になってくるから、
「もしかして、
友達、いないんじゃないですか?」
「ひとりもいないなぁ」
七十一歳のおじいさんが、
ずっと杉のことしか考えていなければ
それはそうですよね。
むしろ、友達がいないおじいさんが
縄文杉のように見えて、
こちらはうれしいわけです。 |
糸井 |
「うわぁ!
いてよかったなぁ、こういう人が!」
と感動しますよね。 |
塩野 |
相手を敬えなければ
話は聞けませんもんね。
ヨイショしても
長い話を聞くんですから
バレているだろうし、
すごいと思えば
自然と目が尊敬してくるから
それは相手にちゃんと伝わりますし……。
どんな人でも真剣に聞けば、
すごいところがありますよ。
嫌なとこが多い人もいますけどね。 |
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(明日に、つづきます)
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